表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/51

28話 目指すレベルは99!

 周りのモンスターの屍を積み上げ、目的の城に向かう。これまたしっかりした造りの城で、魔王軍の力が強いことを思い知る。中には体がライオン、尻尾がヘビのキマイラと呼べるモンスターがうろついている。いつものように鮮血で建物を染めて奥に向かう。


「お姉ちゃん……」

「この城の最後の扉ね……」


 私は扉をゆっくり開ける。そこには城内を闊歩していたモンスターの親玉みたいな姿をしたモンスターが居た。モンスターは立ち上がると私達に語り掛けてくる。


「我が名はウルトラキマイラ。魔王様の寵愛を受け、この地に舞い降りた。魔王に仇なす勇者よ……ここで朽ちろ!!」


 ウルトラキマイラはまずはシルビィに襲い掛かる。爪をむき出し、シルビィめがけて振り下ろす。シルビィはその攻撃を華麗に躱し、剣を振る。射止めることは出来ずに尻尾を切り落とす。ウルトラキマイラは雄たけびを上げる。


「おのれぇ……よくも!!」


 今度は私が攻撃を繰り広げる。毒針を両手に構えウルトラキマイラに突進。いつものようにウルトラキマイラの腹に入り毒針の一撃をお見舞いする。浅い!? 惜しくも急所まで毒針は届かなかった。しかし毒針の毒でウルトラキマイラの体力は徐々に削られる。


「こ、これほどまでとは……せめて!!」


 ウルトラキマイラは渾身の力を振り絞り、シルビィに襲い掛かる。四肢を広げ噛みつく体制。これがウルトラキマイラの最後の攻撃となる。シルビィは縦に一閃剣を振り下ろす。ウルトラキマイラはこの攻撃に反応はするもののよけきれずに、体を分断される。


「ま、魔王様……申し訳……ございません……」


 行く先々で魔王への忠誠を示す言葉を口にする魔王軍のモンスター。ここまで愛される魔王とはどんなモンスターなんだろう。レベルを上げすぎたこともあって、全く歯ごたえは無いけれど、魔王を愛して忠誠を誓うそんなモンスターに経緯を払いたい。


「ねぇ、シルビィ。魔王ってどんな感じなんだろうね?」

「あまり情報が無いからわからないけど……とっても強そうね。ここまで統制力があるのだから油断は禁物ね」


 そして、地図を広げて近くの村に目標を定めて、行動を開始する。村に着き宿に泊まって部屋でくつろぐ。最近、冒険を進める速度が上がってきているので、疲れは出てきている。そんな疲れを吹き飛ばすのがユウスケとの交換日記。いつもの日課のように交換日記を開き、ユウスケの書いたページに目を落とす。


 ------

 【最大レベルっていくつなの?】


 大好きなリノンへ。

 ……わかった。

 今、日記があることを感謝するよ。


 ……相変わらず、経験値効率求めるんだな……。

 そんなに強くなってどうするの?

 武器とかは買ってる?

 もしかして……毒針2本とドレスだったりするの?


 レベル63かぁ……。

 ……もう、イメージができないかも……?

 そもそも、魔王ってどれくらいのレベルで倒せるかわからないし……。

 とあるゲームだと、結構楽勝だと思うレベルなんだけどな……。


 そういえば、最大レベルってどれくらいなの?

 99? 999? それとも無限?

 ……リノンの話を聞く限りだけど、999は無いかな……?


 ……ごめん、そっちの話ばかりになっちゃった……。

 また、教えてね。


 じゃあ、またね。

 ------


「シルビィ、前の勇者ってどれくらいのレベルで魔王を倒したんだっけ?」

「確か……5人パーティーで平均53くらいだったような……」

「あはは……じゃあ、私達はもう超えちゃったね」

「うん……」

「あのね、シルビィ」

「なあに?」

「私、レベル99まで行きたいと思う」

「うん、なんとなく知ってた」

「だから……シルビィも私に付き合ってくれる?」

「全然いいよ! だって私お姉ちゃんにどこまでもついていくって決めたんだもん!」

「……ありがとう。シルビィ……私もシルビィと一緒に旅が出来て嬉しいよ」

「うん! 私も!」


 可愛い私の妹分。こんなシルビィと共に旅が出来て私は幸せだ。まだ交換日記が無くなる不安もある。けどせめて魔王を倒すまでは……。そして眠りにつく。


「おはようございます!」

「おはよう。朝食の準備は出来てるよ!」

「ありがとうございます。あの……魔王の情報を知りたいのですが……」

「う~ん……この辺も混乱してるからねぇ……そうだ、街のギルドに行ってみたらどうだい? そこなら何か情報があるかも知れないよ」

「ありがとうございます。すみません、この地図にその街の印をお願いできますか?」

「お安い御用さ!」


 今回は魔王の情報は無し。私達はギルドのある街に向かうことにした。印を付けられた所に向かうと、大きな街があった。着いた時には夕暮れだったので宿をとり体を休めていた。交換日記……今日の日記をつける。


 ------

 【最大レベルは99だよ~☆】


 大好きなユウスケへ☆

 うん、経験値良い感じなんだもん♪(^_-)-☆

 強くなるって快感がたまらなくて……ね?


 武器は変えるわけないじゃない!

 だって、ユウスケがアドバイスしてくれた装備だよ?

 それに……このドレス、お気に入りなんだ~☆


 レベルの最大?

 えっとね、99だよ。


 魔王はね……ご先祖っていうのかしら?

 前の勇者パーティーは5人で、平均53だったって聞くわよ?


 私、人見知りだから、シルビィとの2人が限界……( ;∀;)

 それに、私の装備で挑むなら、もっとレベル上げなきゃ♪


 じゃあ、またね~☆

 ------


 そう……お気に入りのドレス。ユウスケにアドバイスを貰って買った毒針……。愛おし気に毒針を見つめる私。交換日記を閉じて優し気な光に包まれ、私の想いをユウスケに届ける。私は交換日記を抱きしめながら光を見送った。


「ようこそ! ギルドへ!」

「はい、魔王の情報が知りたくて……」

「分かりました。ではこちらに名前と今のレベルを記入してください」


 前の村で紹介されたギルドに私達は来ていた。私は名前と今のレベル……63と記入する。そしてギルドの人にその紙を手渡す。


「はい、リノン様……え?」

「どうかしました?」

「えっと……レベル……ちょっと腕を確認してもよろしいですか?」

「はい」


 ギルドの人は信じ固いように私のレベルを確認する。私の左腕に刻まれたレベルの表示を見ると、私の顔を二度見する。


「本当……ですね」

「はい」

「えっと……魔王の情報ですね? 北の方に魔王の手下が建てた城があると聞きます。地図を……」

「あ、持ってます。これに印を付けてもらえますか?」

「はい。ここになります。ちょっと遠いので、このルートで町や村を経由して行くといいですよ」

「ありがとうございます」

「どうか、ご武運を!」


 ギルドから情報を引き出し、次の目的地が決まった。どうやら北の方みたい。一番近くの村に寄り、休息をとる。疲れを癒してくれる交換日記を私は手にする。


 ------

 【またバイト始めました!】


 大好きなリノンへ。

 ……やっぱり、99まで上げるつもり?

 そんなに上げたら、魔王逃げてかない?(汗)

 ……いくら何でも、逃げはしないかな……。


 ……装備については、それ以外に色々とアドバイスしてる気が……。

 ……いいけど。


 こっちはもうすぐ冬休みになるよ。

 また休みと学校終わりに、バイトして稼ごうと思う。

 僕はファミレスが板に着いちゃったらしいから、同じところにバイト行ってるんだ。

 うちの料理は結構評判だから、リノンがこっちに来たら、案内してあげるね。


 じゃあ、またね。

 ------


「……ユウスケに、魔王逃げ出さないか心配されちゃった……」

「あはは……レベル上げすぎだもんね……逃げちゃうかも?」

「魔王……本当に逃げたら私達どうすればいいんだろう?」

「その時は追いかけましょ!」


 そして翌日。今度は町にたどり着き休息を取っていた。交換日記を手にして私の日記を綴る。


 ------

 【もちろん!レベル99!!】


 大好きなユウスケへ☆

 うん、もちろんそのつもりだよ~☆

 だって、レベル99って魅力的じゃない?

 そして、魔王と決戦に挑むの。

 そしたら、私の名前ってず~っと残りそうじゃない?


 ……でも、最近の悩みは、ギルドでレベル書くと、

 二度見されるところかな……。

 私って、そんなにレベル無いように見えるのかしら?


 バイト……って、ギルドの事よね?

 前に聞いた時、ユウスケは運び屋だと思ったんだけど、料理屋さんだったの?

 ユウスケ、料理出来るんだ~☆

 そっちに行けたら、ユウスケの手料理食べたいな……。


 じゃあ、またね~☆

 ------


 ユウスケに逢いたい……そんな気持ちがどんどん募っていく。そして私の世界での冒険も終わりに近づいて来ている。交換日記が無くならない保証も一切ない。そして……ユウスケに逢えるかも……。苦しい思いを募らせながら、私は眠る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ