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27話 加速する気持ち

 次の旅に出る準備をして、宿屋の主人にお礼を言い、私とシルビィは魔王の手下が建てたという城に向かう。途中のモンスター達を蹴散らしながら、私達の進軍は止まらない。そして城にたどり着く。城は立派でとても魔王軍が建てたものとは思えないほどだった。……私がのんびりレベル上げしてたから、時間でも持て余したのかしら? 強固に造られた城の中にはオオカミのモンスターが蔓延っていた。そのモンスターも蹂躙し奥へと進む。そして……。


「勇者よ……待ちわびたぞ。我が名はダブルヘッドウルフ。魔王様の寵愛を受けてここの城を治めるものだ。勇者よ……そなたは強くなりすぎた。我が全力を持っても倒すことはできないだろう。だが、一矢報い喜んで魔王様の栄光の礎となろう! 覚悟!!」

「分かったわ。私が相手になる!」


 私の強さはダブルヘッドウルフは知っているようだった。魔王軍の情報網が強いことがわかる。ダブルヘッドウルフは覚悟を決めて私に飛び掛かってくる。二つの頭が牙を剥き私めがけて襲い掛かる。私はその牙をすり抜け、下に潜り込み毒針の一撃をおみまいする。急所に当たったようで、鮮血が飛び散る。


「ぐっ……魔王様……もうしわけ……ございません……」


 それを最後にただのダブルヘッドウルフは骸となる。……ほんのちょっとだけ、どっちが世界を救うものなのか疑問が生まれたけど、そんな思考は隅に追いやる。私は血の匂いがする城内で地図を広げる。


「次はこの街に行ってみようか?」

「……うん」


 シルビィは複雑な表情で返事をする。きっとレベルの上げすぎに呆れてるのかも知れない。こうして目的地を決めて、街に向かい、宿の手配をする。部屋に入った時に交換日記が光りだす。ユウスケからだ! 私は荷物から交換日記を取り出して、ユウスケの日記を見つめる。


 ------

 【気持ち、伝わったよ。】


 大好きなリノンへ。

 ……うん。

 リノンの気持ち、伝わったよ?

 僕も変わらないからね……。

 ……リノンにもし嫌われてたら、ストーカーになっちゃうかも(笑)


 一日1クエストって、結構ハードじゃない??

 え?

 じゃあ、手下の城はもう攻略したの?

 今どこなの??

 もしかしてハイペースで進んでない??

 ちなみに、今のレベルっていくつなの?


 ……聞いてばかりでごめん……。

 ちょっと心配になっちゃったし、

 そっちの世界の事も聞きたかったから……。

 今度はこっちの世界の話しするね。


 じゃあ、またね。

 ------


「ねぇ、シルビィ」

「なあに?」

「ストーカーってなんだろう?」

「さあ? そういえば靴の防具でそんな名前みたいなのがあったような……」

「じゃあ、靴かな?」

「どうだろう……」


 また新しい単語に私達は困惑しながら、明日に備えて眠る。


「おはようございます」

「おぉ、勇者様。おはようございます。朝食は出来ております」

「ありがとうございます。それで今次の目的地を決めようとしてて……魔王軍の情報とかありますか?」

「そうじゃのぉ……ここ最近、魔王軍は活発に活動しているようじゃ。噂ではいくつもの城を建てて拠点を作っていると冒険者から聞いておる。場所は確か……」

「あ、地図があります。ここに印付けていただけますか?」


 宿の店主に魔王軍の拠点を聞き出し、出発の準備を整えて、その城に向かう。その城までは遠く、いくつかの村を経由する必要がある。一番近い村に向かって進む。


「お姉ちゃん、最近ペース早いね……」

「うん、なんか次のレベル上げする場所が欲しくてね」

「……そう」

「シルビィは嫌?」

「ううん。なんだかモンスターが可哀想になっただけ」

「あはは……倒すのが勇者の仕事じゃない?」

「いや……倒しすぎだと思う……」


 そして、目的の村に着き、休息をとる。そして交換日記を開く。今ある疑問……私はシルビィに話しかける。


「ねぇ……交換日記って無くなることあるのかなぁ……」

「う~ん……魔力の源は、魔王の力とも言われてるし……」


 シルビィはお風呂上がりの髪を梳かしながら、私の話に耳を傾ける。


「交換日記が流行りだしたのも、魔王の復活がささやかれてからだし……無関係とはいえないかも……」

「そう……かぁ……」

「うん……魔王が休眠期に入ると、世界全体の魔力が弱まると言うし……」

「……」

「あ、でも気にしちゃダメよ? 魔力が弱まると言っても、全部なくなるわけじゃないから。きっと魔王を倒しても、交換日記は無くならないよ!」


 シルビィから励ましの言葉……多分私を不安にさせないための口実だと思う。もしかすると……交換日記は……。そんな不安を抱えながら、私は私の日記を綴る。、


 ------

 【靴になるくらい好きなの?】


 大好きなユウスケへ☆

 ……うん、ありがとう♪

 でも、ストーカーって何??

 なんだか靴みたいだけど……ユウスケ、靴になっちゃうの?

 そっかぁ…靴になるぐらい私のこと好きなんだね……。

 なんだか、胸が熱くなっちゃうな……。


 そうだ。

 なんだか私がそっちに行けるって、思うようになってからね。

 そっちの話しは、私がそっちに行ってからいろいろ聞きたいなって、思うようになってきたの。


 ……でも、やっぱり、魔王を倒して、そっちに行く手段が無くて……。

 ……この日記も消えちゃったら……って思っちゃった。


 だから、今まで通り、教えてね♪

 私もこっちの世界のこと書くから……。


 じゃあ、またね~☆

 ------


 空元気。正直魔王を倒すのも少し怖くなってくる。もしかしたら……交換日記は……。いや、今はそんなことを考えちゃいけない。今の私に出来ること……魔王を倒すこと。そしてユウスケにこの世界を知ってもらう事。そして……。


「お姉ちゃん?」

「ううん、何でもない」


 私の目が潤む。それを察してシルビィが声を掛けてくる。


「お姉ちゃん、そばに行っても良い?」

「……うん」

「じゃあ……」


 シルビィは私のそばに来ると、両手を広げる。私はそれに甘えて身をゆだねる。少しずつ涙があふれてくる。シルビィは私を抱き寄せて、頭を撫でる。


「うん……交換日記の人の所に行けるように、一緒に考えようね?」

「うん……」


 溢れる涙。少しこらえながら私は静かに泣いた。


 翌日も魔王軍の城を目指し、次の町に到着。宿屋で交換日記を開く。


 ------

 【日記が消える……かぁ……。】


 大好きなリノンへ。

 ……うん、靴は違うけど、近いから良いよ。

 ……そうだね…この日記が消えちゃうことは、考えたことなかったな……。

 もし消えても、リノンの事は絶対に忘れないから。


 ……でも、消えてほしくないな……。

 本当は……僕だって、リノンにとても会いたいから……。


 じゃあ、こっちの事書くね。

 こっちでは夏に始めた日記だけど、もう寒くなってきて、冬休みも近いんだ。

 学校行かなくてもいいって思えるけど、なんか休みの日って、寂しく感じるかな……。

 前まではゲーセンとかカラオケとか、行ってたけど……。

 この日記が気になっちゃって……。


 ……ごめん、あまりこっちのこと書けてないね。

 次は書くから。


 じゃあ、またね。

 ------


 ユウスケのに逢いたい気持ちが強くなる。そして逢えないかもしれない不安でつぶされそうになる。私達の物語。魔王を倒すことでハッピーエンドは迎えられるのだろうか?でも私は勇者。魔王に仇なす勇者。魔王を倒すのが使命。この使命は変えられない。


 明くる日も次の街へと足を進める。宿屋に泊まり、部屋で交換日記を開き、今日の日記をつける。


 ------

 【現在レベル63だよ~☆】


 大好きなユウスケへ。

 ……日記が消えることは忘れましょ♪

 今こうして日記が出来る事に感謝して……ね?(^_-)-☆


 もうすぐ冬休みなんだ……。

 こっちって季節があいまいだから、夏と冬が違うっていうのは、

 不思議な感じ……。


 こっちはね……そうね、手下の城のところからね。

 ……一瞬だった……。

 手ごわいイメージで居たんだけど、拍子抜けって感じだったの。


 で、今はクエストをこなして、転々と経験値効率が良いところ、探してるのだ~☆

 噂で聞いたんだけど、魔王城のそばには、あの固いモンスターの親分みたいなのが居るんだって♪

 今から楽しみなの~☆


 レベルは63だよ~♪


 じゃあ、またね~☆

 ------


「あはは……」


 空元気も良いところ。でも……今こうして交換日記が存在していることに感謝する。そして私のユウスケに逢いたい気持ちも加速する。本当に私達は巡り合えるのだろうか?不安を胸に抱きながら、私は眠りにつく。


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