26話 リノンの進軍
私達は宿屋の朝食を済ませると、旅の支度をする。宿屋の人に城がある場所を持っている地図に印を付けてもらった。そこに向かう途中はクマのモンスターが邪魔をする。私とシルビィでそのクマ達を殲滅する。私は毒針をクマの胸元、急所に突き立て、シルビィは別のクマを横に一閃する。手ごたえは無いが、大量に襲ってくる。そうしていると魔王軍が構えたという城が見えてくる。
「あれが魔王軍が立てた城かしら?」
「そうね……地図の印と同じだから。シルビィ行くよ!」
建物に近づき、魔王軍が建てたというその城に私達は潜入した。中には外のクマとは毛の色違いのクマがうろついていた。多分外よりも強いんだろう。私とシルビィはクマ達の中に突撃する。一方的な殲滅。建物の大理石を基調とした白い床と壁は、クマ達の鮮血で赤に染める。私のドレスも返り血で真っ赤に染まる。先行くところを赤に染めて、最後の扉を開く。そこには大型のクマのモンスターが居た。
「我が名はビックベアー。魔王様の寵愛を受け、この城を守る者。魔王様に歯向かう勇者よ。我が魔王様に敵対するならば、私の敵でもある。勇者よ……ここがお前達の墓場となるのだ!」
ビックベアーは流暢に話し終えると、私達に構えを取る。それに合わせて私とシルビィも構える。そしてビックベアーの隙を伺う。
「どうした? 勇者よ。我の姿に臆したか? ならば行くぞ!!」
「えっと……シルビィ」
「なあに?」
「たまにはシルビィがボスと戦ってみない?」
「わかったよ。じゃあ私の活躍見ててね!」
「なめられたものだな……ではその女剣士から。死んで後悔するがいい。行くぞ!!」
シルビィとビックベアーが対峙する。ビックベアーはシルビィに飛び掛かり、またシルビィもそれに合わせて飛び掛かる。ビックベアーは爪を。シルビィは剣を。それぞれ交差した直後に振り抜く。そして……。
「ばか……な?」
「動きが遅いです」
「く、くそぉ……。魔王様に栄光あれ!!」
シルビィの一閃で上下を両断されたビックベアーは力尽きる。一方シルビィの方は大振りの爪を掻い潜って一撃を放っているので、無傷。流石にシルビィも強い!
「シルビィ、お疲れ様~」
「……なんか、レベル上げすぎた感が」
釈然としない様子のシルビィを他所に、私はシルビィの頭を撫でる。シルビィもこんなに立派に成長したんだね……。そして地図を広げて私は次の目的地、街を探す。この城の近くに街があるらしい。
「ねぇ、シルビィ。次ここいかない?」
「うん、そうね」
城を後にして、目的地の街を目指す。街に到着したのは夕暮れ時。街は賑わいを見せていた。この辺りは平和なのだろうか? とりあえず宿屋に入って今日の寝床と情報を仕入れたい。宿屋を見つけて、シルビィと一緒に入る。
「いらっしゃいませ!」
「こんにちは。二名宿泊お願いします」
「はい、一人45ゴールドね。こっちにサインして」
「あの……魔王軍の情報とか知りませんか?」
「魔王軍ねぇ……この近辺には居ないけど……風のうわさでなら聞いたなぁ……」
「本当ですか? この地図のどこになります? 印付けてください!」
「あっ、ああ、良いよ。確か……ここかな。ちょっと遠いけど」
「ありがとうございます!」
魔王軍の情報も仕入れて、私達は部屋に着く。そして、交換日記を開きながら、ふとシルビィに話をしてみる。
「ねぇ、シルビィ。この交換日記の相手……ユウスケに逢う方法ってあるのかな?」
「う~ん……どうかしらねぇ……交換日記は流行ってるけど、逢ったって話は聞かないなぁ……」
「そう……かぁ……」
「あ、でもでも。これってこっちの世界の物じゃない? もしかしたらこの世界に交換日記の相手に逢う方法があるかも?」
「そう……だね……」
確かにシルビィの言う通り。この交換日記は私達の世界の物だ。本や文字を送る方法があるならきっと、私をユウスケに送る方法も……私はその期待を乗せて、日記を綴る。
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【優等生さん♪】
大好きなユウスケへ☆
あはは☆
怒った~☆
ちょっと、ユウスケ怒らせてみたかったの♪
最近ね、モンスターが弱くて退屈だったの……。
少しでもユウスケに見てほしかったし……。
……。
ごめんなさい……。
世界を渡る方法だけど、そっちの世界よりもこっちの世界に、なんかヒントがありそうな気がするの。
だって、この日記、こっちの世界のものだから。
また、そっちの世界の話聞かせてね~☆
だから、ユウスケはしっかり勉強してみて。
……ね? 優等生さん☆
じゃあ、またね~☆
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そう……シルビィの言う通り。こっちの世界……私達の世界に何かヒントがあるはず。そのためにも私は早く私の冒険を終わらせなければならない。そんな予感がした。
「準備は出来たわね?」
「うん。最近なんか勇者の冒険って感じがする!」
「あはは……私勇者だし」
「そうだね!」
準備が出来て、目的地……魔王軍が居る街のそばまで向かう。モンスターをシルビィと共になぎ倒しながら……。夕方になり村も見えてきた。私達はその村で宿をとり、部屋に入った。荷物から交換日記を取り出すと、ユウスケからはすでに返事が届いていた。私は新しく追加されたページに目を向ける。
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【早く世界を救ってね。僕も祈るよ。】
大好きなリノンへ。
……あまりからかわないでほしいな……。
……本気で怒るよ?
そっかぁ…確かにこっちの世界だと魔法とかはないからなぁ……。
じゃあ、こっちの世界にリノンがくる方法調べてほしいな。
そういえば、手下の城はどうなったの?
あんなに期待してたみたいだけど……もしかして街の周りで経験値稼ぎ?
今度のはあまり放置したらダメだよ?
だって、そばに魔王の手下がいるんでしょ?
住民たちはきっとおびえてると思うよ。
だから、僕もリノンが平和な世界を早く取り戻すことを祈ってるから。
じゃあ、またね。
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「ユウスケ……」
私は交換日記を閉じてぎゅっと抱きしめる。そう、これは私の世界の物。だからユウスケと逢うためには、私の方が行く方法を調べなければならない。
「世界の……私の世界の平和……かぁ」
一人呟く。そう、私は魔王を倒す旅をしているんだ。魔王を倒したら、本格的にユウスケと逢う方法を探してみたい。そう思いながら、瞼は次第に重くなった。
翌朝からまた別の街に向かう。次の街では魔王軍に苦しんでると聞いているので、何か情報が入るかも知れない。期待しながら道中に屍を積み上げ、進んでいく。日も落ちた頃には街にたどり着いていた。宿屋を探してシルビィと入る。
「すみません~、二人お願いします」
「いらっしゃい。じゃあこっちに記入して」
「はい。あの……魔王軍の話を聞いたのですが……」
「なっ、魔王!? 言葉にするのもおぞましい……お客さん、魔王の関係者かい!?」
「関係者……かなぁ……。勇者です」
「おぉ! 勇者様でしたか……失礼いたしました。今、魔王軍が占拠している城で我々街の者が困っております。どうかお力を……」
「うん! じゃあ……この地図に印お願いします!」
魔王の情報と今日の宿にありついた私達。部屋に向かい荷物から交換日記を取り出す。今度は私が書く番。私は素直な気持ちと近況を伝える。
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【……私の気持ちは変わらないからね……?】
大好きなユウスケへ☆
……ごめんね……。
怒ってるところもみたかったけど……我慢するね。
でもね。
ユウスケがどんなに怒っても……もし、嫌われたとしても……。
私の好きな気持ちは変わらないよ?
……たとえ嫌われたとしても、私はそっちに行くからね!!
あ……クエストの事だけど……。
最近はね、1日1クエストって決めてるの。
経験値効率の良いところが出るまで、そう決めてるんだ。
もしかすると、ユウスケが言ってたように、魔王城のそばが効率良いかもしれないし♪
私、平和のために頑張るよ♪
じゃあ、またね~☆
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「……」
何だろう……この不安は……。なんだか胸に突き刺さる。交換日記を重ねる毎に深まる私の恋心。それと合わせて膨らんでくる気持ち……。
「本当に……」
本当に、逢うことが出来るのだろうか? この気持ちは私の中で少しずつ膨らみ、苦しんでいく。あまり大きくしたくない不安。シルビィにも……上手く伝えられない不安。日記では元気で振舞う私。正直な気持ち。だんだんと怖くなっていく。




