25話 砦攻略
朝。宿屋の朝食をシルビィと食べながら、今日の方針を考える。
「今日は砦に行って、またこの村に戻る?」
「う~ん……そうしようか……」
私の提案にシルビィも悩んで賛同する。その時宿屋の女主人が会話に割って入ってくる。
「あら、お二人さん。今日砦を攻略するの?」
「はい、そうです」
「なら、砦の向こう側の村に行くといいよ。その方が近道だしね」
砦の奥の村……かぁ。そろそろここでのレベル上げも飽きてきたし、それも良いかも知れない。私はシルビィの顔を覗き込みながら話す。
「そうしよっか?」
「うん、そうしよ?」
私達は部屋に戻り、出発の準備をする。そしてお世話になった宿屋の女主人に挨拶をし、砦に向かう。途中、岩のモンスターに邪魔されるが、私達のレベルには遠く及ばず、撃沈していく。目指す砦に着き、中に入ると立派な作りになって居た。砦を治めるボスが整備したのだろうか? ミノタウロスのモンスターがうろうろしている中、殲滅しながら奥へと進んでいく。
「せぇぇい!!」
私は毒針を横に薙ぎ、ミノタウロスの喉笛を掻き切る。血しぶきを私にかけ、ミノタウロスは動かなくなる。毒針……今までナイフを使っていた私にとっては、扱いやすい武器で今ではすっかりお気に入りとなっている。……そういえば、まだ毒の効果は使ったことが無いや……周りのモンスターが弱いのと、岩のモンスターは毒体制を持っていたから。ボスにでも使ってみようかしら?
「お姉ちゃん?」
「……ここにボスが居そうね」
私達は静かに扉を開ける。するとそこには牛の頭を持つモンスターが座っていた。そのモンスターはゆっくり立ち上がると、私達に話しかけてくる。
「待ちかねたぞ、勇者よ。我が名はミノタウロスグレート。魔王様の勅命により勇者よここで倒れてもらう!」
今までのボスとは比べ物にならないほどの風格の持ち主で、流暢に話しかけてくる。
「来るよ! お姉ちゃん!」
「うん!」
ミノタウロスグレートは私に向かい突進してくる。私は躱し、すれ違いざまに肩へ毒針を突き立てる。毒が回ったようでミノタウロスグレートの動きも若干鈍くなる。
「おのれぇ……毒だと?」
「あ、初めて使ったの! 効いてる?」
「な、なめやがって!!」
力の差は歴然。……レベルを上げすぎた感がある。正直つまらなかったので、次の攻撃でミノタウロスグレートの急所を毒針で抉る。
「ぐっ……そんな……。くそぉ……。魔王様に栄光あれ!!」
ミノタウロスグレートは最後の捨て台詞を吐き倒れる。レベルの違い……なのかな? 毒針も有効手段になっている。
「……」
「シルビィ、行こうか!」
何かを言いたげなシルビィを横目に砦の奥へと進んでいく。砦を抜けるとそこには小さな村がすぐ近くにあった。砦を隔てて徘徊するモンスターにも変化があった。クマのモンスターでのっそりと歩き回っていた。
「じゃあ、村まで行きましょうか」
「うん!」
クマのモンスターを蹴散らして、村へと急ぐ。村に入るころには日がすっかり傾き、夕日となって居た。とりあえずは宿に泊まりたい。宿屋を見つけて入り、宿屋の主人に話しかける。
「こんにちは」
「いらっしゃい! 一晩一人40ゴールドだけどいいかい?」
「はい、大丈夫です」
「あ……そうだ。お嬢ちゃん達、砦を通ってきたのかい?」
「はい、そうです」
「あそこには強力なモンスターが居たはずなんだが……」
「あ、倒しましたよ」
「こりゃ、たまげた! お! ひょっとすると勇者様かい?」
「ええ、一応……」
「そうかそうか、こんな可愛いお嬢さんが……」
「そんな、可愛いだなんて……」
「そうそう、この先の街なんだが……魔王が城を作ったらしくて、困ってるんだ。良ければその……救ってくれないか? あの街が栄えないと、この村もあおりを食らっちまうんだ……」
「考えておきますね」
「うん、よろしく頼むよ!」
ちょっとした情報ももらい、代金を渡して部屋へ向かう。お風呂で鮮血を流し、一日の疲れを癒すべくくつろいでいた。そうだ……交換日記書かなきゃ。私は交換日記を広げて、新しいページに私の日記を書く。
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【つまんない……。】
大好きなユウスケへ☆
うん♪
もし、そっちに行ければ……って思って買ったドレスなの~☆
実は私も、見てほしいって、思ってるんだ……。
そっちに行く手段ないかなぁ……。
クエストだけど、長老?が、しびれ切らしちゃってた……(-ω-;)
ちゃちゃっと片付けて、今次の村にいるの。
でもね……ここ、経験値あまりよくなくて……。
つまんないから、さっさと次の街に行こうと思うの。
今度の街は、魔王の手下が立てた城がそばにあるんだって~。
ちょっと楽しみなの♪
使命、忘れてないよ?
……話半分だけどね(笑)
じゃあ、またね~☆
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「う~ん……」
「どうしたの? お姉ちゃん?」
「レベル……あそこで上げすぎたよね?」
「私はさんざん止めたつもりだけど……」
「経験値効率もなんだか悪いし、魔王の情報集めて先に進んじゃおうか?」
「……その方がいいと思います」
「そうね……じゃあ、明日は次の街で決まりね!」
私は交換日記を閉じて、ユウスケの元に届くのを見送る。明日は……魔王の城を攻略。手ごたえがあることを祈りながら、私は眠った。
「シルビィ、出発の準備出来た?」
「うん! できたよ!」
二人出発の準備をして、次の街へと向かう。道中のクマのモンスターを惨殺しながら先へ先へと進んでいく。旅は順調。モンスターも弱すぎて手ごたえが無くてつまらない。進んでいくと夕暮れごろには新しい街が見えた。街に入り宿屋を見つけて部屋をとり、お風呂に入ってから部屋でくつろぐ。すると交換日記が光りだし、ユウスケの返事が来たことを示す光りを放つ。私は交換日記を手にして、ユウスケの書いた日記に目をおとす。
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【その調子で魔王城まで行かない?】
大好きなリノンへ。
ドレス、期待してるね!
僕もそっちに行く方法があるか調べてみるよ。
なんとなくね、この交換日記がここにあるから、もしかしたらどっちかの世界に、行く方法あるかもってね。
うん、どんどん進めなよ?
そしたら、経験値効率いいところあるかもしれないから。
もしかすると、魔王城のそばが良かったりしてね。
……学校の話、スルーしたね……。
せっかく考えたのに……。
こっちの世界には興味ないのかな……?
スルーすると、こっちの話しないよ?
じゃあ、またね!
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「う~ん……」
「どうしたのお姉ちゃん?」
「ユウスケから、魔王城のそばが経験値効率良いんじゃないかって」
「多分そうだと思う……」
「じゃあ、経験値効率が良いところまで、進んでみる?」
「うん、そうしよ?」
「じゃあ、まずは城の攻略ね。明日情報収集しましょ」
「うん! わかった!」
「じゃあ、お休み!」
「おやすみなさい、お姉ちゃん!」
私達は明日に備えて眠る。城のモンスターが強いことを祈りながら。