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1話勇者リノン誕生

「リノン、起きて!」


 ……お母さんが起こしてきた……。何で今日に限って……何時もなら私が起きるまで寝かせてくれるはずなのに。


「まだ眠い……」

「何言ってのよ? 今日は16歳の誕生日でしょ?」


 んん……そういえば今日8月13日は私の誕生日だった。だったら急いで起こしに来なくたって……。


「ほら、起きて? お城に行くわよ。ほら、準備して!!」


 ……なんでお城に行かなきゃならないんだろう……。


「お城?」

「まだ寝ぼけてるのね……。昨日言ったでしょ? 街の決まりで王様と謁見するって。ほらさっさと準備して?」


 そっか……街の決まりで16歳になったら、王様と話す決まりだったか……。


「今準備する~」


 私は眠い目をこすりながら準備をはじめて、お母さんの待つ部屋に行く。


「ご飯食べたら、行くわよ!」

「ふぁ~い……」


 私は気のない返事を返す。……正直、めんどくさい……。決まりって言っても、なんで呼び出されるんだか……。


「王様、こっちに来ればいいのに……」

「なに、バカなこと言ってるの? 早く食べちゃいなさい!」


 そして、お城へ向かう。16歳といえば、ここでは大人って扱いになるから。成人式…みたいな感じ? お城に入ると、まず係の人(?)が、私に話しかけてきた。


「お誕生日おめでとうございます。リノンさんですね? まずはこちらに入って賢者様のお話を聞いて下さいね」

「は~い!」


 部屋に入ると、奥の方に椅子があり賢者の人がそこに座ってた。向かい合うようにソファーも置かれている。面談かしら? そう思いながら私は賢者の人に挨拶する。


「失礼します!」

「どうぞ、座ってください」


 賢者の人に言われて向かい合ったソファーに座る。賢者の人が私の顔を真剣な眼差しでじーっと眺める。


「……?」


 顔に何かついてるのかな……。朝ごはん食べて、すぐ来たから……。ご飯とか付いてたら恥ずかしい。慌てて顔を拭こうとしたその時、賢者の人が口を開く。


「……しばらく待っていていただけますか?」


 真剣な表情で賢者の人が言ってきた。何があったんだろう?


「わかりました」


 賢者の人は、真剣な面持ちで部屋から出ていった。……私、早く帰りたいのに……。そう思っているとドアをノックする音が聞こえる。


「はい!」


 あれ?意外と早い……。もっと待たされるかと思った……。


「失礼します。ちょっと長くなりそうてすので、こちらを飲んでお待ちください」


 さっきの係の人が、お茶を持ってきてくれた。これは……帰れないフラグだろうか?


「ありがとうございます。どれくらい待つことになるんでしょうか…。」


 私は不安(不満?)気に係の人に聞く。


「30分くらいでしょうか……。ちょっとリノン様の場合、特別らしくて……」


 係の人も困ったように答える。あれ? さっきは「さん」だったのに……。


「そうですか……。わかりました」


 ……30分あれば、お魚何匹捕まえられるかな……。そんな事を考えながら言われた30分を自由に過ごす。待つのは時間が長く感じるもので、正直退屈だった。そろそろ叫ぼうかと思ったときにまたドアがノックされる。


「お待たせしました。どうぞこちらに」

「はい」


 やっと、謁見の間に通される。正直早く帰りたい。謁見の間は偉そうな人たちがズラーっと並んでいた。なんか……お母さんも一緒に並んでる……。


「ようこそ、いらっしゃいました」

「はじめまして、リノン・ジータです」


 側近の人から声が掛かり、私は王様に向かって挨拶をする。そして……。


「あの……」

「なんじゃ?」


 王様に思わず聞いてしまう。


「成人の儀式って、こんな感じなんですか?」


 なんか……この雰囲気、怖い……。ちょっと年上の子達がこれを経験していると思うと、凄いと感じた。この威圧感、半端ない……。


「いいや……。リノン殿は特別なんじゃ……」


 神妙な面持ちで王様は答えた。……そうようね。子供1人に毎回こんなに人集めたら、

この国、どうかしてるって思っちゃうわ。……って、特別って何!? 遅れてその言葉に私は反応する。


「リノン殿は、勇者の生まれ変わりで……。今魔王が復活したところなのじゃ……。リノン殿にはその魔王を倒してほしい」


 ……はぁ?ナニソレ?


「魔王が復活し魔王軍が結成され、魔王達は人々を襲い恐怖に陥れ……」


 いやいや、勇者って、なに? もう、王様の言葉は耳に入らない……。私の中で混乱する。


「仲間を増やし、どうか魔王を倒してほしいのじゃ。これは、旅の準備金100ゴールド。受け取ってほしい」


 ……意外と奮発してる。お魚だったらどれくらい。……って、マジか……いや断りたい。絶対断りたい!


「リノン……立派になって……」


 !? お母さん泣いてる!? これ、断れないフラグ? 追い込まれた!? ……腹をくくるしかないと悟った私から出たひと言。


「……わかりました……」

「頼んだぞ、リノン殿! それと城の宝物庫に武器防具、その他の物もある。好きに使ってよい」

「……はい……」


 どうしよう……断れなかったとはいえ、勇者になっちゃった……。今から丁重にお断り……出来る雰囲気じゃないな。そんな思惑を知ってか知らずか、城の兵士に案内されて、宝物庫につく。


「こちらのものをどうぞ」


 見渡すと色々な装備が置いてあった。でもそれよりも私の気になったものがあった。


「そっちの扉は?」

「こちらはリノン様が冒険を重ねて戻ってきたときに開けるように言われてます」

「ふ~ん……。じゃあ、楽しみにしておくわ」


 そして案内された宝物庫を物色。


「……これで魔王を倒せと?」


 中には木刀と布の服、木の鎧、回復薬が6つ。勇者って言われた割に、私期待されてない!? とりあえず、木の鎧を装備してみる。でも……。


「……可愛くない……」


 木の鎧は気に入らなかったので、木刀と布の服、回復薬6つを貰っていく。


「ねぇ……本当に私、勇者なの?」

「強くなれば、もっと装備が使いこなせると思います。城の辺りにスライムがいるので、戦って経験値を稼いでみてください」


 ……スライムかぁ……。見たことあるけど、倒したことはないや……。時々、増えて土地を荒らすから、駆除されてるって聞くけど……。とりあえず、経験値を稼いでレベルアップすればいいのかしら?


「わかったわ」


 そして私は城から街に向かった。


「そういえば、武器屋って、どんなの置いてるのかしら?」


 100ゴールドもあるし、装備できそうなものあれば買っておこう。普段は行ったことの無いお店なので、ちょっとしたショッピング気分になる。


「いらっしゃい!」

「えっと……」


 布の服20ゴールド……。

 木の鎧50ゴールド……。

 木の盾30ゴールド……。

 ナイフ240ゴールド……。

 雷の剣1800ゴールド……。


 当面は、ナイフが欲しいかな……。小さいし使いやすそう。そのためには、まずお金集めしなきゃ……。に、しても、この国大丈夫かしら? 雷の剣は置いといても、木の防具って……。


「何か買うかい?」

「布の服ください」


 ……やっぱ、着替えほしい。魔法が掛かっているから本当なら防具の着替えなんていらないらしいけど……。先ほどお城で入手したのとは色違いの服を選ぶ。ふと王様の言葉を思い出す。そういえば仲間がどうこう言ってたけど……。武器屋のおじさんに聞いてみる。


「あのぉ……仲間探してるんですが……」

「……リノン様ですね。お話しは聞いてます。ギルドに向かわれてはいかがでしょうか。仲間探しをしている冒険者が居るはずです」

「ありがとうございます」


 おじさんに聞き、私は思案する。……ギルドかぁ……。私、人見知りなんだけど……。とりあえず行ってみるかぁ……。ギルドの位置は把握済み。一応目立つところにある。そしてギルドに入ると、冒険者が沢山居た。


「……話しかけろと?」


 ……お店の人は良いけど……。『一緒に魔王倒しませんか?』なんて、言えない……。


「……無理!!」


 私は、ギルドを飛び出して、街の外に出た。


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