18話 惚気全開夏の海
日差し全開夏の海。今日もシルビィとキラーフィッシュとで夏のバカンス。強い日差し、青い海、そしてキラーフィッシュの鮮血で染まる浜辺。返り血を浴びたまま私は空を仰ぐ。心地いい。
「シルビィ、海っていいね~」
「お姉ちゃん……この惨状でそれもどうかと……」
日差しを浴びて、キラキラ光る水面。ユウスケともこうして遊べるといいな……。襲い掛かってくるキラーフィッシュをナイフで殲滅しながら、海と戯れる。
「お姉ちゃん、そう言えば灯台の件、どうする?」
「ん~、ここでレベルとお金がたまってから~」
海遊びとキラーフィッシュ狩りに興じる私。う~ん、夏の海って最高~☆ 夕暮れまで遊ぶと宿屋の部屋に帰宅。ユウスケの日記を読む。
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【リノンの事、もっと知りたいな……。】
こんにちは!
いや……だから、水族館は食べる場所じゃなくて、
お魚がたくさんいるところだよ?
お魚が泳いでる姿を見ると、心癒されるんだ。
そういえば、リノンのレベルはいくつになったの?
リノンの事、もっと聞きたいな……。
僕もリノンの活躍って聞いてみたいと思うから。
出来るだけ……リノンの事、知りたいし……。
港町って、どんなところなの?
今度はどんなクエストを受けるの?
良ければ、聞かせてほしいな。
返事待ってます。
大好きなリノンへ。
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きゃー!! 大好きなリノンだって! 私の事もっと知りたいって! 心の中で思いっきり叫ぶ。私は有頂天になる。胸がキューっと閉めつけられる感触もある。
「……声、漏れてるよ」
シルビィの言葉をしり目に、私は舞い上がる。交換日記を閉じて机に置き、ベッドの布団にくるまる。抑えられない気持ち。あふれ出す気持ち。私の中でいっぱいになる。
「お姉ちゃん~、読んでも良い?」
「ダーメ!」
ベッドで一人悶える私。ちょっとだけシルビィが寂しそうな顔をしたのが横に見えた。
「ユウスケ~☆」
「お姉ちゃん、苦しい……」
「大好き~☆」
「私、ユウスケさんじゃないから!」
「ふにゃ!?」
シルビィに軽く突き飛ばされて目が覚める私。そして夢を思い出して顔を緩める私。迷惑そうに私を見つめるシルビィ。とっても幸せな夢を見てた気がする。そして一緒に寝てたしルビィを抱き枕にしてたみたい。腑抜けた私にシルビィは悪戯な笑みを浮かべながら私に話しかける。
「ねぇ、どんな夢見てたの?」
「ひゃ!?」
「ねぇねぇ?」
「い、言えない!!」
「……可愛い」
腑抜けた私をからかうシルビィ。とっても楽しそうだ……。
「よ、よし! 着替えて海行こ♪」
「あ~、話しそらした~」
青い空元、経験値稼ぎと言う名の正義で、キラーフィッシュを殲滅する私。
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【お魚捕るの得意だよ~☆】
こんにちわ~☆
水族館って、食べるところじゃなくて、捕るところなのね?
私魚捕るの得意だよ!
もし、そっちに行けたら、私の腕見せてあげるね♪
……私の事もっと知りたいなんて……そんな……(/ω\)
えっとね……16歳で、身長は145㎝だよ~。
勇者になる前は、家の仕事で魚捕ったりしてたんだ~。
私の両親は、川で魚を捕る仕事をしていたの。
だから、私魚捕るの得意なんだよ~。
それでね、港町だから、見たことがない魚がいっぱい置いてあって、
びっくりしちゃった!
海で魚を捕ると、あんなにたくさん魚が捕れるのね!
じゃあ、またね~☆
大好きなユウスケへ(/ω\)
P.S.
今、船を探してます。
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「っと♪」
「交換日記書いてたの?」
「そうよ~」
「うふふ……」
「え? なに?」
「最近のお姉ちゃん、楽しそうで私も嬉しい」
「そう……かな?」
「うん! 惚気全開で楽しそう!」
「うぐっ!」
「いいの、そう言うお姉ちゃん見てるの好きだから」
「~~~~!!」
「じゃあ、そろそろ寝ましょ。あ、今日は抱き枕にされたくないから一人で寝るね~」
「……うん、わかった」
「お休み~」
「お休み~」
「ユウスケ~☆」
「お姉ちゃん?」
「そんな……まだ……」
「……」
「……うん」
「お・き・ろ~!!!!」
シルビィに布団を引っぺがされる。後もっちょいだったのに……。
「心の声漏れてるよ?」
「ひゃい!?」
「嘘。じゃあ、行きましょ? ……って、今日もキラーフィッシュ?」
「そうよ~。夏だし海だし楽しまなきゃ!」
「……私は普通の海水浴がいい……」
こうして、また今日もキラーフィッシュに正義の鉄槌を下す。
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【そっちの世界の話しも聞きたいな】
こんにちは!
……水族館は、もしこっちに来れたら、説明するよ……。
あと、魚捕ったり、色々食べれられるところも探しとくから……。
リノンはちょっと小さめなのかな?
僕もちょっと低めで168㎝なんだよ、
そうと、僕も異世界でのリノンの活躍を知りたいって思うんだ。
新しい魔法とか知りたいし。
ダンジョンで何を手に入れたのかとか……。
今は船を探してるみたいだけど、海を渡るの?
良ければ、そっちの世界のことも教えてね。
大好きなリノンへ。
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そして、翌日。私はキラーフィッシュを満喫して、宿に入る。交換日記を手に取り、日記を綴る。
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【今日もユウスケの夢を見たの!】
こんにちわ~☆
じゃあじゃあ、私の夢に出てきてるユウスケと身長
同じぐらいだ~☆
良い身長差だね♪
今日の夢はね、なんかお城に居たの。
そしてね、ユウスケがエスコートして、お城で踊る夢だったの。
踊り終わった後、二人で食事してね……。
そして……(/ω\)
ねぇねぇ……。
ユウスケは私の夢を見たりする?
夢の話とか聞きたいなぁ……。
ユウスケの夢で私はどんな感じだろう……。
また、聞かせてね♪
ユウスケ、大好きだよ……。
P.S.
船、まだ見つからない。
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「日記、終わった?」
「うん、終わったよ~」
「……お姉ちゃん、そろそろ倒さないと、怒られちゃうよ……。」
「……うん、さすがにシルビィのレベル30の目標は、このあたりのモンスターだと無理あるかぁ……」
「さっさと、対岸の街に行って、効率上げた方がいいような……」
「そうね。明日灯台のキラーフィッシュのボス倒して、明後日には向こうに行きましょうか」
「……うん、それが良いと思う……」
うん……遊び過ぎた実感はある。明日は港街を救うべく、勇者リノンが立ち上がる! とか心の中で言ってみる。