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17話 夢で逢えたら

 私達は情報を仕入れるために街を散策していた。次の目的地を決めるために。港街と言えば船かもしれない。とりあえず船着き場に行ってみる。そこには船がたくさん並んでいた。船と言えば川で使うものしか見たことがない私にとっては新鮮だった。兎に角大きい。これでお魚を一杯捕れるのかと思うと、胸が踊る。


「船大きいね……」

「……お姉ちゃん、ちょっと様子が変よ?」

「え? なんで?」

「沖に出ている船が無さそうだから……ちょっと聞いてみましょ?」


 シルビィが誰かから情報を得ようと、話しかける提案をする。


「……うーん……」

「……」


 しかし……ここで二人とも人見知り属性が発動。お互いに見つめあう。でもここは……ちょっとだけシルビィに良いところを見せたい。姉貴分なので妹分を頼りすぎてはいけない。


「……私……話してみる」

「うん……ありがとう」


 少しだけシルビィの顔が和らぐ。私は勇気を振り絞って、近くに居たおじさんに話しかけてみる。


「……あのぅ……」

「ん? 何だい? お嬢ちゃん?」

「ひゃい!!」


 おじさんは威勢のいい声を張り上げる。それに私は動揺する。いや……動揺している場合じゃない! もう一度勇気を振り絞る。


「船……どうされたんですか?」

「あぁ、俺たちも困っててよ……。灯台のふもとにキラーフィッシュのボスが居ついちまって。あの灯台は夜の灯だけじゃなく、魔物からも身を守ってくれるんだ。だから海一面キラーフィッシュが現れちまって……船も出せないんだよ」

「そう……ですか」

「まったく……魔王が復活してからあちこちで異変が起きやがる。そういえば勇者様が今旅をされていると聞いているが……この街も救ってくださらない物かね……」

「そう……ですね……」

「ん? お嬢ちゃんたち、どうしたんだい? 見たところ冒険者の様だけど……。船に乗りたいのかい? なら今はダメだね。定期船も出せない状況なんだよ。ごめんな」

「分かり……ました」


 私はおじさんにお礼を言うと、そそくさとシルビィの元に戻る。はぁ、緊張したぁ……緊張で聞いたことも忘れそう……。兎に角シルビィに事情を話す。


「とりあえず、当面の目標は灯台のモンスター退治ってところかしら?」

「そうね。その後どうしよう?」

「私……船乗りたいんだけど、お姉ちゃんは?」

「私も~」


 取り合えず船に乗ってみる。利害は一致したので、私達は次の作戦を考える。


「情報も聞けたし、海で遊ぼうか?」

「うん♪」


 次の作戦が決まった。


 港街を出てモンスターだらけの浜辺に行く。私達以外はキラーフィッシュしかいないので、邪魔されないように海遊びを楽しむ。


「いっくよ~♪」

「おねえ……ちゃん?」

「なあに?」

「……この遊びは、道徳的によろしくないかと……」

「なんで?」

「……いくらモンスターだからってキラーフィッシュで遊ぶのは……」

「いいじゃない? 経験値もお金も入るし♪」


 日も暮れて、キラーフィッシュ達の血で染まった浜辺を後にする。そして宿屋の部屋に帰る。海の水はべとべとしているので、シルビィを先に後から私がシャワーを浴びる。そして寝間着でゴロゴロしていると、交換日記が光る。ユウスケからだ! 私は胸をときめかせながら交換日記を手にする。でも……私の告白を受け入れてくれたかも不安になる。私は意を決して深呼吸をしてから交換日記を開く。そこには……。


 ------

 【大好きなリノンへ】


 大好きなリノンへ。

 返事くれて、ありがとう。

 読んでて、僕も胸が熱くなりました。

 リノンはどんな気持ちで書いてくれたんだろう……って。


 僕も大好きだよ。

 ……女の子とこんな話しするのは初めてだから、あまり言葉が

 思いつかなくてごめんなさい……。

 でも、僕の気持ちが伝わると嬉しいです。


 今日は水族館に行ってきました。

 僕の好きなジンベイザメも見ることが出来ました。

 写真とかがあると、見せたいけど……。

 水族館はきれいなところです。

 もし、可能なら、リノンと一緒に行きたいな……。


 ダンジョンのことも教えてくれると嬉しいな。

 また、返事を待ってます。

 ------


「~~~~!」


 胸がきゅんとする。嬉しい!! 私は初めての恋が成就して、舞い上がってしまう。同時に切なさも感じる。交換日記の向こう側。ユウスケに今すぐ逢いたい。そんな気持ちも抑えられなくなってくる。嬉しい気持ちと切ない気持ちの交錯。これが恋なんだなぁ……としみじみと実感する。


「お姉ちゃん♪」


 シルビィが悪戯な笑みを浮かべて私の顔を覗き込む。なんだかシルビィも楽しそう……。私の恋路を後押ししてくれる……そんな妹分の存在も、愛おしく感じた。


「さ、寝ましょ♪」

「うん! 海で疲れちゃったし……またお姉ちゃんの所で寝ていい?」

「いいよ~」


 ここにきて、使われていないベッドに切なさを感じながら、布団に入る。そして今日も恋バナで二人盛り上がっていた。


 ・・・・・・


「リノン、ここが水族館だよ」

「わぁ……素敵! お魚一杯取り放題ね!」

「うん、そうだね」

「じゃあ、私、今日のご飯用にお魚一杯捕るね!」

「うん、ありがとう。でも捕り過ぎても食べられないから、食べられる分だけね」

「はーい!」


「へぇ……ここがユウスケの家なんだ……」

「うん、僕の部屋に案内するね」

「うわぁ……すごい! 本が一杯並んでる!」

「本も好きなんだ。全部読み切れてないけど……」

「そうなんだ……。じゃあ、私お魚料理してくるね!」

「うん、ありがとう」


「できたよ!」

「リノン、すごいね!」

「えへへ……お魚に関してはプロだから!」

「うん! おいしい! さっき捕ったばかりだから新鮮だね!」

「ありがとう♪」

「あ、リノン、顔に魚が……」

「え? あ! うそ?」

「僕が取ってあげるね。目を閉じて?」

「こう?」

「そうそう。そのままでいてね……」


 ・・・・・・


 ……目が覚めた。


「お姉ちゃん?」

「……」

「顔、にやけてるよ♪」

「え?」

「いい夢見たのね♪ あぁ……羨ましいなぁ~♪」


 茶化すシルビィ。……本当、幸せな夢見たなぁ。現実になると嬉しいんだけど。そして今日もキラーフィッシュ一杯のリゾート地で、堪能する。日が暮れるころには浜辺が真っ赤に染まっていた。

 宿屋に戻り、体を洗ってからくつろぐ。そして交換日記を取り出して、今日の日記を綴る。


 ------

 【昨日ね、ユウスケが夢に出てきたの♪】


 こんにちわ~☆

 うん、私もうれしかったよ?

 水族館ってところ、私も行ってみたいな……。

 いろんな魚が食べ放題なのかな?

 私もユウスケとそういうところに行ってみたいな……。


 ……会いたい気持ち、強くなっちゃったよ。

 ……ユウスケ、責任とってね♪(/ω\)


 昨日もね、ユウスケが夢で出てきたの☆

 どんな夢かは……ひ・み・つ♪

 ちょっとだけ話すと、ユウスケとデートしてる夢だったの。

 いろんなところ行って、色々食べて……。

 ……いつか夢が現実になればいいなぁ……って。


 じゃあ、またね~☆

 大好きだよ♪



 P.S.

 ダンジョンは攻略して、今港町に居ます。

 ------


「よしっと♪」


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