表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/51

16話 海とリノンの返事

 シルビィの機転でユウスケから告白を勝ち取った私。モヤモヤしていた気持ちは嬉しさに変わってゆく。今まで経験したことの無い気持ち。嬉しくって舞い上がりそう。今日は新しい街、港町に向かって戦いを繰り広げていた。


「~♪」

「……お姉ちゃん」


 張り切って戦う私を横目に、少しあ切れ気味のシルビィ。私は浮かれながらプチデビルやアルマジロを捌いていく。今日は気持ちがいい。返り血を浴びながら天気のいい空を仰ぐ。進んでいくと潮風が鼻孔をくすぐる。


「あ……」

「お姉ちゃん、海ね」


 街から出たことが無い私にとってはとても新鮮だった。広い海。どこまでも遠く水をたたえている。川育ちの私にとっては新鮮な景色だった。日光が反射する水面はキラキラと輝いていてきれいだった。しかし見惚れているわけにもいかず、新手のモンスターが襲い掛かってくる。……魚!?


「キラーフィッシュね……」

「お魚なら私の得意分かも?」


 私は襲ってきたキラーフィッシュを迎え撃つ。ナイフでキラーフィッシュを捌いていく。……モンスターだけど、焼いたらおいしそう……。そう考えながら三枚におろしてみたりして戦い方を工夫してみる。


「……ちょっと、お姉ちゃん!?」

「えへへ☆」


 なんか癖でキラーフィッシュを捌いてしまう。今までしみついた漁師魂に火が付く。キラーフィッシュの躯を積み重ねていく。……なんかもったいない気もしてきた……。


「ねぇ、シルビィ」

「なあに? お姉ちゃん」

「これ、焼いて食べられないかな……」

「……毒があるから無理じゃない?」

「……そっかぁ……なんかもったいないなぁ」


 私は卑しくキラーフィッシュたちの躯を眺める。毒があるなら仕方ないか……。それにしても海奇麗……。


「ねぇ、シルビィ」

「今度は何?」

「海で遊びたい」

「……とりあえず、今日の寝床を探してからね……」


 シルビィに少しあきれられる。これじゃあどっちがお姉さんかわからない状態だ。とりあえず魚を三枚に卸しつつ、港街に到着。宿屋を探しに散策する。港街だけあって賑わっていて見たこともないお魚が店の軒先に並ぶ。


「今日の夕食、お魚が良いなぁ……」

「うん、そうしましょうね。お姉ちゃん」


 魚市場に後ろ髪を引かれながら、宿を見つけて入る。流石に街なだけあって、建物も豪奢。部屋が気になる。


「いらっしゃいませ。2名様ですね? 40ゴールドになります」


 やっぱり村の宿屋よりもちょっと高い……。まぁ仕方ないよね? これだけ奇麗な宿屋なんだから。高いと言って安宿を探すのも野暮だし、モンスターからお金をせしめているので、しばらくの拠点はここに決める。


「分かりました」

「ではこちらにお名前を記入ください」

「はい! ところでお風呂はどこにあるんですか?」

「各部屋にありますよ。ゆっくりおくつろぎくださいね」


 ちょっと大浴場が無いのは惜しい。けど立派な宿なだけあって設備は充実してそう。受付を終わらせてしばらくの拠点になるであろう部屋に入る。まずはお風呂……。


「シルビィ、先入っていいよ?」

「いや、お姉ちゃんが先がいい」

「そう……じゃあ、先に入るね」

「……一緒でも良いんだよ?」

「……いや、狭いからダメ」


 シルビィに譲ってもらい私はシャワーを浴びる。滴る水は真っ赤に染まり、そして徐々に透明になっていく。でもキラーフィッシュの生臭さは取れないので、石鹸で体を洗い匂いも落とす。シルビィをあまり待たせるわけにはいかないので、早めに上がる。


「シルビィ、良いよ~」

「は~い!」


 シルビィとお風呂を交代して、私はベッドに座り髪を乾かす。……ちょっとはしたないけど、下着姿で思いっきりくつろぐ。そうだ……交換日記。そのまま交換日記に手を伸ばして、私の日記をつける。ユウスケ……私の返事を待ってるはずだから。


 ------

 【私も……好きだよ……。】


 ……うん、ありがとう……。

 私も、ユウスケの事が好きなんだよ?

 こうして日記書いてて、そう思えるようになったんだ。


 だから……シルビィの事ばかり気にしてるのに、私……つい……。

 私こそごめんなさい……。


 ……でも、ユウスケの初めての告白、私がもらえてうれしかったな。

 ……うん、とっても、とっても、とーーーっても。


 ねぇ……。

 私ね、時々ユウスケの事、夢で見るの。

 ……出てくるユウスケは私の想像だけどね……。

 ……。

 ……夢の事思い出しちゃった…(/ω\)


 私ね。

 気軽な気持ちで、「交換日記」ってこの本に書いたの。

 そして、私の日常を誰かと共有したいなって……。


 でもね。

 今はユウスケと、こうして交換日記出来るのが、うれしく思うの。


 この本ってね、誰かのところにランダムに飛ぶようになっててね……。

 最初は私の話聞いてくれる人なら誰でもいいって思ってたけど……。


 今はね。

 ユウスケにこの本が届いたのは、運命だと思うんだ……。


 ……あはは☆

 なんか、運命感じちゃうなぁ……。

 もしかして、私の運命の人って……。


 これからも、こうして交換日記出来ると嬉しいな……。

 私も……ユウスケの事、大好きだよ……。


 ……こうして書くのも、恥ずかしいんだね……。

 ユウスケにこんな思いさせちゃったんだ……って思うと、私も胸が痛くなるわ……。


 ありがとう。

 これからもよろしくね。


 ……出来ればずっと一緒に……。


 ……な~んてね♪(/ω\)



 大好きなユウスケへ。

 ------


 今までを振り返ると、ユウスケが夢に出てきたこともしばしばあった。私の気持ちが整理された事でその理由を改めて知る。そしてユウスケの想いを全部ぶちまける。いつもに増してたくさん書いてしまった……。この返事……ユウスケにも届くといいな……。胸をときめかせながら、交換日記を閉じる。私の初めての告白を乗せて、交換日記は光り輝いてユウスケの元に届いたことを知らせる。


「ただいまぁ~♪」

「おかえり、シルビィ……って、裸じゃない!?」

「良いじゃない、女同士なんだし♪ それにお姉ちゃんだって、下着でくつろいでるじゃない?」

「そ、そうだけど……とりあえず、服着て!!」

「は~い!」


 シルビィは服を着る。その動作をしながら私に微笑みながら話してくる。


「交換日記、今日は良いの書けた?」

「え? いや! その!」

「うふふ……その様子なら……応援するね! お姉ちゃん♪」


 シルビィはいたずらに笑う。部屋着に着替えてから宿のカウンターに行き血まみれになった服の洗濯をお願いして、今日は寝ることとした。


「ねぇ、お姉ちゃん」

「なあに?」

「久しぶりに一緒に寝ていい?」

「いいわよ~」

「ありがとう!」


 そう言うとシルビィは一緒のベッドに入ってくる。そして……。


「交換日記の彼とはうまく行きそう?」

「え? いや! 何を……」

「えへへ☆ 恋の悩みは私にお任せあれ!」


 悪戯に微笑みながらシルビィは私に言う。恋バナ談議に花を咲かせ、気が付いたら眠りについていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ