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12話 シルビィの武者修行

 女子会談議に花を咲かせた翌日。私とシルビィは眠い目をこすりながら、食卓に向かう。お母さんが朝ごはんを用意してくれているみたいだ。流石実家。とってもくつろぐ。


「あら、二人ともおはよう。朝食の用意できてるから食べてね!」

「ありがとうございます。ではいただきます」

「いただきまーす!」


 私の大好物の焼き魚もある。やっぱりお魚幸せ♪


「リノン。また旅に出るの?」

「うん、しっかり休ませてもらったし。それにシルビィも居るから村を拠点にして活動しようと思うの」

「そう……また寂しくなるわね……」


 お母さんが切なそうに言う。まぁ……私勇者だから。魔王倒しに行かないとだし……。食事を終わらせると旅の準備をする。とは言っても荷物は少ない。とりあえずは村を目指してそこでシルビィの装備を整えようと思う。


「じゃあ、行ってきます!」

「寂しくなったら、いつでも帰ってきてね?」

「うん!」

「シルビィちゃんも我が家だと思ってくれると嬉しいわ」

「はい、お母様。お食事おいしかったです」


 そして街を飛び出して、スライムを漁る。行く道見かけたスライムには漏れなく躍りかかる。今回はシルビィも居るので援護しながらの戦いとなる。レベル1とは言えシルビィは代々戦士の家系なので、安心して背中を任せられる実力は兼ね備えていた。シルビィのレベルも上がっていき、スライムであれば一撃で倒せるほどになってくる。一段落してシルビィと会話しながら村の道を進む。


「ねぇ……シルビィってレベル上がるの早くない?」

「えっと……職業によってレベルの上がり方は違うようですよ? 勇者の場合が一番レベルが上がるの遅いって聞きますし」

「げっ! じゃあシルビィにレベル追い抜かれちゃうかも……」

「ん……今の歴史の中では勇者様のレベルを追い抜いた人はいないみたいです」

「そう……なの?」

「はい。勇者のレベルを追い抜くって、結構大変らしいので」


 う~ん……でもこの調子だとレベル抜かれそうな気がするんだけど……。そこでいったん会話は途切れ、今度はプチデビルを襲う。ここからレベルの効率は良くなるので、シルビィも戦力として育て上げたい。そう思いながら見かけたプチデビルを一掃しながら村にへと進む。村に着いた頃には日が落ちそうな時間になっていた。


「ちょうどいい時間ね。宿屋で休みましょ?」

「うん!」


 人見知り同士だと仲良くなるものなのだろうか。村までの戦闘を繰り返しているうちにすっかり姉妹のような関係になっていた。一人よりも二人。なんだか心強いし、何より私に妹が出来た感覚。なんか嬉しい。宿屋に入り宿屋の人に話しかけた。


「こんにちは。以前はお世話になりました。またよろしくお願いします」

「おぉ、これは勇者様。お仲間も加わったのですね? 一人10ゴールドなので20ゴールドになりますがよろしいですか?」

「はい! 大丈夫です」

「ではこちらにお名前を記入ください」


 台帳を渡されて、私が名前を先に書きシルビィに渡す。シルビィも名前を書いて宿屋の人に返す。


「じゃあ先にお風呂いただきますね」

「はい、どうぞ」


 戦闘で返り血まみれになった私とシルビィは浴場の脱衣所に行く。服を脱ぎながらシルビィと会話する。


「なんか一緒にお風呂なんて、気恥ずかしいわね」

「そ、そんなこと言わないで! 私まで気恥しくなっちゃうから」

「私は小さいころ、友達とお風呂に入って以来だな……」

「私も一人が多かったです。……やっぱり気恥ずかしいです!」


 服を脱いだシルビィの体を見る。筋肉もあるけど体のラインはきれい……。ちょっと見とれてしまう。


「そ、そんなに見ないで!」

「いいじゃない? 減るもんじゃないし?」


 なんかこういうの楽しいなぁ……同年代の女の子とこうしているなんて……。勇者って言われてからこんな事になるとは思わなかったし。あの時はグレーの青春を送るんだなって覚悟したものだった。


「お姉ちゃん、お風呂入ろ!」

「あ、うん! このままだと風邪ひいちゃうもんね。それに血なまぐささも洗い落としたいし。入りましょ!」


 浴場に入り、返り血を流す。体を洗い湯船に浸かる。やっぱりこの瞬間は最高! 宿屋のお風呂広くて最高! 私はシルビィの前を泳いで見せる。


「そういえばこの後、どうするの?」

「えっとね……村の宝が洞窟にあるらしいから、それを取りに行くクエストね。その前にシルビィのレベルを上げてからの方がいいかなって思ってるの」

「じゃあ、しばらくは私のレベル上げ?」

「そうね。レベル10くらいは欲しいかも? それまで一緒に頑張りましょ!」

「うん! お姉ちゃん頼りにしてるね!」

「ありがとう!」

「ところで……」

「ん?」

「いくら浴場が広いからって、背泳ぎはどうかと……」


 気恥ずかしそうにしルビィは目を伏せる。そうだ……いつもお魚捕りに行くから泳ぐの癖になってる……。しっかり体を温めてから、浴場から脱衣所へ。そして着替えをして宿屋の人に洗濯をお願い。私達の部屋に入る。前は一人部屋だったけど今回は二人部屋。ベッドも並んでおかれている。私は濡れた髪を乾かしながら櫛を通す。


「そうだ、お姉ちゃん。交換日記読んでもいい?」

「いいよ~」


 シルビィは交換日記を読みふける。時々くすっと笑いながら。あれ? そんな可笑しいこと私書いてたっけ?


「あ、お姉ちゃん、返事帰ってきてるよ~」

「え? 本当!?」


 シルビィから交換日記を手渡され、私はユウスケの日記に目を落とす。


 ------

 【魔法届いてよかった!】


 こんにちは!

 お魚……うん、そうだね……。


 仲間、出来て良かったね!!

 魔法……ちょっと気恥ずかしかったけど……。

 届いたなら、うれしいかも?


 やっぱり人見知りの人居たんだね。

 気が合う仲間と旅をするのって、楽しいと思うよ?

 またしばらくはスライム倒すんだね。


 リノンが回復魔法持ってるなら、次の村までいけない?

 そこでプチデビルをちまちま倒す方が効率良いかもよ。

 あと、剣士なら、銅の剣を買ってあげたらどうだろう?


 じゃあ、またね!

 ------


「お姉ちゃん、優しい人と交換日記することになったんだね。私も嬉しい!」


 シルビィも一緒に読んでたらしく、自分の事のように喜んでくれる。本当にこの日記のの主……ユウスケは優しいと思う。私はいい人と交換日記が出来て幸せだ。


「返事は書かないの?」

「うん。お互い1日置きにしてるんだ。すぐに返してたら、相手にも迷惑でしょ?」


 いつの間にかできていたユウスケとの交換日記のルール。この方がお互いに負担が無いから。ユウスケもすぐに返事を返してくることは無い。そして何より、私の旅を応援してくれるのがとても嬉しい。


「じゃあ、寝ましょ?」

「うん! ねぇ……」

「なあに?」

「ちょっと我儘言っていい?」

「うん、良いよ」

「……一緒の布団に寝たいな。いい?」


 ……可愛い……。ちょっと気恥ずかしかったけど、私はシルビィの申し出を受け入れる。二人で一緒のベッドに寝る……なんかちょっと幸せかも。本当の妹が出来たみたいな喜びと共に、シルビィの頭を撫でながら私はいつの間にか寝てしまった。


 翌日。ユウスケのアドバイス通り、武器屋でシルビィの装備を一新した。この村で買える最高の装備を頼むと、武器屋のおじさんは喜んで出してくれた。


「え? お姉ちゃん。こんな装備させてもらっていいの?」

「ええ、良いのよ? ユウスケのアドバイスにもあったでしょ? これからの戦いを楽にするのに必要だから」

「わかった。お姉ちゃん、ありがとう!」


 シルビィに感謝されながら、村の外に一狩出かけることとした。そしてシルビィと村の周りでプチデビルを一掃していた。やっぱり魔王の復活と関係しているのだろうか? プチデビルは倒しても倒しても次から次へと襲ってくる。……いや正確には襲ってるのは私達だけど。シルビィに新調した装備の威力はすさまじかった。シルビィはプチデビルを一撃で倒せるようにまでなった。繰り返し戦っているうちにシルビィのレベルも上がってくる。日も落ちたころ、シルビィのレベルは8まで上がっていた。


「そろそろ帰りましょうか」

「うん! 少し疲れちゃった……」

「あんまり張り切りすぎて、疲れ切らないようにね!」

「分かった!」


 宿屋に入り、寝る身支度を済ませて、私は交換日記を手にする。そしてユウスケへの返事と今日の出来事を日記に記す。


 ------

 【私もお魚好き~☆】


 こんにちわ~☆

 うん、そうそう!

 お魚、大好きなの!!

 ユウスケは焼き魚と煮魚どっちが好き?


 魔法、しっかり届いたから、ユウスケは実は偉大な魔法使いだったりして?


 そうそう、ユウスケの日記見て、村まで行ってみたの。

 一緒の子は、シルビィって言うんだけど、

 ちょっと厳しかったみたい。


 それでね、村の装備一式シルビィに買ってあげたの。

 そしたら、と~っても喜んでくれたよ♪


 ユウスケの言う通りにしたら、シルビィレベル8まで上がったの。

 びっくりしちゃった!

 私はまだレベル16だから、追いつかれないか心配……。


 じゃあ、またね~☆

 ------


「返事書いたの?」

「うん。そうよ。これから魔法で返事を届けるの」


 私は交換日記をそっと閉じ、ほのかな光りを見送った。また何時ものようにユウスケに届いたはず。私をささえてくれるもう一人の大切な人の元へ。


「お姉ちゃん、今日も……」

「うん、良いわよ」


 私のベッドにシルビィが入ってくる。独りだった時には味わえなかった人の温もり。シルビィは先に寝息を立ててしまった。私の大切な妹分。今後の旅も楽しくなりそう。そう思いながら私も眠りに落ちた。



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