9話 ギルドへ行こう!
今日も血みどろになりながら宿に入る。私は私で、プチデビルと戦闘しているだけなのでこれと言って話題はない。はたしてこのままでいいのだろうか……。そろそろ村から受けた依頼……クエストをやらないといけないだろうか。そんなことをぼんやり考えながら夕日は落ちたので、宿に戻る。
そして、一日のお楽しみ。交換日記を広げてみる。ユウスケからの返事が書かれていた。私は追加されたそのページを読みふける。
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【僕も宿に泊まってみようかな……。】
こんにちは!
宿……そうだね、泊まってみようかな……。
僕の場合、バイト3日分ってところかな……。
夏休みのバイト代もあるし、そういうのも楽しそうだね!
なんか、モンスター倒すだけでも、色々と大変なんですね……。
着替えに返り血つかないように気を付けるとか……。
そんなの想像したことがありませんでした。
回復魔法、おめでとう!!
次はレベルいくつで魔法を覚えるの?
なんだか、リノンの日記を見てると、どんどん成長してるな……って、思います。
僕も成長しなきゃな……。
じゃあ、また!
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「そうなんだ……」
ユウスケの世界では宿は高価みたい。この宿も安い方だから、仕方ないかも知れないけど……。私……成長してるのかな? だと嬉しいな……。レベルも上がってることだし、そうかも知れない。
明日の返事を考えつつ、私は眠りについた。
「……」
こう毎日、プチデビルを惨殺してると飽きが出てきた。大体倒すコツは掴んで来たけど、返り血を避ける方法が思いつかない。殺風景な殺戮を繰り返しつつ、日も降りてきたので宿屋に戻り部屋に戻る。
交換日記を開いて、今の心情を書きなぐる。
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【プチデビル飽きた~(´;ω;`)】
こんにちわ~☆
うん! ユウスケも宿に泊まってみて~☆
快適だよ~。
そいえば、ギルドの仕事でファミレスって言ってたけど、どんな仕事を受注したの?
お客さんに顔を覚えられるほど、クエスト受注したの!?
なんかすごいなぁ…。
そろそろ、プチデビル飽きてきたけど…この村出るためには、クエストをやらなきゃダメみたい……。
洞窟に入らなきゃいけないみたいだから、ギルドに行って仲間作ろうかな……。
回復魔法のこと、ありがとう!
次はレベル18だって~。
今から楽しみ~☆
ユウスケもすごいと思うよ♪
じゃあ、またね~☆
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いい加減忘れそうだった、村の依頼。そろそろ本腰で考えないと……。
「あの……リノン様?」
「はい?」
プチデビルの殲滅を終わらせて宿屋に戻ると、宿屋の人が話しかけてくる。
「村長から、そろそろ宝の件をと……」
「あ……はい……」
催促されてしまった……。レベル上げにハマったとは言え、そろそろここでレベルを上げるのも限界がありそう。昨日日記に書いた通り、洞窟散策は一人ではしんどい。仕方ないかな……でも……。そんな事を考えながら部屋に戻る。そして交換日記を開くと、そこにはユウスケからの返事が添えられていた。
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【仲間、頑張ってみて!】
こんにちは!
宿、そうしてみるね。
どこに泊まろうかな……。
今度の休みに、計画してみるよ。
ん……ファミレスは……確かにクエストかもね。
お客さんの注文に、僕たちが受注して出すの。
常連さんもいるから、顔覚えられて声かけられたりするよ?
そりゃ……プチデビルだけ倒してたら、飽きちゃうよ……。
村のクエストは、仲間を連れて行ったらどう?
1人よりも、2人だよ!!
人見知りって言ってたけど、勇気を出して!
また、次の魔法覚えたら教えてね!
じゃあ、また!
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「うーん……」
ユウスケからも、仲間を作るようにアドバイスされてしまった……。仕方ないかな……催促もあったし。もう一日だけここに居てから、ギルドに行こう。そう心に決めて、ベッドに身をゆだねた。
「おや? 今日は洗濯物は出されないのですか?」
「はい。明日、街のギルドに行こうと思いまして……。受けたクエストも一人だと苦しそうでしたので……」
「おぉ! ありがとうございます! きっと村長殿も、お喜びになるはずです!」
宿屋の人に喜ばれてしまった。……洞窟探検……ちょっとプレッシャー……。部屋に戻って交換日記を広げる。そして私はペンを執る。
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【一旦村を出ます!】
こんにちわ~☆
休日って、よくわからないけど、宿楽しんでね!
そっか……ユウスケはクエストを一杯こなしてるんだね。
なんか尊敬しちゃう♪
私はね、ユウスケの言う通り仲間を増やしに行こうと思うの。
だから、一旦この村をでてギルドがある街に戻ろうと思う。
私、勇者だけど人見知り治らなくて……。
……なんで私が勇者なんだろう……。
ユウスケみたいな人が勇者になればいいのに……って、思っちゃうの。
頑張って、話しかけてみるね!
魔法、覚えたら連絡するね~!
まったね~☆
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明日……とりあえず街に戻ろう。そう決意して交換日記を閉じる。ユウスケに届くのを見送ってから私はベッドに入る。