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こたつと平和な日々


「……くそっ……身体が……言うことを聞かない」


 苦悶に満ちた表情で、正宗くんが今日も大げさなことを言う。

 まるで敵の奇襲を受け、苦しんでいるような顔だが、もちろん敵などいない。

 何せここは、平和すぎる我が家の居間である。


「こたつから出られないくらいで大げさだよ……」

「大げさではなく、身体と心の自由がきかない」

「こたつってそういうものだよ」


 一度入ると出られなくなるよねと言いながら、私もまたこたつの中に入る。

 そのとたん、正宗くんが私の腕を掴んで引き寄せる。そのまま、こたつと正宗くんにサンドされる形になり、私はちょっとドキッとした。


 正宗くんはもう37歳で、おじさんなのに、私を抱きかかえる身体はびっくりするくらい硬くて逞しい。

 着痩せするタイプなのでゴリラのようには見えないが、服を脱げば彫像かとツッコみたくなる立派な身体なのである。

 夏と違って薄着でないので何とか理性を保てるが、この身体は色々な意味で危ない。

 今も厚手のセーターによって強調された胸襟で背中を押されると、落ち着かない気持ちになってしまう。危ない。


「こうされるのは、嫌か?」


 私の動きがぎこちなくなったのに気づいたのか、正宗くんが耳元で尋ねる。


「嫌じゃないから、困ってる」

「俺も困っている。こたつと和葉のコンボは、理性が飛びそうになる」

「……そういえば、最初に押し倒されたのもこたつに入ってたときだったよね」


 おぼえてる? と振り向きざまに尋ねると、正宗くんは渋い顔をする。


「覚えているが、黒歴史だ」

「もっと凄い黒歴史いっぱいあるじゃん」

「でもあの日の俺は、本当に情けなかった……」

「安心して、正宗くん大体いつも情けないから」


 でもそこが可愛いいから、私は絆されてしまうのだ。


 こたつに入っている正宗くんは特に可愛い。それになぜか、こうしてこたつに入っているとき、彼は良く爆弾発言をぶちかましてくるから、無碍に出来ない。


「そういえば元暗殺者だって事も、超能力者だって事も、人間じゃなかったって告白も、全部こたつでしたよね」

「いわれてみるとそうだ」

「あれから、こたつの暖かさが頑なな心を溶かす……的な感じかな」


 だからついうっかり、大事なことを私に教えてしまったのだろうかと考えていると、突然正宗くんが私の首筋に口づけてくる。


「それはたぶん、こたつのせいじゃない」

「あ、じゃあお鍋かな。良くここで食べたよね」


 懐かしいよねと言うと、小さな笑い声がこぼれる。

 多分昔のことを思い出して、正宗くんも楽しい気分になっているんだろう。


 正直、私たちの人生はなかなかにハードモードだったけれど、こたつで温々しているときの記憶は幸せなものが多い。

 告白のせいで時々びっくりもしたけれど、それもまた、今思えば素敵な記憶だった。


次からは、しばらく過去編です。

こたつにまつわる想い出を切り取った形なのでダイジェスト感半端ないですが、引き続きよろしくお願いします!

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