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こたつ死す

前回の投稿からもの凄く間が開いてしまいましたが、こたつ編エピローグです。

 

「俺は……守れなかった……」


 絶望に打ちひしがれ、正宗くんががっくりと膝から崩れ落ちる。

 世界を救えなかったヒーローみたいな声を出しているが、彼が救えなかったのはその手の規模が大きな物ではない。


「いやいや、こたつが壊れたのは正宗くんのせいじゃないから」

「だが、こたつを一番使っていたのは俺だ……。だからもっとはやく、異変に気づいてやればこいつは……」

「いやいや異変とかなかったし、気づいていてもどうしようもなかったと思うよ?」


 だから落ち込まないでと慰めながら、私はいつまで経っても温かくならないこたつを観察する。


『こたつが……死んだ……』と突然正宗くんが言い出したのは夕飯の買い出しに行こうかと言うときだった。

 今日はいつもよりこたつに入っても暖かくないなぁと思っていたが、どうやらついに天に召されてしまったらしい。


「私が子供の頃から使ってた奴だし、そろそろかなぁとは思ってたんだよね」

「もう……寿命なのか……?」

「たぶん」


 こたつの耐久年数はよくわからないが少なくとも30年近く使っているし、過酷な目にも散々あってきた。それを思えば、よくここまでもったものだ。


「まあしばらくは、ストーブで我慢しよう」

「……」

「あ、暖を取る為に今夜は鍋にする?」

「……」

「正宗くん、聞いてる?」

「……」


 どうやら、こたつを失った正宗くんの心の傷は深いらしい。

 確かに正宗くんは、このこたつに愛着があったからなと考えながら、私は項垂れる彼の横に膝をついた。


「大丈夫だよ、修理すればまたきっと使えるから」

「まだ、生き返らせることができるのか……?」

「出来ると思うよ。古いタイプだから少し心配だけど、こういうの直すのが得意な知り合い、正宗くんいっぱいいるじゃない」


 数え切れないほど世界を救っていたお陰で、正宗くんの人脈はもの凄く広い。

 本人は他人に興味がないし交友関係を広げるつもりはないようだが、正宗くんの本性――もの凄く強いくせに何故か間が抜けている――を知った人は、敵味方問わず彼に好意を寄せがちだ。

 お陰で彼には世界中に沢山の知り合いがいて、その中には元悪の天才科学者や地球防衛軍のメカニックといった機械に強い人も沢山いるので、誰か一人くらい直せる人がいるだろう。


「壊れたのは正宗くんのせいじゃないけど、直せるのは正宗くんのお陰だね」

「世界を救っておいて良かったと、未だかつてないほど思った……」


 そのきっかけがこたつというのが、正宗くんらしい。


「直るまでは少し寒いけど、きっとまた、このこたつに入れるよ」

「……じゃあ寒い間は、俺が和葉を暖める」


 言いながら私をガシッと抱き締めた正宗くんは、もうすっかり元気になったようだ。それにほっとしながら、せっかくなので今日は正宗くんの腕に甘える。


 その五分後、こたつの代役を張り切りすぎた正宗くんがパイロキネシスを暴走させて家を燃やしかけたりもするが、この冬も我が家は概ね平和である。


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