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3色のビー玉  作者: 春夏秋冬
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星の約束ー【月 花 約束】

幼馴染の花鳥は、可愛くて、優しくて、絵が上手で、運動神経が良くて、物知りで、お洒落で、私の何よりの憧れだった。

高嶺の花なんてものじゃない。私だけの花。

サン・テグジュペリの星の王子様の守っていた薔薇のように

惜しむことなく褒め称え尽くす私にだけは、時々傲慢になってくれる愛おしい花。

友達が少なくて、話がうまくなくて、ダサくてみっともない私の友達にしておくにはもったいないくらいの花鳥は、私が褒めるたびに、満更でもない顔をしていたように思う。


私に花鳥は必要だったし、花鳥は私に必要だった。

その後に、花鳥の想い人の朱鷺が加わって3人になっても、私たちのちょっと歪で壊れた執着関係は変わらなかった。


むしろ自分を上に見せるために私を欲する花鳥

甘えさせてもらうために花鳥を欲する私

花鳥の恋情を上手く躱し友であり続ける朱鷺


むしろ更に歪に捻れた関係は、今にも壊れそうな緊張を持っていながらも、しっかり機能していた。




それにヒビを入れたのは、間違いなく私だった。

まだ寒い春の日の昼。

私たち3人は受験した。

朱鷺は私立の難関男子校に受かり、私はそれなりの私立に受かり、

そして花鳥は全て落とした。


今まで全てにおいて私より優位に立ってきた花鳥との関係の転換。

花鳥は不安定になり、卑下する言葉を多く発するようになった。

私の世界の中心は花鳥で、私の世界には花鳥と朱鷺しかいなかった。

自然、もとより歪な3人は更にひどく壊れかけた。





私には耐えれなかった。

花鳥を失うことが、花鳥を超えてしまった自分が。

唇を噛む花鳥残しに抱きついて、私は懇願した。


「ねえ、花鳥。」


ねえ、お願い


「なに?柚鶴。」


お願いだよ、花鳥。


「約束する。私は絶対に、君を裏切らないよ。」


だから、ずっと


「ありがとう、ゆづ!」


私のそばにいて





嬉しそうに笑う花鳥は、何よりも可愛くて、何よりも美しくて。花鳥は、私が、道に迷わないように導いてくれる星のような存在だった。

私は絶対に、花鳥をもう2度と裏切らないでいようと思った。

花鳥に何も勝てない、愚かで幼い子供であり続けようと決心した。

星への約束を、星の約束を守ろうと思った。

花鳥が、私のそばから離れていかないように

人に好かれない可哀想なゆづのままで

いようと思った。






なのに。


「柚鶴。」


「なに?朱鷺。」


君は猫みたいに気まぐれに


「俺、花鳥よりもおまえの方が好きだな。」


私の心を乱す。


「そういう冗談は好きくないな。」


だって花鳥は朱鷺のことが好きだから。朱鷺だって幼馴染の花鳥のことが好きなのに。変な朱鷺。

そう思っているのに、なぜか、朱鷺の言葉に喜ぶ自分がいた。


「なあ、柚鶴。月が綺麗ですね。」


「そういう冗談は好きくないな。」


「冗談だと思う?」


「他になにがあり得る?」


「死んでもいいわって言ってくれないの?」


だって、花鳥を裏切ることは許されない。朱鷺が私のことを好きであるはずがないし、私が朱鷺を好きであるはずもない。ありえては、いけない。


「柚鶴。俺は、」


「ねえ、朱鷺。それ以上言ったら本当に怒るからね。」


私は絶対に、気づかない。

私が朱鷺を好きになるのは、花鳥との約束に反するから。

星を失ってしまえば、私は道に迷ってしまうから。


「お前…いや、なんでもない。」


「ん。そっか。行こう、朱鷺。花鳥が待ってる!」







朱鷺、君のあの言葉は、結局のところ本心だったの?

本当に、君は私を好いてくれていたの?

もしも、私が死んでもいいと言ったら、あなたは私の星になってくれましたか?

猫みたいに気まぐれな君は、あれから、私にああいう冗談を時々言った。


ねえ、朱鷺。

最近ね、友達に言われたことが、頭から離れないんだ

その友達にね、

後輩にとても好かれてる

でも、花鳥との約束があるから

私が人に好かれない限り、きっと花鳥は一緒にいてくれる

約束を守っている限り、花鳥は私を見捨てない

だから、私は後輩の好意には気づかないって

そう言ったんだ

後輩の好意が怖いって

そう相談したんだ

そしたら、その子はこういったの。


星の約束、星の約束ってさ。

柚鶴、あんた逃げてるだけでしょう?


私は、朱鷺から逃げた。

そしてまた、後輩から逃げようとしてるんだと思う

朱鷺、あなたはまだ、私を好いていてくれているだろうか

ねえ、朱鷺。

猫みたいに気まぐれで

星みたいにぼくの心を揺さぶって

約束なんてしてくれない

あなたは

いつか、私の心の

大部分を占めていたんだ


ねえ、朱鷺

君に、月が綺麗ですねと言ったら

君はなんて答えてくれる?









そこまで書いて、私はペンを置いた。取り留めない3人の記録は、書いてみてもスッキリすることはなく、上手く筆の乗らない手に苛立ちだけが募る。

見上げれば、そこには遠く輝く満月。

朱鷺が私に月の話をしてから3年。

気づいた時には遅かった。

朱鷺は月の話を覚えていなかったし、私はあまりにも長く約束を心の拠り所にしてきたせいで人の好意というものを更に恐れた。

私は花鳥が好きだ。間違いなく大切で、大好きだ。

私は朱鷺が好きだ。間違いなく大切で、大好きだ。

でもその好きに、違いがあるのかどうかすらもわからないのだ。


花鳥に一方的に誓った星の約束。

朱鷺に一方的に話された月の話。


私の愛おしい2羽の鳥。


もしかしたら朱鷺に恋をしていたのかもしれないと気づいても


同じくらいに愛おしくて、同じぐらい恋しくて


そうなるとやっぱり、私が優先するのは、優先したいのは、


私に寄り添ってくれた花の方。





恋や愛を知るのに遅い早いはないだろうけれど

心を作り感情を知るには

私はあまりにも遅すぎた

逃げ続けてきたこころは、

今もまだ、あの幼いゆづのまま。

恋を怖がり、友情だけを求め、

ぬるま湯のままを望む、幼い少女のまま

気づかないふり知らないふり。



そうして今日も、どこか歪で壊れた関係を


美しい月も見ずに、3人手をつないで寝転がって


優しい世界を描くのです。

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