第二話
少し時間が過ぎ、私たちは外で老人の墓を作る。穴を掘り、中に埋めて石を乗せるだけの墓だ。
ここには神官も修道女もいないために簡単なお祈りを済ませるだけになるがやらないよりはいいだろう。
フィアがまだ墓からはなれないので先に家の中に戻っておく。長い事放置していなければまぁ大丈夫でしょう。
さて、他にする事もあるのであまり時間もかけられず申し訳ないが、中で放置している死んだ男二人と気絶している男を起こす。
気絶している男の方は縄で縛り上げて起こす。
「う、ぐ……ここは……」
「やぁおはよう」
「だ、誰だ! って何だこれは!?」
私の姿に気がついたと思えば、自分の体が一切動かない事に疑問に思って体を見てみれば、簀巻きになっている事に気が付いたようだ。
「なんじゃこりゃぁ!?」
「いやそんな反応されても。とりあえず、あんた達ってただの盗賊って考えでいいの?」
「それ以外の何に見えるんだよ」
「んー、この子の追って、とか?」
「はぁ? なんじゃそりゃ」
ただの盗賊にあの老人が倒せるだろうか……。
私が男にこの質問をしたのはいくつか理由がある。
まず森の中は決して安全な場所ではない。魔に侵された動物が見境無く襲いかかってくる事が多々あるという事。
そして、老人の部屋には手入れされた剣。鎧。そして少し古びていたがランクBの冒険者カードがあった。
この世界には冒険者という何でも屋のような職業があり、一般的なランクはD、Cぐらい。Dは小さな魔物と一対一で戦えるぐらいの実力で、ランクBともなれば大型の魔物が出たり、そこらの盗賊に襲われても生きて行けるだけの実力がある。
そんな人物がただの、それもたった三人に殺されるとは思えない。
「じゃああなた達三人だけ? 他に仲間は?」
「お、俺たちだけだ」
他に何人かいると……まぁフィアを助ける義理は無いけれど、放っておくって言うのも悪い気がするのでついでに片付けておいた方がいいだろうか。
「きゃぁ!」
男に何回か質問していると、不意に外から悲鳴が聞こえた。
「今のは……」
外を確認するといつの間にかフィアの姿が見えない。その代わりに人が一人は入りそうな袋を抱えた男とそれに並走するように走る数人の姿。そしてこちらはダガーや剣を構えて近寄ってくる四人の姿と、隠れて弓を構えている二人の姿を見る。
「あー、なんか大変な事になってきてるような」
「ははっ、仲間が来たか。もうお前もおしまいさ! 安心しろよ殺しはしないと思うぜ? お前はきっといい商品になりそうだしな!」
「それはちょっと嫌だなぁ。でも冥土の土産にどうしてあの子を狙ってるのか聞いてもいい?」
「はんっ。そんなのは当然だろ? あいつは言い値が付いてるって話だ。ようやく見つけられたんだ。狙わない理由なんて無いだろ?」
良い所のお嬢様なのだろうか。服装は質素なワンピースだったが、整えられた金色の髪、シミ1つなさそうな柔肌。町中でもなかなか居ないレベルの美少女である事は否定しない。
ならばどうするか。関われば確実に面倒な事になりそうだけれど、だからといって目の前で連れてかれていくのを黙って見ているのもな……。
「仕方ない。働きますか」
一回だけ。彼女を助けるのは今回一回だけとしましょうか。