第一話
当てもない道のりをしばらく歩いて行くと、木々が途切れ、広い空間に出た。
そこには小屋のような建物が一つだけ立っておりその傍に畑がある。
「畑……あの小屋に誰かいるのかな」
木々に囲まれたこの小屋の周りに村でもあるのだろうかと考えるが、少しだけ『よく』見える目であたりを見回しても何もないところを見ると、やっぱりあの小屋に住んでいると考えるのが妥当だろうか。
とりあえず小屋に誰かいるだろうかと歩いて向かいながらよく見てみる。
「一……二、三、五人? ん、なんか様子がおかしいような」
みた感じ、座っている二人に二人が何かを突き付けていて、もう一人が別行動をとっている。
もしかして二人がピンチなのだろうか。ちょっと跳ぼうかな。
そう思った私はぴょんと少し跳ねる。
するとどうだろうか。いつの間にか私はその小屋の中におり、目の前には四人が集まっている部屋の中にトンっと足を付ける。
中にいたのは10代前半らしき金髪の少女と白髪の老人、そして短剣を所持している男が二人。
しかし老人の方はその喉と横腹から血が流れ出ており、ピクリとも動いていない。少女は老人に対して泣きながら必死に回復魔法らしき呪文を唱えているが起きる気配がない。
すでに事切れているのだろう。状況からかんがみるにダガーを持った男たちが殺したといったところか。
さて、老人は助けられなかったが、せめて少女だけでも助けられるようにサクッとやってしまおう。
無言で手を男たちに向けると、氷の槍が飛んで男を一人貫く。
「ガ――ッ!?」
「な、なんだ!?」
貫かれていない男の方へは跳躍して近づき、死角から顔面へと蹴りをを放って壁へと飛ばす。
蹴り飛ばされた男はそのまま意識を失い、手に持った短剣もその場へと落とす。
少女は一体何が起きたかわからないといった風にマジマジと私の顔を見てくるけど後一人へと注意を向ける。
一人がこの部屋に入ってこようとする瞬間に最初に男を貫いたように、同じように貫く。
「これで全部だね」
すべてを倒し終えるた私は少女の元へと駆け寄る。
少女は瞳から大量の涙を流しながら私を見上げている。
「あなたは……?」
「たまたま通りかかった一般人です」
「こん……な、ところ、普通通りかかりませんよね……! 場所……わかって、いるんですか!? 森の中ですよ! ここ!」
少女は私と倒れている老人の間へと入って掌をこちらへと向けている。
見た所彼女はこの世界で言う魔法使い。大体の魔法使いは何かしらの触媒を介して魔法を唱えることが多々あるが、彼女の場合はその指につけている指輪といったところだろうか。翡翠色の宝石が嵌った指輪で、微弱ではあるが魔力がたまっている。
彼女はおそらく、まだ命が助かったとは思ってはいないのだろう。
「えっとね? 私は気ままに旅してるから、その先でたまたま襲われてる家があったからね? 人として、それは助けるでしょう?」
「嘘……です! まさか……!?」
「はいはい。何を想像しているかはわからないけれど、私は貴女が考えているような人物ではありません。それよりも……」
そう言って私は彼女の脇をするりと抜けると老人を診る。
息はしていない。首と横腹をダガーで貫かれたであろう外傷がある。
「あ、貴女いきなり何をッ」
「……そう。それが自然でしょうね」
私は開いている老人の瞳をゆっくりと閉じさせる。
「貴女、名前は?」
「え……わ、私は……フィア……。フィアです」
「フィアね。私はエレナって言うの。よろしくねフィアちゃん」