マリア捜索作戦
宙良と美奈代がN大正門前で待っていると、やがてグレーのスカイラインGTが二人の目の前に止まった。
「さぁ、君達乗りたまえ」運転席から上杉が声を掛けた。二人が乗り込むと、スカイラインは羽田へ向けて出発した。
「でも、羽田近くのホテルって情報だけで見つかるかしら?」美奈代が不安そうに言った。
「確か、マリアさんはアメリカにいる時から一流ホテルには泊まらず、安いモーテルなんかを利用するこだわりがあるって聞いた事がある」助手席の宙良が後部席の美奈代に向けて言った。
「君達、マリアさんの電話番号は知ってるかい?」上杉が前方に集中しながら言った。
「ええ、勿論です。でも電話には出ないと思いますよ」上杉にしては的外れな事を言うなぁと思いながら宙良が答えた。
すると、スカイラインは近くのコンビニエンスストアの駐車場に入った。
「少し君のスマートフォンを貸してくれるかい?」と言って、上杉は宙良からスマートフォンを受け取った。そして何やら人差し指で操作し出した。
「よし‼いけたぞ」と呟くとスマートフォンを宙良に返した。
「画面はそのままで…後はスマートフォンが僕達をマリアさんの元に導いてくれるはずだよ」
「あっ‼そうか、その手があったんだ」
上杉はマリアの電話番号からGPS機能を利用して、マリアの位置情報を検索していた。さらにナビゲーションシステムとも連動させていた。
「この地図で見る限り、場所は大森辺りですね」宙良がスマートフォンの画面を見ながら言った。
「大倉君、その位置情報をしっかり見ていてよ。マリアさんは今日にも日本を発つかも知れない。位置情報が移動して羽田に向かい出したら、アウトになるかも知れないからね」
「分かりました、しっかり見ておきます」
こうしてスカイラインは一路、大森へと向かった。
幸い、宙良達が大森に着く迄位置情報が移動する事はなかった。そしてスカイラインは、如何にもチープそうなビジネスホテルの前に止まった。
「僕は車を近くの駐車場に停めて来るから、君達は先にフロントに行って、マリアさんが滞在しているか聞いておいてよ」と言って上杉は二人を降ろした。
「すみません、こちらにマーク・スタンレーさんかマリア・スタンレーさんの名前で宿泊はありませんか?」宙良がフロントに声を掛けた。
「少々お待ち下さい」と言ってフロント係は奥へと入って行った。暫くして、奥から出て来たフロント係は「申し訳ございません、その様なお名前でのチェックインはございません」と恐縮して言った。
「そんなはずありません‼もっとちゃんと調べて下さい」二人が息を巻いて言った。
「そう申されましても…」とフロント係が困っていると「では、神野聖美では?」と後ろから声がした。二人が振り返ると、上杉が立っていた。
「少々のお待ちを」そう言ってフロント係は、また奥へと入って行った。
暫くすると、フロント係は少し興奮した様子で「ございました、“カンノキヨミ”様…304号室です」と言いながら出て来た。
宙良と美奈代は上杉の洞察力に舌を巻いた。
3人は304号室の前に立ち、宙良がノックした。しかし、反応はなかった。
すると、上杉が少し声を荒げ「マリア・スタンレーさん、ヘクターレコードの者です!このまま帰国されるとなると、契約不履行ですよ」と言った。
すると、中からチェーンの外れる音が聞こえ、ドアが開いた。
出て来たのはマーク・スタンレーで「我々の契約に日本でのレコーディングの事項は入っていないはずだぞ‼」と怒鳴り付けて来た。
咄嗟に上杉は左足をドアと珊の間に入れ「スタンレーさん、もう逃げられませんよ」とニヤリと笑いながら言った。
マークは宙良と美奈代を見ると、観念した様に「please」と言って3人を中へ誘った。
中に入るとマリアが振り返り「ソラ…ミナヨ…何故ここに?」と言って目を見開いた。




