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三つ子の魂100までは嘘

宙良と美奈代はN大の正門前に午前9時に待ち合わせをした。ヘクターレコード本社で午後1時から行われるレコーディング作業に間に合わせる為のギリギリの時間設定だった。

それまでに上杉に解決策を聞いて、すぐにヘクターレコードへ向かう算段だった。

「おはよう、宙良、遅くなってごめん」「あぁ、とにかく生物学教室へ急ごう」

ニアミスを避けるため、朝一で宙良が上杉にアポイントを取っていた。

生物学教室のドアをノックすると、珍しくすぐに上杉が出迎えた。「やぁ、おはよう、待っていたよ」そう言って、中へと誘ってくれた。

「じゃあ、話を聞こうか」話を簡潔にするために、宙良一人が、二人の母の事をまとめて話した。

「やはり、君達のお母さん同士は直接の繋がりはなかったけど、一人の人物…つまり”神野聖美“と言う女性によって繋がっていたんだね」「そうなります」

「ここで少し話は逸れるんだけど、重要な話だから聞いて欲しいんだ」宙良達は時間を出来るだけ短くしたかったが、上杉を信頼し、任せた以上、聞く事にした。

「君達は、僕の後天性DNA研究の真の成果が、どう言うものか分かるかい?」「真の成果…ですか?」

「うん、僕は何も”遺伝子の違う双子“の解明をするために、この研究を始めた訳じゃない」「そりゃそうですよね、僕達の様な特殊な産まれ方をする人間なんか、そうそういないですもんね」

「DNAと言うのは生物の設計図で、その個体の様々な情報が書き込まれているんだ」「へぇ、そうなんですか?」

「でもね、後天性DNAと言うのは少し違っていてね、胎児が母体の中で“どの様な影響を受け、どんな経験をしたか”が書き込まれていくんだ。だから、同じ兄弟でも、その時の母親の生活環境や精神状態によって左右される為、性格や行動も違ってくるんだ」「なるほど…」

「よく、“三つ子の魂100まで”って言うだろ。僕はあれは嘘だと思っているんだ」「どう言う事ですか?」

「あの言葉の意味は、産まれて三才迄に作られた人格は、100才まで受け継がれるって事なんだ。でも、僕の研究からすると、人格形成は胎児の時から、すでに始まっている事になる」「そうか‼正しくは“三つ子迄の魂100まで”と言う事ですね」

「その通り、では後天性DNAは、どの様なメカニズムで作られるか?なんだけど、君達、胎教って知ってるかい?」「あぁ…確か胎児にクラシック音楽を聴かせたり、本を朗読して聴かせたりってヤツですか?」

「うん、でもね胎児は母体にいる時、耳は聴こえていないんだ。なのに“何でそんな事するのか”だよね」「何でなんですか?」

「それこそが、僕の研究の意図する所なんだ」「早く教えて下さい」黙って聞いていた美奈代がれて言った。

「胎児はね、母体とはへそで繋がっていて、そこから栄養が供給される事が知られている。しかしね、供給されるのは栄養だけじゃなく、ホルモンも供給されるんだ」「ホルモンって、あのフェロモンとかのですか?」

「うん、フェロモンもホルモンの一種だけど、ホルモンの種類は沢山あって、精神が安定している時や幸せを感じた時に分泌される肯定的な物、逆に不安定や怒りで分泌される否定的な物もあるんだ」「何だか恐いですね」

「そう、つまり母親が多く肯定的なホルモンを分泌しても、否定的なホルモンを分泌しても、それらは全て胎児に影響を与えるんだ」二人は唾を飲み込んだ。

「この事から、少なくとも、1つ言える事があるんだ」「何ですか?それは…」

「神野聖美は君達を愛していた、そして君達を身籠っていた時に幸せを感じていたって事さ」「えっ…何でそんな事が言えるんですか?」

「君達を見れば分かるよ、君達は本当に良い子達だ。そんな君達が、胎児の時に悪いホルモンの影響を受けていたとは、到底思えない」

「僕(私)達が聖美さんに愛されていた…」二人は呆然としながら呟いた。

その時、宙良のスマートフォンが震えた。十川そごうからの着信だった。

「もしもし、お疲れさまです。大倉です」「大倉君、大変だ‼マリアさんが突然、帰国すると言い出した」「えっ‼何ですって?」「“後の事は全てソラに任せた、私はこのまま帰国します”と言ってきた」

「分かりました、で…マリアさんは今、何処に?」

「それが、分からないんだ。こちらもホテルさえ教えてもらっていない」「とにかく、さがしてみます、失礼します」

「宙良、どうしたの?」美奈代が心配そうに聞いた。

「大変だ‼マリアさんが帰国するって‼とにかく捜さなきゃ」「捜すったって何処を?」

「確かマリアさんは羽田近くにホテルを取ったって言っていた。とにかく羽田だ」

二人が教室を出ようとした時「待ちたまえ‼」と上杉が声を掛けた。

「僕も一緒に行くよ」とベージュのチェック柄スーツをつかみながら言った。

「はい、宜しくお願いします」二人は同時に返事をしていた。

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