ホープ誕生
放課後になり、早速、美奈代は吹奏楽部を見学することになった。宙良に誘われ、部が活動拠点として、使っている音楽室に入った。
皆一様に、自らの担当する楽器を練習している。
「君はどんな楽器が得意なの?」宙良が美奈代に聴いてみた。
「一応トランペットかな」「さっきのマイルスって…」「勿論マイルス・デイビス」二人はハモるように、同時に言うと、一瞬、目を丸くして、また同時に笑った。
「気に入った、君にはリードを任せるよ」「リードって私が?」「勿論」「私の演奏も聴いてないのに?」「聴かなくてもなんとなく判る、早速セッションしよう」
宙良はそう言うと、メンバーを適当に指名して、自分は、一番後ろのドラムセットの前に座った。
「さぁ始めよう」「大倉君って、ドラム担当だったの?」「いや、一応はペットだけど、部長として一通りはね。何より君をリードに決めたんだ。その腕前を一番後ろから見させて貰うよ」
「解ったわ、で何を「演るの」「そうだなぁ、BLUE in Green なんてどう?」「初期の作品ね」「うん、スローテンポの名曲さ」
大野康二郎のピアノから入り、それに合わせて.宙良のシンバルが静かにリズムを刻む。
そして美奈代のトランペットが“スーっ”と入ってくると、奏者全員、鳥肌のたつ思いがした。
そのままBメロ、サビへと入っていく。
演奏が終わり、一同満足なのか、感動なのか、解らない感情に支配されていた。
一呼吸置いて、一斉に拍手を送った。
「す…凄いよ真田さん」「最高じゃん」美奈代は頬を赤らめながら、ふと宙良を見た。
宙良は想いを馳せるように静かに瞳を閉じていた。暫くして目を見開き「皆、これで方向性は決まったろ?」と一同に問いただすと「勿論」「文句なし」と一同、同意した。
こうして美奈代は吹奏楽部ホープとして受け入れられたのだった。




