マリアからのオファー
「こちらが契約書になります。内容をご確認頂き、ご不明な点はお聞きください。もし宜しければ、こちらにサインを」第一応接室で、十川がマリアとの日本発売権の契約を進めていた。
「OK、これでいいだろう?」マネージャーのマークがマリアに同意を促した。するとマリアは、首を横に振りながら「ごめんなさいマーク、少し気が変わったわ」と言い出した。
「何を言っているんだ?マリア、ここへ来て契約を破棄するって言うのか?」「いいえ、そうじゃないわ‼私、次のレコーディングをこの日本でしようと思うの」
「何だって?気は確かか?君は日本へは、契約した後、さっきの彼らに少し会って、帰国するって言ってたじゃないか?」
「だから、本当にごめんなさい、私…彼らに会ったらインスピレーションを感じたって言うか…是非一度彼らとセッションしたいって思ったのよ‼」マリアの目がキラキラしている。
「OH‼何て事だ、一体彼らに何を感じたって言うんだ‼」「それは分からないわ、とにかくやってみないと…契約はとりあえず、そのままサインをしてくれて結構だけど、この後、彼らと会わせて…話はそれからよ‼」
「フーッ、仕方無いな、ソゴウに伝えてくれ、さっきの若者二人と、マリアは話をしたいそうだ。何処か場所を用意してくれ‼」
通訳が訳すのを聞いて、十川は少し安心した。二人のやり取りが、契約しない為の揉め事かと思ったからだ。
「分かった、確か第3会議室が空いていたと思うから、そこを使って頂こう」
こうして、無事契約を終了して宙良と美奈代は第3会議室に呼ばれた。マリアは話を三人だけで、することを希望し、SPもマークでさえ待機させた。
宙良は緊張したまま、第3会議室のドアをノックした。「失礼します」中へ入ると、マリアはこちらを向き、椅子から立ち上がった。「ソラ、ミナヨ、待っていたわ」その表情はまるで、長年生き別れていた子供に会った母親の様だった。「さぁこっちへ」二人に座るよう促した。二人が着席すると、マリアが喋りだした。
「さっきも言ったけど、あなた達の才能は見せてもらったわ。まだ未熟な部分もあるけど、可能性を感じたわ。そして直にあなた達に会って決めたの。私は日本で次の作品を作るわ。その製作に、あなた達にも是非参加してもらいたいの」「えっ、僕(私)達が?」「フフッ仲がよろしいのね、そう是非参加して」マリアはもう一度、念を押した。「でも美奈代は判りますが、僕に何をやれって言うんですか?」宙良が聞いた。「私はね、今までの作品もほぼ全てセルフプロデュースしてきたわ。細かい部分でマーク…あっ、私の夫ね、マークに相談する事もあったけど、基本的には私一人で決めて来たわ。今回はそのプロデュースをソラ…あなたにおまかせしたいの」「僕がマリアさんのプロデュース?」宙良は驚きの声を上げた。
「いきなり言われて戸惑うのは解るわ。だから一週間ね。一週間後までに、大体の方向性を決めて欲しいの。今までの私の作品も用意させるから、それを参考にね」「でも…」宙良の悪い癖が出た。それを見透かし美奈代が宙良を肘で突っついた。
「分かりました、一週間ですね?やれるだけやってみます」「私も宜しくお願いします」美奈代も続けた。
「OK、それじゃまた連絡するわ。二人とも期待しているわ」こうして若い二人に、思わぬチャンスが飛び込んで来た。




