ニアミス
「あった、これだわ」美奈代はスマートフォンを使ってウィキペディアでマリアの事を調べてみた
『マリア:本名 マリア・スタンレー ニューヨーク在住
20年前、単身渡米して音楽活動を始める
3年後“MARIA with Pure Today”と言うバンドを結成 2年後にはCDセールスで、ジャズ・クラシック部門で全米1位となる
“MARIA with Pure Today”の活動7年目に突如解散し、バンドメンバーでもあったマーク・スタンレーをマネージャーとして迎え、ソロ活動を始める
ソロ活動5年目にはビルボード トップ20入りを果たし、名実共にジャズ界のトップに立つ
2年前にマネージャー、マークと入籍』
「フーン、マネージャーが旦那さんなんだ」仁村が言った。
「マリアの元の国籍って何処なんだろう?」宙良が疑問を口にした。
「渡米前の事は何も分からないみたいよ」美奈代が答えた。
「あっ、こんな事してる場合じゃなかった」唐突に仁村が叫んだ。「何だよ?」宙良が鬱陶しそうに言った。
今日、3時から百合ちゃんとお前ら三人、次回作の事で、小山さんに呼び出されてるんだよ‼「何だって?頼むよマネージャー」そう言って三人は飛び出していった。
一方その頃、羽田空港では十川京一が、緊張の面持ちで搭乗口付近に立っていた。無論、アメリカからのVIPを迎える為である。
まもなく、搭乗口よりマリアが、夫でマネージャーでもあるマーク・スタンレーと共に姿を現した。二人の廻りには屈強な男が3~4人取り囲んでいる。SPである。
「welcome to Japan.Mrs. Maria.Nice to me to.」十川がマリアに近付いた。すると、間にSPが遮る様に立った。
「通訳、頼む」十川は用意していた通訳を呼んだ。
「ミスターソゴウ、我々はあくまで契約に来ただけだ。挨拶などはいいから、早く車に案内してくれ」マネージャーのマークが言った。
外に待たせてあったハイヤーに乗り込み、一行は渋谷にあるヘクターレコード本社へと向かった。「ミスターソゴウ、電話でも話したが、メディアは完全シャットアウトで頼む。もし約束が守られない時は契約は白紙にさせてもらう」マークは脅す様な口調で言って来た。
「分かった…メディアには一切公表していないし、君達が帰国するまでは発表もしない事を約束させてもらうよ」「OK、それでいい」
まもなく、ヘクター本社に着いた一行は、裏口より忍ぶように中へと入っていった。十川が先導して第一応接室へと向かった。
途中、小山義則との約束で来ていた宙良達と出くわした。
「あっ、十川さん、こんに…お早うございます」宙良が挨拶した。「よぉ、大倉君に真田さん、今日はこっちだったのか」
「オオクラ?サナダ?」今までずっと黙っていたマリアが反応した。「彼らはソラ・オオクラとミナヨ・サナダなの?」マリアはいきなり通訳へ問い掛けた。「えぇ、そうですがマリアさんご存じなんですか?」
SPやマークが止めようとするのを遮って、マリアは二人の元に歩み寄った。
「Nice to me to Mr Sora Miss Minayo.」通訳が訳そうとした時、今度は通訳に対して左手で遮った。
「大丈夫よ、私は日本語を話せるから」その場にいた全員が目を見開いた。
マリアは宙良と美奈代に歩み寄ると「ソラ、ミナヨ、あなた達の楽曲、少しだけ聴かせていただいたわ、パッションを感じる良い曲だったわ」「あ…ありがとうございます」二人は鼓動を速めながら同時に言った。
「後であなた達に話があるわ、呼びに行かせるから待ってて」そう言い残して応接室へ入っていった。
二人は茫然と見送りながら、宙良と美奈代が初めて出会った時と同じように懐かしさを感じていた。




