DNA鑑定
「広瀬君、例のもの持ってきてよ」
「はい、かしこまりました」と言って、奥から、先程二人を出迎えた、クセっ毛のひどい男が、薬品や脱脂綿、ピンセット等の器具が乗った、銀のトレーを持ってきた。
「それでは、まず君達の、耳の後ろを消毒させてもらうよ、広瀬君、君は真田君を頼むよ」
「えっ‼」広瀬が返事をする前に、美奈代が露骨に嫌な顔をして言った。
「嫌かい?じゃ僕でも良いかい?」「ハイ‼」今度は嬉しそうに言った。
「じゃ、広瀬君は大倉君を頼むよ」「はい…」と広瀬は少し膨れて言った。
「きゃっ、くすぐったい」上杉に首筋を触られ、美奈代が言った。それを見て、宙良は“ドキッ”とした。驚いたと言うより、胸が高鳴ったのだ。
この時、宙良は、改めて美奈代が、女なのだと言うことを認識した。
「それでは、耳の後ろから、フェロモン物質を採取するんだけど、その前に、変な質問をして良いかな?」
「何ですか?」
「君達は二人とも恋愛対象は異性だよね?」
「勿論です、それが何か、関係あるんですか?」二人は語気を強めて言った。
「実はフェロモンと言うのは、常に分泌されている訳ではないんだ。異性を意識したときに、多く分泌されるんだけど、同性愛者じゃ意味ないからね」
「なるほど…」上杉の言う事は、なんとなく解った。
「ではまず、君達、手を繋いでくれないかな?」
「手を…何でですか?」
「だから言っただろ、異性を意識する為だよ。残念ながら女性は真田君しかいないしね」
宙良と美奈代の、鼓動が早まった。
二人は長く、一緒にいるが、スキンシップは、これが初めてだった。
「じゃあ…」遠慮ぎみに言いながら、二人は手を繋いだ。
「ダメダメ、もっと両手を重ねるように、強く握って」上杉が二人を煽るように言う。
やがて、二人の首筋が、じんわり濡れてきた。
「よし」上杉は綿棒で、二人の耳の後ろを拭き取り、それをシャーレに入れて、ラップをかけた。
「これでいいよ」
「これだけですか?」
「後は、これを溶液に溶かしたり、遠心分離機にかけたりと、やる事は沢山あるんだ。結果が出るまで10日程は掛かる」
「10日もですか?」
「うん、そんなもん……あれ?」上杉は突然、何かを思い出した様に言った。
「何ですか?」
「いや、さっきの話なんだけどね、代理母の女性は、なぜ君達を同時に出産することを決めたんだろう?仮に代理母を一人しか、用意出来なかったとしても、時間は掛かるけど、別々に産めば良かったと思うんだよ」
「なるほど、リスクを考えてもそうですよね」
「その辺りにも代理母を探し出す手掛かりがあるかも知れないね」




