生物学者の動揺
白川医院を後にした3人は、ホテルへの帰り道、暫くだまっていた。
「あのお医者さんの言うことが、本当だとしたら、俺達アメリカで産まれたことになるのか」宙良が切り出した。
「そうね、しかも私達は、アルとジャノンの様に、DNAの違う双子ってことになるわ」美奈代が返す。
「しかも白川医師の話じゃ、俺達の産みの親は、美奈代にそっくりだって言うじゃないか。それって、美奈代のお母さんじゃないのか?」
「判らないわ、そんな話、聞いた事ないし…でも今までの話の流れじゃ、親に訊いたことないから、真実じゃないとは言いきれないわ」
「上杉先生はどう思いますか?」今まで黙っていた上杉に、宙良が訊いた。
「す…すまない、今はコメントを、する気にはなれないよ」ハンカチで額の汗を拭いながら言った。
「先生、大丈夫ですか?顔色悪いですよ」二人が同時に心配する。
「フフッ悪いね、僕は今まで、生物の実験を、ネズミ相手にしてきた。だから君達の事も、同じように、見ていたのかも知れないね、しかし、目の前に、それが現実として突きつけられたら、何とも嫌な気分になってしまった」
「まぁ学者だから、仕方ないかも知れません」
「それに僕は、君達をサンプルと称して、深入りし過ぎてしまった。今は凄く後悔しているよ」
「そんなことないわ、先生のアドバイスがあったから、私達ここまで真実に迫れたんです」美奈代が珍しく強い口調で言った。
「そうです!そりゃサンプル扱いされるのは、気分はよくないけど、でも俺達の、この訳の分からない生まれ方、先生に出逢わなきゃ絶対真実なんて、何一つ判らなかった」
「これからもお願いします」二人同時に、頭を下げた。
「君達のそのシンクロを見てると、アルとジャノンと重なってしまうんだ。すまないが、少し頭の中を整理させて貰えないだろうか」
「勿論です…あっ」二人はまたハモってしまった。
「ははっ気を遣わせてしまって済まないね、ほらホテルに着いた、とにかく今夜はゆっくり休もう」
そうして3人は、ホテルの中へ入っていった。
美奈代との別れ際、自分の部屋に入ろうとした宙良は「アメリカか…今度は無理だよな…」と呟いた。
「さすがに今度はね」美奈代も返した。




