類似した母子手帳
母子手帳を、そっとバッグに入れ、言われていた家事を、適当に済ませた頃、今日子が帰宅した。
さぞ、ねだられたバッグを、心待ちにしているだろうと思っていた今日子だが「そこに置いといて、私、少し出掛けてくる」と、いつも持ち歩いているルイヴィトンのバッグを持って、美奈代は出ていってしまった。
出先は、大倉宙良と待ち合わせた、みなとみらいにあるカフェだった。
宙良は生物学教室での一件があった、翌日の金曜日に、母子手帳を入手していた。
彼は美奈代とは違い、いとも簡単に母親に「母子手帳、見せてよ」と言って、手にいれていた。
美奈代の事情を聴き「お互いに揃ってから確認しよう」と言っていた。
「美奈代こっちだ」と手を挙げた宙良は、先にカフェに着いて、適当な席を取って待っていた。
「ごめんなさい宙良、私、自分の先に見ちゃったの…」悲しげな美奈代の顔を見て、
「何かあまりいい内容じゃなかったみたいだね」と気遣いつつ、言った。
「取り敢えず、俺の方はまだ、内容を見てないから、君のと見比べて見よう、形式もそれほど変わらないと思うし」
そう言って、自分の母子手帳を取り出した。
美奈代も、自分の母子手帳を取り出すと、表紙も色も、全く同じものだった」
「まぁ母子手帳なんて、何種類もあるものじゃないだろうし、それよりは中身だ」
そう言って、二人同時に一枚目を開いた。
美奈代の母親の欄が、空欄なのを除けば、大した内容の違いは、なかった。
それよりも病院名の欄だった。
「白川産婦人科医院…県名がなく浜松市雄踏町か…静岡だな。これを見る限り、全く同じゴム印で押されたものだな」
「ねぇ、おかしくない?私達、誕生日が同じ7月7日で、しかも同じ小さな個人病院で生まれただなんて」
「上杉准教授の話だと、俺達は胎児時代に、同じような環境を過ごした可能性が、高いって事だろ?つまり、俺の母と君のお母さんが、実は知り合いで、妊婦の時に、出産まで共に過ごしたとか?」
「無理があるわ、そんな話、聞いた事もないし、それに、私の母親の欄が、空白ってのも気になるわ」
「ただの書き忘れかもしれないし」「父の名前は書いておいて?」
「まぁ、ここで、俺達二人で話し合っていても、仕方ないよ。俺達のシンクロの謎を解くカギは、浜松にありそうだ」
宙良の話を聴きながら、美奈代が何気なく、二冊の手帳をペラペラめくっていると、いきなり「何?これ」と驚きの声を上げた。
「どうした?」と言って宙良が手帳を覗き込むと、なんと受診記録の日付が、全て一致していた。
「なんて偶然だよ」「偶然とは思えないわ、母子手帳までシンクロなんてあり得ないでしょ?」「まぁ、確かに」
そう言いながら、スケジュール帳をペラペラめくりだした。
「よし、行こう浜松へ」「そんな浜松へ行って調べるにしたって、2~3日は掛かるわ、両親に何て、説明する気?」
「ジャズ同好会を利用するんだ」と言いながら、宙良はスケジュール帳の、9月のページの一部分を指差した。
「この日が何?」「この週は、シルバーウィークで5連休ある。この週に、ジャズ同好会の合宿を、浜松で行うんだ」




