同調(シンクロ)
オリジナルの楽曲も、10を越えるほどになり、皆、練習にも熱が入る。しかし美奈代だけは違った。
宙良が五線譜に上げる前に、一度聴いただけで、すぐにリプレイしてしまうのだ。
フルートの野中圭子が、何故、一度聞いただけで、再現できるのかを訊いてみた。
「何故って…ワンフレーズ聴いたら、自然と次のフレーズも判るって言うか…湧いてくるって感じ?」圭子は目を丸くして「変なの」と返すのが、精一杯だった。
順調に楽曲制作を続ける宙良だったが、何故かイライラしている。「宙良?近頃何か機嫌が悪いようだけど何かあった?」美奈代が心配そうに訊いた。
「うーん、何かって言うか…」「制作活動も順調そうだけど…」
「制作そのものでイラついてる訳じゃないんだ」「じゃあ何が原因なんだろう?」
美奈代が、自分事のように話すのを訊いて、宙良は少し楽になった。
翌日の昼、宙良と美奈代は、仁村清とバイオリンの中野百合を誘って学生食堂で昼食を採った。
「A定食をお願いします」宙良と美奈代が同時に言う。
四人掛けのテーブルがうまく空いていた。宙良の横に美奈代が座り、その向かいに仁村と百合が並んで座った。
百合と仲良く話ながらも、向かいの二人が気になった仁村は「お前らって本当似てるよな」と唐突に言った。
「何の事?(だよ)」と二人同時に言う
「プッ、いやゴメン、なんて言うんだろ。そう、双子みたいって言うの?」
横の百合に同意を求める様に仁村が言う。
「似てねぇし(ないわ)‼」「ハハッほらそれ、見かけとかそんなんじゃなくて、宙良がひじきに手を伸ばすと美奈代ちゃんも、美奈代ちゃんがコロッケを割れば宙良も、てな具合」
「私もそう思うわ、何も食事の時だけじゃなく、練習中も良くあるわ、そういうの」百合も続けていった。
「何?(だよ)それ」と同時に言った後、宙良の顔色が変わった。
「それだよ」三人が呆気にとられる。
「それって何の事だよ」仁村が訊いた。
「いや、俺、最近イライラしててさ、その原因が今、判ったんだ」「その原因って?」気にしていた美奈代が訊く。
「俺たち何なんだ?俺は美奈代の考えてる事や、したい事が解る。美奈代も多分そうだろう?」「うん、まぁ」
「俺たちってどんな関係なんだ?まさか本当に双子だとか?」「そんな…まさか」美奈代が言う。
「そんな気になるんだったら、DNA鑑定すりゃいいじゃん」仁村が能天気に言う。
「DNAって簡単には言うなよ(言わないで)何十万も掛かるんだろ(でしょ)」
「プップププッ、いやゴメン、ここまで見事にハモられると、どうしても笑っちゃうよ。まぁそれはさておき、ウチの生物学教室に上杉准教授っているだろ?」
「知らねぇよ、何で文系のお前が、理系の教室に詳しいんだよ」
「まぁまぁ、その上杉准教授って、DNA研究の第一人者で、面白いサンプルがあったら、タダで鑑定してくれるらしいぜ」
「へぇ、そうなんだ(なの)」
「ププッ…あ、ゴメンなかなか馴れないや。とにかく、その上杉准教授にでも相談してみりゃいいじゃん」「そうだな(ね)」
こうして二人は、生物学教室に向かった。




