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テレビ・バイク・新聞

「テレビ」「バイク」「新聞」


太陽がカッと死の光を注いでいるそのド真ん中で、鉄の馬が駆け抜ける。

「今日もゴキゲンな爆走日和だ。」と、その馬に跨る男は軽口を叩く。

メーターを振り切って、砂の荒野を突き抜ける。

「さあて、親愛なる読者の皆様、今日も新鮮なニュースをお届けするぜ。」男は二度目の軽口を叩く。

ボロボロのマントを身に纏い、砂避けのゴーグルを装着し、吹き荒ぶ乾いた風を浴び、愛機と共に砂埃を巻き上げて進む。



「砂嵐警報が発令されています。近隣の住民の方々は外出を控え、砂戸をしっかりと確認し風に備えてください。」

起き抜けにそんな注意報が流れていた。テレビってやつはどうしてそんな暗いニュースばっかり伝えたがるんだ。

気の滅入る話だ。だがそうも言ってられねぇ。俺の仕事は砂嵐だろうがなんだろうが、とにかくバイクを走らせて、お得意先にニュースを届けるロックなもんだった。


まあ、得意先っつっても数えるほどだけどな。


「おはようリリィ。お休みのところ悪いが、今日も仕事だ。」


俺は愛機に跨ると、惚れた女に言うみたいに優しく囁いた。



俺の家から数十キロってところだ。そのお得意先って奴が居るのは。

奴は新鮮なニュースを楽しみにしているから、仕入れたニュースは朝一番で届けなきゃならねぇ。

爆音と共にロックなニュースをお届けするのが俺のスタイル。

名前は「爆音テロ新聞」。どうだ、ロックなネーミングセンスだろ?ほとんどの連中は煙たい顔しやがるけどな、俺は誇りを持ってんだ。カッコイイだろ、自分を貫くってのはよ。


そんなことを毎日考えながらそいつの家に向かう。荒野の中途半端な位置にポツーンと一軒だけ家があるんだ。


そいつは俺の親友なんだぜ。それに、なんともロックなやつなんだけどな。無愛想なのが玉に瑕ってな奴だ。奴の家に俺が着いても、うるせえなって言いやがる。そりゃこんな寂しい場所で独りでいるんだ、俺の愛機の歌声がどんだけ美しくてもうるせえとしか思わねえよな。


とにもかくにも、そいつの家の目の前にリリィを止めて、俺はニュースを届けるんだ。


「今日もハッピーなニュースをお届けだぜ!」


これが俺の決め台詞。なかなかカッケェだろ。



そいつにニュースを届けたら、次はまた別の場所だ。


そこもうら寂しい場所でな。でもそこには俺の女がいるんだ。

こいつも俺が来るとうるせぇと言いやがる。でも、ずっと俺が来るのを待ってんだ。かわいいもんだ。それに、とってもロックなんだ。


んで、やっぱりそこにニュースをおいていく。


「今日もハッピーなニュースをお届けだぜ!」


この決め台詞も、何回言ったかわかんねえなぁ。



最後はいけすかねぇ金持ちの家だ。

俺は毎日そこにニュースを届ける。でも、ニュースを届けるだけじゃねえんだな。何かと仕事をさせられるんだ。掃除とか犬の散歩とか、子供のお守りとかな。疲れるけどその分金もくれるから、まあなんだかんだやっちまうんだけど。

毎度毎度言うんだよな。

「そろそろ目を覚ませ。いつまで過去に縛られているんだ。」ってな。

いけすかねぇ野郎だぜ。目なんか覚めてんだよ。それに、過去に縛られてるわけじゃねえんだ。ただ、しがみつける過去がそれしかねえだけさ。


とにもかくにも、この金持ちの金払いだけはいいから、そこでプラスアルファの仕事をするだけ。ビジネスパートナーって奴だな。


けどこいつはロックじゃねえ。だから好きじゃねえんだ。



そんなわけで、今日も一日が終わるんだ。んで、明日届けるニュースの準備をする。ニュースはたくさんあるけどな、決め台詞にもある通り、俺はハッピーなニュースしか届けねえ主義なんだ。だから、ハッピーなニュースがねえときは、花が咲いただの今日は涼しいだの、そういうチンケな内容しかねえときもある。でもいいだろ、そんなチンケなもんでも届けるためにきちんと毎日通うってのはさ。


なんというか、ロックな生き方って奴だ。俺はずっとそうしてきたんだ。


だから、今日も花壇に水を遣る。俺の日課って奴だ。


これからも、ずっとそうするつもりなんだ。


それが、俺の生きがいなんだ。


・・・


・・



『親友と恋人を亡くした男の話』

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