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王冠・花・ぬいぐるみ

「王冠」「ぬいぐるみ」「花」


「ぼくはえらいんだぞ。だからおまえは、ぼくの「どれい」だ。」

「はい、王様がそう仰るなら、そうしましょう。」


この国の王様は、子供でした。

おもちゃの王冠を被って、くまのぬいぐるみをいっつも抱きしめている、小さな子供だったのです。


「おまえはぼくの「どれい」なんだ、だからぼくとあそばなきゃいけないんだぞ」

「はい、王様が遊びたいのなら、そうしましょう。」


この国の王様は、遊ぶのが大好きでした。

特に、ボール遊びが大好きな、やんちゃな子供だったのです。

もちろん、遊ぶときはぬいぐるみも一緒でした。


「ねぇ、「どれい」のなまえは、なんていうんだ?」

「はい、私に名前はありませんよ。なにせ「奴隷」ですからね。」


或る日、王様は私に尋ねたのでした。


「なら、ぼくがなまえをつけてあげるよ。きみのなまえは「タロー」だ。」

「はい、王様が名前を下さるのなら、私の名前は「タロー」です。」


或る日、王様は私に名前をつけてくれたのでした。

口は悪いけれど、誰にだってとても優しい子供だったのです。


「タロー、きみはぼくの「どれい」なんだから、ぼくのおしろをまもるんだぞ。」

「はい、王様がそう仰るのなら、私はあなたのお城をお守りしましょう。」


それから私は、王様のそばを離れることはありませんでした。

いつもずっと一緒でした。


それから、私はお花が好きでした。

ですから、私がお花が好きだというと、王様は「ならぼくがとくべつに、とってきてやるよ」と、その手を土まみれにして摘んできてくれたのでした。


それから、王様は敵が多い子供でした。

別の国の王様からいじめられたり、王様よりも偉い人から叱られたりするのでした。

ですから、私は王様が泣いてしまったりするととても悲しいので、身を張って王様を守るのですが、そうすると王様は、僕の隣に寄ってきて「タロー、ありがとう。」と仰るのでした。


それから長い時間、ずっと一緒でした。

私はどんどん年をとっていきましたが、王様は私よりも年をとるのが遅かったのでした。ですから、私がおじいちゃんになっても、まだ大人にはなっていませんでした。


そのころになると、王様は別の国の王様にいじめられなくなったし、偉い人から叱られても、泣かなくなったのです。そのころには、私は奴隷ではなくて、家族というものになっていました。

と、いうよりは、名前をつけていただいたときから、ずっと家族だったのだと言われました。


そしてそれからまた、気の遠くなるような時間が過ぎました。


お別れの時間がやってきたんだと、私は知りました。王様も、何故だかそれを知っているようでした。

私が王様と初めて出会ったのは、道端のダンボールの箱の中でした。

王様は、私は、捨てられたのだと教えてくれました。それは悲しいことでしたが、王様と出会うことができたので、別段気にすることでもありませんでした。


そしてとうとう、お別れの日がやってきたのでした。


私は、今までのことを思い返しました。ボール遊びや、一緒にかけっこをしたことや、私の家を作ってくれたことたくさんの思い出がありました。年をとるにつれて、一緒に入れる時間は少なくなっていきましたが、我ながら、愛されていたと感じるのです。


さて、私が王様とお別れするときですが、私は王様の腕に抱かれていました。


お別れの最後の瞬間まで、私はずっと王様の腕に抱かれていたのです。


王様は、もう泥遊びをする年ではないというのに、あのときと同じ花を摘んできて、手を土まみれにして、私を抱きしめていたのでした。


どうやら、私は王様の奴隷失格のようでした。


王様は、大粒の涙をぼろぼろと零して、じっと僕を見ていたのでした。

そしていざ、お別れのその瞬間になると、無理をして、涙をもっともっと流しながら、にかっと、笑ってくれたのでした。


王様、私はあなたの奴隷で、


幸せでした。

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