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4-ショッピングモールには割とスイーツ店とかいろいろある

 

 

 飲食店は東棟に集中している上、さらに高級スイーツ系は上層階に集中しているので、眺めが良い展望テラスの所にクラリスはいるだろう。

いつもたいてい此処に集合して、更新された情報味覚を楽しむのが日課だ、私も巻き込まれて最近は人口甘味料の集積の様な、不思議な甘さを体験し続けている。


「おーい!こっちこっち!」


案の定、クラリスはメニュー表を眺めていたらしく、私に気づくとこちらに向かって呼びかけてきた。

でも外でなく室内だ、なんでだろう、クラリスは外が大好きだ、絶対に展望テラスの方に居ると思っていたのになあ。


「どうしたの?クラリス?」

「ん?なにが?」

「今日はこれを此処で読みたかったからね」


そういってヒルディアが椅子に腰掛けながら、読んでいる書物をアピールする、なるほど、本を読むなら室内の方がいいのかもしれない。

黄色い照明に照らされて、上空でプロペラが回転する様な、典型的な洒落乙な場所だ、彼女は凄く様になっているなーと思う。それに比べてクラリスは、なんだか場違いな感じ。場が発する大人の雰囲気に馴染めていない様な?いやそうでもないかな、ヒルディアがモデルかなんかのレベルで馴染んでいるから、そう錯覚しているだけだろう。


「今日はどんなモノがあるの?」

「今日はねー、なんだか飲み物系がたくさん更新されているよー」


と、クラリスがメニュー表を見せてくれる、確かに飲み物欄にはNEWの文字が多い、一度も試したことがない表示だ。

それに比べて、他の欄はそもそも種類も量も少ない感じが否めない、たぶん飲み物系以外は製作が難しいのだろう。


「もしかして、コーヒーとかもあるのかしら?」


今まで、というよりもこれまで、特にこういった物に興味がなさそうだったヒルディアが聞いてきた。


「残念だねー、コーヒーはないよー、聞く所によると人口甘味料とかで再現できるもの意外は、現状開発が難航してるようだよ、万人に共通した味覚情報よりも、経験で身に付く味覚情報って言うのは複雑な再現構造らしくて、あ、でもチロルチョコのコーヒー味はあるよ!」

「だめよ、今ダイエット中だから、残念だけどチョコはちょっと、ね」

「大丈夫大丈夫ー、これはゼロカロリーだよ!」

「でもねー、ゼロカロリーでも、味覚を刺激すればインスリンが放出されて、体の脂肪を吸収させる働きが促進されるのよ?」

「うえ!そうだったのかー、、って最近、そんなに気にしてるの?全然変わりないように見えるけど?」

「あはは、冗談よ、全然気にしてないわ、貰おうじゃないのそのチョコ」

「クリステラは何がいい?何か欲しいものはある?」

「これがいい」


私はメニュー表の一番下、最も直近で更新された飲み物を指差した、するとクラリスが目を丸くした。


「えっ!うわー、これを選ぶとはある意味チャレンジャーだねー、でも実はこれ私も嫌いじゃないんだよぉー、よーし私もこれにしーよお!」

「なにそれ?そんなに興味深いものなら私ももらうわ」


ヒルディアはメニュー表を見ずに、私たちの掛け合いだけで興味を持ったようだ、どうしよう止めようか、いや彼女があれを飲んだらどうなるのか気になる、それに案外気に入るかもしれないしね。

クラリスが机の左側にある、機械式の呼び出しボタンを押す、すぐさま店員のお姉さんがやってきて、それらしい定型文で注文を取っていく、そして不自然でない位のちょっとした間だけ置いて、最短で飲み物とチロルチョココーヒー味を持ってきてくれた。

そしてそれぞれ、飲み物とチョコをつまみ始めた、ちなみに飲み物はコールドである。


「へえーこんな味のチロルチョコもあったのね、今まであんまり食べたことなかったわ」

「気に入ったぁ?」

「うん、なんだかコーヒーっぽさがちゃんとあるわ、コーヒーが好きだからその代わりにはいいかもね、、それでそっちの飲み物はどうだった?」

「おいしい」

「いいねーこれ、なんだかまろやかさは薄くなってるけど、その分スッキリしてて万人受けしそうな味になってるよ!これ!」

「ん?なにこれ?不思議な味だわ、名前は何て言うの?そういえば私はメニュー表見てなかったわ」

「おしるこ味の飲み物、これ」

「うむ、確かに!そういう味付けをした飲み物っぽいね!本物はもっと濃い癖があるからー」

「へえ、これの本物が飲みたくなったわ、今度見かけたら飲んでみようかしらね」


そんな風に時間を潰していても、メンテナンスはまだまだ終わらないらしい。

スイーツ店を出て、ファッションテナントの集合した西棟に向かうことになった。


「うーん、ウィンドウショッピングならリアルでしたい所よねー歩いてカロリーも消費できるしー」

「今日はそういう発言多いね、でもまあ神経は使ってるし、それに加えて電気も流して筋肉を振動させてるよ、長期の使用にも全く問題ないって聞くから、新陳代謝は悪くならないと思うよ!」

「でもねーその件に関しては良くもならないと思うのよ、プラスマイナスをゼロにするイメージ」

「あれ」

「うん?何か面白い服でも合ったのかい?」


わたしは、目の前の青くてひらひらした可愛い服を指差した、なんだかちょっと着てみたい衝動に駆られたのだ、やっぱり服を見て歩くだけでも楽しめるこのゲームは神だと思う、別のゲームでもこういう事は出来るかもしれないけど、このアトランティックというリアルな世界観、様々なリアリティーのあるイベントを沢山こなした、この地だからこそ味わえる何かがあると思うのだ、私にとっては都心の~区よりも、此処の方がなじみが深いだからだろうか?、別にリアルのそういう場所を知らないわけじゃないが、やっぱり沢山の思い出のある地のほうが居心地がいいのだ。


「わあ!いいねーぜひ着てみてよぉー髪にも瞳の色にもあってるし超似合うと思うよ!」

「あら可愛い服ね、是非とも着たクリスちゃんを撮影したいわ」

「ごめん、見るだけで満足」

「ええぇー写メらせてよぉー」

「やっぱ気恥ずかしくなった」

「そうかしらね?恥ずかしがる様な服装でもないと思うけど?」


そう言うと、彼女はフライウィンドウを呼び出して、タッチパネルをちゃっちゃと操作し、途端に必要な手順を済ませ、試着してしまった。

ちなみに、今まで三人とも軍服という色気も何もあったものじゃない出で立ちだった、ファッション性はあるしカッコいいと思うのだが、女の子らしさは欠片もなくなる、と思うのだ。

それが今、青い服に身を包んだ、黒茶髪に青い瞳の美女が現れたのだから、なんだか私達もそれに合わせなくてはいけない様な、そんな強迫観念に駆られた。


「じゃー私はこの黄色のワンピースを着てみようかなー」

「わたしはこれを」


わたしは、同じ物というのも何なので、手近にあった水色の服を選んだ、微妙に色違いのヒルディアとのお揃いだ。


「わあ、いきなり華やいだわね、いいわいいわ、やっぱ基本はこうでないと!」

「うん!なんだか服装が変わるとテンションも変わるね!キリっとするのも良いけど柔らかくなるのもいいもんだよぉ!」

「うん、こういうのも有りだと思う」


さて、すっかり当初のゲームの趣旨の欠片も見えなくなってきた、だがそこがいいんだ、そここそがこのゲームの醍醐味と言っても良いんだと思う。


「よし!次はあそこだね!珍しい生き物が非現実的にわんさか居るのが売りの、動物ランド、ルナルティア、何度見ても飽きないよー」

「それよりも、折角ゲームしてるんだし、ゲームセンター、ドリームランドで、此処を舞台にした2Dガンシューティングなんてどう?三人で同時プレイできるし」


さて、次はこの格好のまま南棟の動物ランドに行くことになると思うんだけど、どうしようか?


1、そろそろ、この日常に飽きてきた、いきなりモードを切り替えて戦闘に突入してみる

2、このまま、何気なくも楽しい日常を謳歌し、最終的な破局を演出する為の伏線を立てる

3、日常と非日常の狭間に突入する、、、地下で手に汗握るカジノ対決だ! 

4、いやまて、まだそんなにあわてる時間ではない

5、南棟のゲームセンターで、ショッピングモールを舞台にしたガンシューティングをやる

6789・・・・・・・・・・・・・・・・・


1シミュレーション

両腕裏の刃先を意識する、その切っ先のみを下段に向けて、仕込み刃を滑らせながら、必殺の間合いで切り上げる様に掻っ捌くモーションをシミュレーションする。

今なら、同時に二人とも殺れる、どうしようか、強敵二人を同時に屠れる、そんな快感に体がうずうずして仕方ない、日常を非日常で塗り替えてやりたい、理性はある、しかしここはゲーム、やってもいいんだ、そうだヤッても、、、。


2シミュレーション

「楽しいな、私ね、この行楽が終わったら、戦場に戻るんだけど、その前にこんな楽しい思い出が出来てよかったな、、、」


3シミュレーション

ざわざわざわざわ、カランコロン、そのとき、世界が停止した、何もかも、そして次の瞬間大観衆が総立ちになり、みな一様に信じられないものを見る目で、一点賭けを制した彼女を見やる。「さて、ここにある金という金、全て私のになったかな?」


4、、、


「おーい、どうしたんだ?解剖されるカエルさんの様な顔してるよ?」

「いや、なんでもない、ただちょっと考え事してただけ」

「何か、相談に乗れることなら聞くわよ?」

「大丈夫、問題ない、たったいま解決法を見つけたところだから」


はっきり言って、今このゲームの楽しみ方は間違ってると思うのだ、ただメンテナンスが終わるのを待つだけの暇つぶしならいい。

でもだ、この二人とも、既に本格的に楽しもうとしてる、なのに、こんなただ平凡なやり方、わたしは認められない、もっと素晴らしい楽しみ方を教えてあげたいところである、なんで、この箱庭に見えて、無限の可能性を秘めたこの場所の優位性を遺憾なく楽しまないのか?それは罪であるとさえ私は思う。


「オンラインモードON」

「え?」

「あら」


二人ともインドア趣味だ、だからいつもオフラインなのだ。

オンラインよりも、閉鎖されたモールの方が好き勝手できて良いのかもしれない、だけどあまりに寂しく感じるのだ。

此処からは記さない、だって色々な人間が沢山出てきて大変なのだ、何十なんてレベルじゃないのだ、何百だ、それは慌しくもあるが、何にも勝る楽しさだ、さて二人とも、これで割とアウトドア的趣味も解す人格者だし、わたしのフラストレイション爆発を許してくれるだろうか?。


100シミュレーション完了コンプリート


私の中に眠るサヴァンの力が溢れた、体感時間一分弱で頭の中が激しくめぐった、100通りシミュレーションした結果。

やはり二人のやりたい事をやらせてあげるのが、一番わたしにとって楽しいという結論に落ち着いた、まあ始める前からわかっていたけど。


「よーし、じゃー動物見に行くことに決定ねぇー、わーい前見た奴らは元気にしてるかなぁー」

「その後はゲームやるわよ、前にコテンパンにされた恨み、忘れてないんだからね」

「あっそういえばクリステラの意見聞いてなかった?なんか希望あるかなぁ?」

「ある」

「おっ!なになにー何でもきくよぉー」

「中央広場」

「あれ?中央の庭園みたいなところって何かあったっけ?」

「花が咲いてる」

「それはなんだか風流があって楽しそうね、気分転換にもなるし行ってみましょうか」


そういえば思い出した、中央広場あるいは庭園、このモールは中央が吹き抜けになっていて、多層式の園芸ができる広域スペースがあるのだ。

そこでこの前セットした、リアル標準時換算で成長するいろとりどりの花々を、良い組合せで植えておいたのだ、今ならうまく仕上がってるかもしれない。すこし前に、二人の意見を優先しようと思ったのに、その舌の根も乾かないうちに、自分の欲望を優先してしまったことに、なんだか遣る瀬無い気持ちになりながらも、まあいいかと向かう。


それにしてもクラリスは兎も角、ヒルディアは花がとても似合いそうだ、何かあげたら喜んでくれるだろうか?

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