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メクレンブルクロード‐ムゲン・クール・ザ・プレイ譚!

 

  

 はぁー熱いぜ。


 どこまでも続く砂漠地帯、そこをバギーを走らせながら思う。


 さまざまな哲学みたいな思考が頭を高速でめぐる。


 人間の意識など、そもそも後付なのだ、意味など無い。

 ようは思考を含めて、実際に実践的に何をするか、それのみが重要なのだよ、積極的に最大限人生において何事かを尽くすのみだ。


 あと、常にクールでいるのも大事だな。

 最大限の理性や知性、客観力や俯瞰視を用いて、この人生をゲームのように、上手く攻略するように生きる。

 できる限り余裕や余力、余剰戦力を持ち、実際にあるモノ以外にも、もちろん精神的なモノも多分に含む形でだ。



 隣にいる、俺の生き写し。

 千代四夜花梨チヨシヤカリンも全く持って、ほとんど似たような生き方をしている、いや、いそうかって話か。


「君、どこに向かっているんだ?」


 凛とした声、優麗なる茶髪を風に靡かせて、どこまでも鋭利な瞳がこちらを見つめている。


「そんなものは決まっている、その場の風まかせ、行き先など無限に決められる」


「そうか、でもせめて、全時空で、上位30位以内の規模の大都市にしてくれよ、そうでなければ怒るぞ」


 まあ、その意見には賛成である。


 俺達はこの世界、広域治安維持免許、そのような資格を保持する、言ってしまえば保安官のような職を受け持っている。

 大都市における、様々な問題、それのみを解決することを、大体の状況で求められる、そのような役どころ。


「もちろんだよ、でも、偶には俗世を離れ、風来坊のように旅に繰り出すのもいいんじゃないか?」


 風流以外に目的の薄い、周囲の荒野と山々を見ながら思う。


「それもいいけどもね、でも、私達は大きく求められているんだ、世界に対して、そこに生きる人々に対してもだ。

 だから軽々、そのような事はできない、そうであろう? 

 私だって、そのように職務に対して、どこまでも誠実な、そんな君を無限に求めるんだ」


 真面目である、そこがいい所なのだが。

 偶には俺の趣向に乗ってきてくれても、特に大きく問題は無いのだがね。


「ああ、そうだな、俺も、そのような自分のみを無限に愛する。

 自分が自分らしくあり、どこまでも愛する事が出来る、その為だけに全力を尽くす、そういう一回限りの人生を送りたいんだからな」


 黄昏ように、遠くを見ながらではない、彼女をチラッと見てつげる。


「そうか、それは良い生き方だと、私個人は思うぞ、これからも続けてくれ」


「おう、任せとけ」



 その時、周囲から異常、しかもレベルが相当に高い異常を感じた。


 それは隣のカリンも同様だろう、俺はバギーを乗り捨てた。


 次の瞬間には、俺たちが一瞬前までいた場所が爆発炎上する。



「おっと、穏やかじゃないな、敵は誰だろうか?」


「言ってる間に片付けようではないか、行くぞ」


 彼女の方は、既に臨戦態勢を整えている。


 腰に常に挿している、事象顕現装置、兼エネルギー供給ドライブ等、様々な用途に用いれる、見た目はただの白色の日本刀。


 それを中段に構えて静止している図。



 敵は、いやはやバラエティーに富む。


 魔法使いに、それに錬金術師、そして神々の類。

 どいつもこいつも、この世の上位存在のレベルで存在を高めた、そういう規模を感じる。



 この世には、だいたい三種類の方法で、上位存在と呼ばれるクラスに至る方法がある。


 第一に、魔法使い。

 この世の法則を全て否定し、新たな、自分だけの独自法則を生み出す、魔力を操るともがら。


 第二に、錬金術師。

 この世の法則を全て肯定、既存の法則、更には延長線上の、この世にはあまり存在し得ない、

 奇跡的な、又は存在不可能な、ある種魔法使いのような幻想・空想的な法則を生み出し、体力や精神力を操るともがら。


 第三に、神々の類。

 この世の法則全てに、直接命令できる。

 法則を操るのでなく、法則を自分の都合の良い形に、己の意思一つで変えることができる、神力を操る絶対存在だ。



 そして、これらを突き詰め、上位存在と至れば、だいたいの場合上位~と冠を付けて呼ばれることになる。


 上位存在とは、永久不滅の絶対存在、それに尽きる。

 決して完全に死ぬことのない、イデアと呼ばれる絶対領域に、その存在を定着させた存在を言う。

 その定着方法は様々だが、だいたいは一定量の、人間を構成する諸要素全て、法則改竄により少しづつ積み重ねる事による。


 そうすれば、この世の実体が消滅しても、存在は残り続ける。

 更に、一定の期間を置けば、自然と復活する、そういう回復のシステムも含めて、イデア領域に存在を積み重ねるのだ。

 このイデア領域は、この世の絶対不可侵の聖域だ、どんな存在も決して手を出せない。


 ゆえに、このような存在を完全破壊する事はできない。

 だが、実体を消せば、回復に時間が掛かる事は確実。

 この世に自己存在を降臨させる為に、多くの魔力、精神力、神力の類を費やし投資する事になるからだ。

 イデア領域に保存されるように、有限大の値で存在するそれら。

 ケチれば当然、降臨される存在の規模も目減りする、だから消す意義はある、敵対する存在にとっては。


 ようは、リスボンできるMMORPGってところか? 

 ゲーム脳で悪いが、そういう風に簡略に解釈する事にしている。

 この世には摩訶不思議で、神秘的な謎や不可思議、都合主義的な事が多すぎるからだ。

 一々頭でっかちに厳密に考えていたら、それこそ、それだけの考察等分析で一生が終わってしまうだろう。

 まあ、そういう事を研究する奴らもいるし、そういう生き方も全く持って否定しないし、悪いもんとは思わない。

 そんな生活も、案外悪くないんじゃねーかと最近は思うし。


 そして今の状況の話だ、人間の世界なら絶対の日常、あるいは非日常という名の、平常運転な日々の内の出来事。

 それによって、今の闘争っぽいアレコレも、大体において存在するんだろうよ。

 限られたリソースの奪い合い、パイの分配問題、そういう事。

 この世界も当然のように、そういう風な社会・世界情勢的問題を背景にした、泥沼的戦いに満ちているって事だな、ようするに。



 俺も、青色の日本刀を抜き放つ。


 それと同時に敵の攻撃が迫る。

 超科学力、というよりも、既に幻想や空想の類のレベル、そのような光速の攻撃。

 これは冗談ではない、一秒に約30万km、そのような超速度で、次元を断絶しながら突き進む異法則からなる攻撃。


 しかも今回のそれは、だいたいで察知できる限り、光速の5倍、5光速として表現される勢いだ。


 絶対に人間などが避けることも、知覚する事も不可能な攻撃だ、だが対策さえしていれば、なんとかなる攻撃。


 まずは己の感覚、これだけで光速の数%程度なら、意識を集中するだけで、難なく避けられる。

 そして、この青色の刀、事象顕現装置、創造と法則改竄の果てに存在する、異法の塊だ。

 これによって、敵のこの攻撃は、俺にとっては自動で避けるに等しい、回避機動を可能にする。


 この刀に内包される、化け物、その限りなく無に等しい自我が、それを起こしたのだ。

 そう、人間ではない、なぜなら既に常時、光速よりも早い速度で思考等をリアルタイムで行い続ける、そのような意識は人間足り得ない。

 無限に近く精密で高性能・高機能、既に機械領域の、そんなほぼ無自我が、観測・計測装置群により攻撃を察知、俺の意思や感覚とは完全に独立して、全自動で自立対応を実行したに過ぎない。


 正確には、俺に様々な形で命令を送り、自動で、アシストする形で体を動かすのだ。

 俺の法則改竄されつくした、その体ならば、”光速以上で動け”という命令入力を、完全に実行可能、現実で行い出力・反映させることができる。

 自分自身で、光速の攻撃を知覚からの回避、これはできない、だがこのような形でなら十分に可能というわけだ。


 そして、刀に宿された擬似サポート人格、サファイアが声を投げかける。


(マスター、敵の戦力を精確に把握しました、どれも私達に決定的な脅威になりえません、いかがいたしますか?)


 ふむ、そうか、それなら、特に問題はないかな? 全てこちらに任せながらも、不足の事態では対応を全て頼む、一任するよ。


(了解しました)


 それだけで、口数少なく擬似人格は沈黙する。

 そう、これは擬似的な人格である、刀に内包される真の化け物、無我の境地、それ本体ではない。

 人間まで意識の次元を落とした、俺という人間存在とコミュニケーションを取る為だけの存在である。



 目の前で、白刃を構えるカリンの、彼女のそれも、俺と似たような異物である。



 敵は、どうやら俺達の力量に気づいているのか、先ほどから遠距離の攻撃しかしてこない。


 魔法使いは、魔術書、それに書かれた術式を詠唱しながら、多彩な攻撃を放ってくるし。

 更には創造した、様々な事象や世界観等をもちいて、こちらを扼そうとする。


 錬金術師も神々も、だいたい似たような攻撃方法だ、極地を極めた達人の攻撃はだいたい紙一重の違いに過ぎなくなる。



 それでも、多少抜き出でた奴はいる。


 使える錬金術師は、法則を緻密に計算、その果ての異次元の空想的な法則までオリジナルで編み出し、ありえない次元の攻撃をしてくる。


 更に高次の神は、大規模で大胆な、巨大な意思に基づく、巨大な命令を世界に対して実行。

 創造された現象は、それだけで威圧感をともなう、自然災害すら超えた、領域内を純粋に覆滅させるだけの指向性持ちの大光線。


 それら全てを回避、あるいは光り輝ける盾で防ぐ。


「どうする君、こいつらを片すか?」


「いや、その必要はないよ。 さっき君が言った通り、大都市に着けば、こいつらも追ってこれないし、手出しもそもそもできない」


「うむ、そうであるな、片す時間の方が、この場合は痛くなるな、チャージサイクルは既に回ったか?」


「うん、二分前に」


「それでは、ジャンプだ、座標はここから一番近い都市、多少のズレは構わないから、高速転移を実行しよう」


「精密転移じゃないなら、空中の方が、万が一の迷惑を考えて、その方がいい、もちろん心得ているだろうけどさ」


 彼女は俺の言に頷き、精神を多少なりとも集中させる、俺も同様である。



 ジャンプ、あるいはワープと呼ばれる、この移動方法。


 純粋に長距離を一瞬で移動する、そのような移動方式。

 原理は様々あるが、今回の俺達は一般的なモノを用いる、ただ次元を高い深度で”潜り”移動距離を短縮・圧縮、それだけの話だ。


 高深度次元、あるいは時空は、物質を無限に素粒子まで分解させる、それだけの圧壊圧力が働く超密度領域だ。

 だから俺達は一応のフィールドを展開する必要が、本当に一応はある。

 特に生身で突入しても、今回の深度ならば大して問題ないのだが一応だ。


 そして、高深度な領域に”潜る”為の、次元を超える為の処置も行い、意識を全力で集中させる。

 主な処置の大体は、刀内存・内包のデバイス群に任せる事になるが、より高速化させる為に、おれ自身でも作業の一端を補完する。


「では、向こうで、適当に落ち合おう君。 それではゆくぞ」


「ああ、それじゃ一端分かれるか、向こうで合流って事で」


 高速でのワープなら、座標は多少乱れる。

 事前に様々な処置を行えば、ほとんど指定した座標に正確に転移できるが、この場合は精密さよりも速さの方を優先した。


(それではジャンプします、カウント初め、3,2,1,)


 その脳内に直接響くような声を後に、一瞬だけ視界が暗転した。

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