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3-ゾンビを倒すのは楽しい?それよりも??

 

 

「みんな準備は整ったわね」


イヤホンマイクからヒルディアの声が聞こえる。

私は今、巨大なショッピングモールの屋上にいる、超大型でまるで海外のテーマパークのようだ。


「オールライト、武器弾薬全て調整配置済み」

「オッケーだよー、CPUの皆にも配布済み、完全武装完了、いつでもどうぞ!」


クラリスの元気良い歌い上げるような声、どうやら全ての全準備は完了、これからの時間はただ全力を尽くすのみ。

私は、全方位に空けた視界から空を見上げる、どこまでも澄み渡る青空に灼熱の太陽、雲はおまけ程度にあるのみだ。

いい天気だ、健康的にスポーツするには最適な気候、私は柔軟体操をしながら、全身の筋肉をほぐしつつ考える。

私が今立つモール屋上、四角形でフェンスを取り払われた開放的な空間、ここからなら最短の移動時間で、モール周囲を効率的に哨戒できる。

ほぼ射程無限の長距離スナイパーライフルで、柔軟で広範囲内の攻撃と援護等が私の役割だ、更に屋上の狙撃部隊(NPC)の簡単な指揮も含まれる。

あと、安全圏で最終防衛線でもあるモール屋上で、負傷者の治療や、戦場全体を俯瞰した時の、大雑把な司令部の役割も果たさなければならない。

他の二人は、常に神経を使う”外”の配置を受け持つので、このような指揮を行うのは不適切だ、なので必然私がフォローや、その穴を埋める役どころになっているのだ。

まあ、こういう戦場に指示を出すのも、それはそれで面白いのだ、自分の指揮で部隊や隊員が戦場を最適に動き、最大の戦果を上げる。

前衛で戦う機会もあるので、優秀な指示がどれだけ助かるかも、自らの経験的に実感できるので、なかなかに遣り甲斐があるのだ。

ちなみに他の二人は、剣士とサムライだ、車両でモール外を縦横無尽に移動しながら、ばっさばっさと敵を快刀乱麻のごとく打ち倒す。

それぞれに直属の部隊を率い、プレイヤーの彼女達がNPCを引き連れ、先陣を切りつつ戦うのだ。

このゲームは熟練者になると、近接戦闘か長距離武器による攻撃が、最も効率がよくなる、だから中距離戦闘の基本、普通の重火器はあまり役に立たなくなる。

外と屋上からの迎撃を振り切り、モール内に侵入した敵に使うくらいか、モール内に配置したNPCがそういう武器を主に使っている。

私は屋上中央に複雑に配置された、屋内監視カメラの映像パネル、数十の画面を均等に眺めてみた。

どれにも完全武装の戦闘員が、アサルトライフルやサブマシンガンを構えている姿、テンプレートの簡易指示に従い罠を設置してる者もいる。

偶に日本刀や大剣を構えている、そもそも規格外として育成された強化人間、という設定の、厳めしい容姿のNPCも要所要所に配置されている。

そんな確認作業の様な、無駄な再確認をしていると、またイヤホンからヒルディアの声がしてきた、さっきから敵がいつまで経っても来る気配が無いので、何かあったのかと予想していたが、どうやらその通りだったようだ。


「ちょっと運営側でトラブルが発生したみたいよ、フライウィンドウを開いてみて」

「もう見てる、緊急メンテナンスで運営側の人工知能が動かせなくなったって」

「えーどうして!そんな事前報告なかったじゃないかぁー!」

「だから緊急なんでしょうね、しかたないわよこればっかりは」


運営側で管理している高度な人工知能、これが無いと、そもそも敵を動かせないのだ、複雑な立体技術で何百体と同時に動かす上、更にボス級のタイラントなど人造人間等々は、プレイヤーを圧倒するほどの技術に裏打ちされた力量がないと、あまり彼女二人にとっては楽しくない。

そんな無駄に高性能な人工知能により、全面的に支えられているこのゲームは、それが機能しないとただの箱庭ゲームであるのだ。


「せっかくだから、喫茶店とかがあるモール内を楽しみましょうか、そこで暇を潰してればそのうち回復するでしょう」

「うん、そうだね」

「それじゃースイーツ店に集合ね!サバイバルモードからレジャーモードに切り替えるよぉー!」


その一声とともに、殺伐とした静寂に包まれていたモール内外は、沢山の家族連れや観光客で溢れかえった、いつ見てもこの変わり振りは凄い。日常をこうやって演出し、真逆の非日常をより際立たせる為だとか、製作陣は言っていたが、これは手を込みすぎていると思う、ほんと色々な意味で、たぶんこの日常パートで一つのゲームが成立するくらいには。

このショッピングモール日常パート編を、100%コンプしている私が言うのだから間違いない、思い出が一杯なのだ、戦闘中、このモールに対する様々な思い入れが出るくらいだから、製作者の思う壺なのだろう。


改めて、空を見上げモールから見渡せる町並みを眺める、この景色は私にとって第二の故郷のようなものだ。

究極のブレインナノマシンシステム、インターフェースを用い、直接脳に情報を入力し、更に情報を出力することも出来る。

その情報技術、脳科学の奇跡的発達により、様々な制限はあるが実現した、このゲームというセカンドワールド。

しかしその技術によって完成したゲームが、必ずしも人間にとって娯楽になるとは限らない、ゲーム製作とはそういうものだ。

数あるゲームの中でも、この”アトランティック”は屈指で不屈、さらに進化し続ける、一つの世界を構成して発展させ続けていると思う。

私はそんな感慨に浸りながらも、屋上から降りつつ、目的地のスイーツ店に向かう。

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