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2‐若い頃の朝は、無意味に体力を使い果たしてからが本番

 

 

 学校に着いた、とても疲れた、でも全て滞りなく済ますことが出来たのでよしとする。

 そんな爽快な達成感をともなって、自分の机に鞄を下ろして、教科書やら何やらをしまっていると。


「あら、今日はいつもと違ったご登場だけど、何かあったのクリスちゃん?」


このわたしをちゃん付けで呼んでいる、メゾソプラノの美声、その声の主は、腰ほどもある黒茶髪を艶やかに翻らせ、意志の強そうなキリっとした青眼とともに、溌剌とした存在感を周囲に醸し出していた、今日も制服姿が映えている。

いつも思うのだが、彼女にはなんだかその服装が、とても性に合っている。

見た目的にも彼女の気質、ノリ的にも女学生っぽさが常にあるからだろうか?

そんな見るからに活発で大らかで穏やかそうな彼女を、私は大好きだ、さすが理想の大人の女性の典型の様なクラス一のお姉さんでもある。

しかし、人一倍の社交性や気遣い等々、様々な面がほどよく備わり、人格面人間面非の打ち所が一切ない理想の人間っぽさもある、素敵過ぎる。

とまあ、この人がヒルディア、今年私と同じクラスになり、強烈な印象を合う人みんなに与える、私にとって太陽の様な存在だ。


「うん、寝坊」


わたしの隣で、激しいドタバタした音が止まり、椅子に腰掛ける音。


「貴方は、、いつも通りねクラリス」

「そうだよー、今日はちょっと奇跡的なトラブルが重なって寝坊しちゃったんだー」


彼女の名前はクラリス、金髪碧眼、平均的な身長で細身であるが、体を鍛えているのか肩筋等はしっかりしている。

天真爛漫で常に元気一杯の美少女である。

さっき教室に滑り込むように飛んできた時、彼女の先端で結ってある、長細い髪の毛に顔を撫でられた、それくらいの長髪でもある。


「あら、それは大変だったわねー、でも間に合う時間だったんなら、不幸中の幸いだったんでしょ?」

「そうでもないよー、ギリギリの修羅場を潜り抜けて、その奇跡の果てにわたしはいま此処に立ってるんだよ?」

「貴方の周りはホント刺激的ね、奇跡も修羅場も溢れかえってるなら退屈知らずでしょ?羨ましいわ」

「はっははぁ!そんな漫画みたいだったらいいね!でも残念、今日は偶々だよ」

「ふむ、どんな事があったのか、詳しく聞きたくもあるけど、今日はクリスちゃんが珍しくギリギリだったのよ?」

「え?そうなの!珍しいこともあるもんだねー、何かあったのかい?クリステラは?」


私は、机の前で話してる彼女達の会話を聞いてなかった、疲れているのだ、久しぶりに走ったので。


「なに?」

「今日、ギリギリだったっしょ?何かあったのかなって」

「特に何も、おやすみ」

「うっそだー、あのクリステラが寝坊したんだ!何もないなんて事は絶対にないよー」

「あるの」

「何があったのか教えてー」

「何もないって言ってる」

「教えたくないタグイのこと?」

「教える事がないだけ」

「なるほど、教えるのが面倒臭いから、そう言ってるんだね」

「・・・・・」

「教えてくれないと擽っちゃうぞ?」

「・・・・好きにすればいい」


私は、図星をつかれて、嘘を簡単に見抜かれて、あと疲れてたから、もうどうでも良くなって机にうつ伏せになる。

すると、お腹の両脇に手が回り、後ろからわきわきとした感じで擽られた、酷い、泣きそう、嫌だ、何これ我慢できない。


「やめて」

「じゃー教えてよー」

「絶対に教えない、嫌い、どっか行って」

「あらあら~嫌われちゃったわねクラリス」


と、そんな私達のやりとりを微笑ましく眺めているヒルディア。

彼女は、クラリスが私にちょっかい出してじゃれてるのを、いつも自分は手を出さず放置していることが多い、助けてくれてもいいのに。

たぶんだけど、彼女も本当は私を虐めたいのだと思う、でも外面やら体裁を気にして出来ないのだ、きっとそういう事なのだ、みんな死んでしまえばいいと思う。

・・・・変に自暴自棄になった、でも可笑しいのだ、ヒルディアの優しさは本物、なのにこんな酷い事されてるのに放置だ、放置プレイだと、私は客観的に見るんだこの状況。

もし仮に、そういう感じの流れでないなら、何か言ってやって欲しい、この度を越した事する人に。


「ヒルディア」

「どうしたの?」

「クラリスに何も言わないの?」

「まあ、クラリスがクリスちゃんと遊んでるのを邪魔しちゃ悪いしね」

「わたし困ってる」

「困ってる?あなたもクラリスも楽しんでると思ってたんだけど、私もそんな二人を見てて本当に楽しいなって思っていたんだけど、、、ごめんなさい、クリスちゃんが困ってるなら、やめさせるべきよね、クラリ「困ってない、ただちょっと擽られるのが弱い、だからそれは禁手にして欲しい」、そう?確かに擽られて、いつもは大人しいクリスちゃんが身を大きく震わせたのは、私もビックリしたし、やっぱちょっと嫌だった?」

「うん、絶対」

「そんなに嫌だった?ごめんよぉー、悪戯半分で怒らせるつもりは無かったんだよー」

「なら許す、もうしないこと」

「でもなー、擽られたときのクリステラのリアクション凄く楽しかったよ?偶にならやっていいかな?」

「いいわけない、絶対に駄目」

「そこをなんとかー何でもしますからぁー」

「何でも?なら擽らないで」

「どうしたら擽らせてくれる?例えばわたしが嫌なこと以上に嬉しい事をしたら許してくれる?」

「そもそも擽らなくていいと思う、これ以上は何も聞かない」

「残念だなー、でもまあそうだよね、他人の嫌がることしちゃ駄目っていうし諦めるかー」

「あらやめちゃうの?」

「なんで残念そうなの?」


ヒルディアが、クラリスが引き下がって、すかさず合いの手を入れる、もうやめて欲しい、そんなに擽られた時のわたしは見ものだったのだろうか?


「なら、わたし立候補していいかしら?クリスちゃん?わたしが擽るなら、もしかしてOKとか?」

「・・・・・・」


そんな会話をしていたら、教室前方右の扉が勢い良く開いた。

ガラガラではなく、さっと開けてさっと閉める感じだ、先生が入ってきたのだ。

現在時刻8時49分、1分でHR終わらせないといけない計算だ、さてどうするのだろうか、というよりジャストタイミングGJグッチョブ


「あらあら、一応席に着かなくては、この話はまた休み時間にでも、、ね?」

「・・・・・・」


あんな話をしなくてはいけないのか、どうすればいいんだろうか、まあいいか、なるようになるだろう、プラスに考えよう。

現在もっとも高確率の可能性は、ヒルディアに擽られて酷い目(?)にあうか、拒否してガッカリさせるかだけど、、、。

逃げよう、それしかないだろ常識的に考えて。


「一分しかないな、話してる間にもう時間が無くなる」

「先生」

「なんだね?クリステラさん、時間に余裕がないので手短に、、」

「早退します」

「?どこか?調子が悪いのかね?」

「っ!?せんせい大丈夫です!わたしがちょっと変な事いったら本気にしちゃったみたいでぇ」

「???大丈夫な感じですか?クリステラさん」


私はチラッとヒルディアの方を見た。


「?さっきのは嘘?冗談?」

「ごめんなさいね」


そう言って、すまなそうに両手を胸のあたりで合わせる、ふぅ、なんだよかった、早退せずに済んだ。


「欠席は、、どうやらいないようだな、では今日も頑張って授業を受けてくれたまえよ諸君」


そう手短に言って、さっさと教室を出て行ってしまう教師、どうやらそういうチェックさえできれば問題ないようなのだな。


「さっきはごめんねークリスちゃん、悪戯心を出してしまってっ」

「問題ないっ全く迷惑してない、本当に調子が悪かっただけ」

「え?そうなの」

「そう、調子が悪いのはもう直った」

「なんだ、なら良かったわ」

「うーむ、なんだかねー、クリステラはヒルディアには甘いね、嫌なら嫌と言ってもいいのだぞ?」

「嫌じゃない」

「なら私の擽りも嫌じゃない?」

「さっき嫌といった」

「じゃー私を擽ってみるかい?」

「うん、恨みを晴らす」


クラリスは、楽しい人なのに、時々度が過ぎることをする、たまに痛い目を味合わせて自重させられないだろうか。

これは絶好の機会だ、これを機に主導権を握り、逆にクラリスを虐めてやりたい、別にわたしは常に受けではないのだから。


「???なんで?」

「なんでって、擽り方がなってないよぉ~」


そう言って、正しい位置(?)に私の手を導く、するとクラリスは激しく過剰なほど情熱的に笑い出した。涙目だ、でも凄く楽しそう、見るからに。たぶん快感を感じてるんだと思う、嬉しがった顔見たさに擽ったわけじゃないのに、いや嬉しがった顔はしてない、でもどう贔屓目に見ても、精神面では喜んでいる。

うん、どうやら擽られて喜ぶ人だったらしい、わたしはすぐさま萎えて手を止めた。


「あれ?もう終わり、もっと擽ってよ、まだ物足りないよぉー」

「もう満足した」

「ええぇーまだまだ全然足りないよー」

「あら、ならわたしが擽ってあげましょうか?」


いままで様子を見てたヒルディアが、ウキウキして、弾む声色で言ってきた。


「うん!もっとやってやって!なんだかマッサージ効果があるんじゃないかって気さえしてきた所だからぁ!」

「面白いわ、擽られて、まさかこんな反応するなんて、ふっふ、クリスちゃんもそう思わない?」

「苦しんだ方が面白かった」

「そりゃないよー」


そんな事して、二人で楽しんでる様子は見たくない、私は早々とその場で不貞腐れる、どうも朝体力を使い果たしたせいでノリが悪い気がする、病は気から、どうもテンションが体調に左右されやすいきらいがある。

こういう所はいつも元気一杯のクラリスを見習わなければ、クラリスが擽られて喜んでいる、恍惚とまでは言わないが、見てるだけで冷や水をぶっ掛けて眼を覚まさせてやりたくなるふやけた顔してる、全くだらしがない、蹴飛ばしてやろうか。

駄目だ、疲れてるだけで、こんなにも心が荒むようでは。もっといい事を考えよう、クラリスが喜んでて私も嬉しい。

そう、他人の幸せを自分のモノと同一に感じる、それが出来るだけで世界は全く違って見える。

クラリスが、体を小刻みに震えさせている、なんだか元気が出てきた気がする、元気なクラリスが今日も今日とでいつも通りだ、なら私も与えてもらった元気をすこしでも返せるように、何か出来ることを探さなくちゃいけないんじゃないだろうか?


「クラリス?そんなに擽られるのがいいの?」

「うひゃはっは、これ、うりゅ、慣れるとっはっは疲労回復にいいと思うっふふっふ」

「理解できない」

「特異体質なのかもしれないわね」

「もうやめて!もういいよ!これ以上は逆に疲れるからぁー!」

「そうなの?」

「うん!」

「クラリス」

「なんだいクリステラ?」

「元気だね、なにか秘訣でもある?」

「擽られると元気になるかもよ?」

「それ以外で何かある?」

「そうだねー可愛いクリステラを見ることかな!」

「あ、それはわたしも同感だわ、可愛いクリスちゃんを見ると、今日も頑張ろうって気になるわ」

「・・・・」

「可愛いはすこし違ったかもね、愛らしいとか愛くるしいとか?」

「どっちも同じ意味よそれ、ニュアンスは違うかもしれないけど」

「あまり、役にたたなそう」

「あちゃーならクリステラには元気印の飴ちゃんをプレゼントしよう!」

「いらない、クラリスを見てるだけで十分」

「?ああ、そういうことか!まあわたしはエンターテイメント界の申し子だからね、娯楽は活力だよ!」

「そんな意味じゃ、私は可愛いクリスちゃんに、楽しいクラリス、一番得をしてるわね」

「そんなことないよぉーヒルディアだって可愛いし楽しいよ!皆違ってみんな良いって奴だね!」

「うんっ全面的にそう思うな」

「うぅ、まあお互いの持ち上げはこれくらいにしましょう!いいのいいの、なんだって、私以外の話をしましょう?」

「おっと、そろそろ一限目がはっじまるよぉー、ゆるゆり始まるよー」

「そうね、まだまだ一日はこれからだし、体力を温存しときましょうか」

「これからまだ何かあるんだ」


やはりこの二人は、私よりも体力面がだいぶ優越しているようだ、精神面も影響するのだろうか?

そんな事を考えながら、朝の何気ない、いつも慌しくも何か楽しい気のする、一日の何十分かの一の風景が過ぎていく。

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