17‐欲求不満が無限に過ぎて破綻、無限の娯楽を目指し始める破滅、全崩壊からのゼロへの回帰、始めに戻る円環の理
「乙女ゲーやるわよ」
「は? ダボハゼが、誰がやるかよ、一人で勝手にやってろ」
そう言った筈なのだが。
なぜか俺は彼女の家で、今まさにそれをやる体勢にある、それはなぜか?
そんなの簡単だ、俺が彼女に、シャルって奴に脅迫されてやらざるを得なくなっただけ、それだけだよ、ああそれだけが全部。
「なんでいきなり、俺とやるってどういう意図だ」
「うるさい、もう駄目、駄目なの。もう駄目よ、どうすりゃいいのよ。」
そうやって嘆きながら頭を抱えて目をぐるぐるさせて、なんだか吐きそうな前兆まで見せ始める。
「お、おい大丈夫かよ」
「大丈夫じゃない。もう生きてるの耐えられないの。こんな無限に破綻して崩壊して破滅的な人生、ゲームを続けるのが辛いの。無限に不幸になる可能性もあるし、無限に幸福になる可能性もある。わたしはその全ての可能性を予知できるから、日々を無限に最善最良で生きて、最強無敵に常に100%本気真剣で全力で限界で、それこそ無限に至高のプレイヤーであらないと、努力して生きないと、常に満たされないし。そんな事はわたしでは、人間では当然出来ない。将来的には絶対に100%後悔するし、無限大に満足とかもする。そんな生きてるのが意味分からない、無限に矛盾し続けるそんな沼底で生きてるの。それに耐えうるには、耐えてもいいと思えるほどの生き甲斐とかが必要十分以上で必要、絶対必須。この人生というゲームが楽しくて面白くて、どうしても生き続けたいと思わないとホントやってられないの。イツキ、今日で絶対的不可能を可能にする勢いで、無限大に高次元で高強度の娯楽を、情報を、私達の思い出を、そんな何かを作りましょう」
でた、シャルの超絶メンヘラ発動期。
彼女は四六時中、それこそ24時間心に闇を抱えている。
その深淵はどこまでも底が見えず、俺では絶対に計り知れない不安や恐怖、心配や悲しみ、それら全て含めた負の感情を抱き続けこの世の全てに差し向けているのだ。
「お、おう、やってやろうじゃねぇーかぁ!永遠に付き合うぜ」
「ありがとうイツキ、貴方ならわたしと共にヴァルハラまで永遠に付き合ってくれると思っていたわ」
そこまで言ってねぇえ、だいたいヴァルハラってどこだ、脳内妄想や電波をさも当たり前のように口にして俺に言うなっての。
まあそんな小さなところを指摘して邪険にするのもあれだ、適当にスルーして話しを続けてやるか、俺は途轍もなく優しいからな、こいつに対しては。
「それで、なぜに乙女ゲー?」
「当然でしょ、馬鹿? 乙女ゲーで萌え萌えキュンキュンして、ハートフルマックスにならないとこんな人生やってられないでしょ、クソゲーなんだし」
はぁーー、いや怒るな。
別にこの程度彼女の日常茶飯事、こんなんで一々感情動かしてたら、マジでサン値みたいなのがゼロ振り切って発狂すんぞ。
「うむ、俺にとってのギャルゲーとかそういうのって事かね」
「うん、そう、一緒にやりましょう」
彼女は最近新販売されたっぽい乙女ゲー、吸血鬼?ヴァンパイアが主人公の天使と悪魔も出てくるゲームを取り出す。
俺も多少話しに聞くレベルの有名作品だな、俺の周りでもこれをやってる知り合いや有名人が結構多くて知る機会が合った。
「これはね、二人プレイができるの。貴方が男性パートの台詞、そして私が女性パートの台詞を交互に言うの。もちろん普通にプレイもできるけどね、でも貴方が相手の方が今回は面白いと思ってキャストを貴方に変更、というより二人プレイでやるわよ、いいわね?」
「まじかいな、俺にそういうスキルはないぞ?」
「いいのよ、そういう素人臭さをわたしは求めているのだからね」
ゲームを起動させて、VRゲームでお馴染みのインターフェースを自分に着けてから、俺にもう一つを放る。
「おいおい、マジでやるつもりか? 俺じゃなくて一人でやったほうがよくないか?」
「そうね一人よりみんなでやった方がいいわね、配信もつけましょうか」
彼女は更にブラウザを起動、スマイル動画にアクセス。
俺と彼女の共同コミュ、これまた毎度御馴染み”黄昏の花園”で放送開始。
「おらぁ、こんばんわだぁ、おじさんども」
開口一番そんな酷いあいさつをする、その一言で視聴者にシャルが超不機嫌モードっぽいことが伝わっちまうぜぇおいおい。
「よぉーす!おめぇーら深夜だけど元気してるかぁ!!」
俺はシャルのテンションの低さをカバーする為に、無理矢理カラ元気っぽい何かのスイッチを入れて盛り上げようとする。
そんな俺の最初のあいさつをした頃コメントが流れ始める。
「ぴょおおおおおおおおおおおおお」「いえええええええええええええええええええい」「乙女ゲーとかwwwwwwwwwwwwwwwww」「イツキてめぇええええええええええええ56すぅうううううううううううううう」「ねろ」「明日仕事あるから1枠で終われよ」「シャルちゃんこんにゃああああああああああ」「シャル様枠とってくれてありがとうぉおおおおおおおお」「イツキ!今日も元気だなぁ!」「シャル様ぁあああ今日も一日ずっと貴方様のこと考えてたよぉおおおおおおおお愛してるぅうううううううううううう」
まあ、あれだよ、こういうコメントが面白いと思ってるんだ、俺もシャルもたぶんな
なんか偶に客観的にこういうの見ると、恥ずかしいというか非現実的っていうか凄いな。
そういえばと、俺は放送タイトルを見る。
”乙女ゲーナイトフィーバァー”、おいおい、おいおいと。
「さて、今日始めるのは他でもない、イツキとの乙女ゲーです、皆さんこの意味が分かりますね? はい、彼が凄く恥ずかしい事をします、ぜひ楽しく鑑賞してやってください」
「おいこら、俺がお前に協力してやるって感じなのに、なんて言い草しやがる」
彼女はチロっと、艶かしい赤い色彩の舌を見せててへぺろみたいな事をする、可愛すぎて怒りが即刻萎えた、悔しすぎて精神が拒絶反応起こしそう。
「さて、ゲーム内に行きましょう、二次元の世界にレッツラゴーレムよ」
「はあ、お前馬鹿になっちゃったみたいだな」
「なに? その覚めた態度、今ココでぶっ殺されたいの? ああそうか、貴方も知ってるのね。乙女ゲーでは死んで別世界に行くパターンが多い、だからそういう態度でわたしに殺される事で乙女ゲーの世界に行きたいわけだ」
「なわけあるか、わーたよ、お前に合わせて付き合うから勘弁しろ」
そういうと彼女は俺を待つ。どうやら俺より先にゲーム世界に行き、無防備な姿を晒したくないようだ、性格わりーなホント。
「おい、偶にはシャルが先に行けば?」
「馬鹿、貴方わたしに100%エロイ悪戯するでしょうが、死ね、そして先に行けよ」
やっばっ、いつもより怒りの沸点が低すぎる、ちょっと怒らすだけで調教モノの刑を下すぞこりゃ、はやく大人しく先に行くか。
そうやって俺はゲームの世界に意識を手放した。
ここは何処だろうか?
半透明の自分のアバターがある、そして隣にも既に到着済みの金髪碧眼の少女シャル。
「まずは物語の冒頭から、平凡な世界に住む、、ってここは別にわたしが読む必要はないわね」
そう言いつつ、適度な速さでメッセージウィンドウを進め始める。
物語の冒頭は簡略に説明するとこうだ。
平凡な世界に済む少女、主人公だ、彼女が突然帰り道に車に轢かれてしまう。
そして目が覚めると全く別の世界にいるのだ。
そこで自分をなぜか介抱していた人間が悪魔って存在で、自分はなぜか召還された吸血鬼だと、そんな意味の不明な感じで物語りは始まる。
「さて、では始めましょうか? イツキ」
「まあ、なんだ、後学の為にも出来るだけ有意義になるようにやろうぜ」
「はあ? ふざけんなよ、命を掛けて自己の存在100%全てを捧げて死ぬ気で取り組むんだよ、仕事人職人の気概みたいなモノを見せなさいよ」
「ちょ、今日は本当に厳しいな、そんなになんか嫌な事があったのか?」
「合ったわよ、もう絶望の底を見た感じなの、助けてよイツキ」
といきなり態度を反転、切実に助けを求める少女のような瞳、甘い声色で俺の名前を呼ぶ。
ああ頭が可笑しくなりそうだけど、なんかやらなくちゃいけない事だけは分かった感じだ。
この少女が最大限の満足の為に、己の全てを捧げようじゃないか、てか俺は昔からそうだったじゃないか、今日も同様に取り組むだけだ。
「おお!助けてやるぞぉ!俺がシャルを助けられないなんて絶対にありえないし!絶対に認められないんだからなぁ!」
「ちょろ、こんな小芝居でやる気を出す貴方に、大して期待ができるのかしら? まあ精々わたしに捨てられないように気張りなさい」
こ・い・つ、、、マジで一度こっちから突き放そうか? いや駄目だ、こいつの場合それが致命的になったりして、ちょっと冗談じゃすまなくなる。
はあ、結局割りを全部どころか彼女の分まで背負うのはいつも俺だぜ。
「でも、ありがとうね。イツキがそういう風だから、まだまだわたしは絶望の底に落ちずに死なずに済んでる、もっともっと貴方とともに生きる生に執着できる、もっといろいろ、わたしに無限の夢を見せてね、イツキ」
はあ、まったく、彼女の為に尽くしたくなる。
労力とかいろいろそれ以上の報酬とかを、彼女からは無限に得られる、そういう確信があるからこそ俺も無限に彼女の為に頑張るんだろうな、ホント様々にな。
「貴方が、わたしを助けてくれたのですか?」
「助ける? 可笑しいですね、貴方はわたしに召還されたのですよ、次元の向こう側からね、これより貴方はわたしの使い魔、絶対服従ですよ、わかりましたね?」
「、、は、はぁああああああ????」
キタコレ。
よっしゃぁああああああ!!!こういう展開なら超面白れやる気でるぅううううううう!!
最初の介抱のシーンから大体こんな感じ。
長身痩躯、黒髪黒目の悪魔って設定の登場人物を俺が演じ、シャルがヒロインを担当、終始悔しそうに唇をかんでいた。
「どうよ、楽しいか?」
「うぅ、、、悔しい、でも感じちゃう、ビクンビクンよ」
「キモ、シャルってそういうM気質もあったのかよ、ちょっと幻滅」
「うるさい、気持ちいいものは気持ちい、気持ち悪い貴方は気持ち悪い、そういう生理的反応よ、しかたないでしょ、生理現象一般と同じ話よ」
「いや、その理屈、つーか俺が気持ち悪いってどういう事だよごらぁ」
シャルは嬉しそうにニコニコしながら話す、なんだなんだくそがぁよ、そんな顔されたらキレられねえじゃねえか、この卑怯者がぁ。
「やっぱ罵られると気持ち良いのか? 俺には良く分からん感覚だが」
「嘘付け変態、貴方も日々わたしに罵られてよがってるでしょ、わたしも人の子、罵られると気持ちよくなってしまうの」
「おいおい、おまえ自分のキャラ忘れて楽しんでねえか? そんなんでいいのかよ」
「はぁっ、快楽の為ならプライドも誇りもキャラも、何もかも投げ捨てて飛びつく、そういうどうしようもない駄目女、そんな事貴方知っていたでしょう?」
まあ、そうなのかな?
普段は潔癖で完璧主義者、だが一度タガが外れて駄目になってしまうと、どこまでも駄目な感じに、なんか残念で痛い感じになる、そういう一面も彼女は持つらしい。
「さて、ちょっと休憩、このVR世界のどっかで雑談でもしましょう、いや違う、貴方にわたしを罵ってもらいましょうか、存分にね」
「なんでそうなる、今日は虐められたい日なのか、くそめんどうだぁ」
そう言いながら物語の舞台、西洋の町並みと現代の建物が複雑に入り混じった奇怪だが、なぜか見栄えする不思議な空間を歩く。
「あ、さっき主人公達がお喋りしてた場所よ、あそこで話しましょうよ」
彼女の指差す先、てか指綺麗だな、普通にパクつきたくなるほどほっそりしてて艶やか、手触りが良さそうで柔らかそう。
「ああそうだな、あそこなんてけっこう話す分には良さそうじゃないか、いこうぜぇ!」
俺は邪念を捨てて、自分からその喫茶店? ぽいところに足を踏み入れる。
「さて、いくらでも、そうね、わたしが最も傷つき、プライドとかを手折られて、屈辱的で辱められるような罵倒してもらいましょうか、もし満足させられなかったら調教、以上スタート」
く・そ・が。
まあいい、今ココは喫茶店内。
お洒落な雰囲気と大人っぽいハードでボイルドな、そんな薄暗くも適度な照明と店内家具とかで彩るそういう典型的なバーだ。
そんな場所で二人、一つの机を占領してお互いにソファーに座って向かい合っている、そして話す内容がそれかよ、暇人か無駄な事大好きな人かよ。
「グルーミングしましょう、やっぱりわたし達にはそういう交流が欠けている」
「てか乙女ゲーってどうするんだ? もうやーめたか?」
「もう、わたしと貴方のこの会話が、乙女ゲーみたいなものでしょ。貴方、今この場所で、この時だけは、乙女ゲーのプリンス? みたいにわたしに対して振舞って良いわよ、許可する」
てか乙女ゲーの最中、シャルを罵倒するのが楽しすぎてトランスしていた俺は配信してた事を忘れていた。
偶にはコメント見て相手をしたほうが良いか?
「なんだこのバカップルは」「二人だけで楽しみやがって、視聴者をもっと相手しろ」「別にいいんじゃね? こいつらの会話を拝聴するだけでも十分楽しめるし」「イツキ、シャルちゃんをこれ以上罵倒するなら後ろから3す」「おいおい、お前らの関係まえから思っていたけど歪すぎワロリン」「おおーいいぞぉーこれぇー」「なんだこの配信、ゲーム配信ですかぁ?」「雑談だよ」「ゲーム内で雑談って新しいのか?」「前からある、マイクラとかその典型」「バイオでもそういうの見たぞ」「おいイツキ、シャルちゃんを罵って泣かしてくれ、偶には泣き顔が見たい」
おーお、偶に見ると、今の俺達をこいつら視点で客観視できていいな、面白いし、なかなか得られるものがあるんじゃないかぁ!
よし、なんか別にこいつらを主要に相手にしなくても良さそう、シャルとはなす事に集中すっかね。
「何言えば良いんだ?」
「自分で考えなさいよ、わたしを惨めにすれば貴方の勝ち、できなければ貴方がわたしに調教される、つまり貴方の負け、さあ始めましょう」
「おい、お前って雑魚だよな、簡単に精神失調するんだからな」
「まあ、否定はしないわよ、でも貴方よりほとんど全ての面で勝ってるわよ、能力的に」
「生きながら死んでるようなお前に、能力的に負けてても意味ねえよ、俺が全ての面で勝ってるようなもんだろ」
「それこそ意味ないでしょ、だって貴方って根本的にわたしの愛の奴隷だし」
「ゴミクズ以下のカスが、勝手に決め付けんな、お前なんてあいつの代わりだ」
「うぅっ」
やば、泣いた、たった一言で泣いた。
シャルにとってこの件はタブーに近い、だからこそ流れで言ってみたんだが。
「お、おい」
「うぅぅ、凄くいい、ぐぅすぅ、そんな感じでどこまでも追い詰めて、んふ、貴方に傷つけられたい、はぁはぁ、どこまでも、んはぁ」
ちょ、着いてけんぞ、面白くない流れだ、軌道修正しよう。
「まてまて、そんなドロドロした展開、俺楽しくないんだが」
「そうでしょうよ、クソシナリオだもの」
彼女は嘘泣きをやめて、平素のツンとしたすました顔になる。
なんかその様変わりは狐に摘まれたような気分にさせられ、なんだか手玉に取られているような気分にさせられる。
「それじゃ、お前はこれからどんな神シナリオを用意してんだ」
「貴方が考えて、自分で全て演出したらいくらシナリオが良くても面白みに欠けるわ」
そうやってダラけた風にして全部他人任せ、自分は何もしません的態度でこちらを一途に見始める。
「今日今、ここであった事を帰って小説媒体にして。そうして神な作品ができるくらいの情報を創造しなさい、イメージ的にはそんな感じで」
「なんだそれ、現実から情報を取得するんじゃなくて、まるで情報から現実を擬似的に創造して取得する、それがお前の目的で楽しみみたいじゃないか」
「ええ、ここで貴方とあった事全てが、そういうネタになるの、最高のネタを作って頂戴な」
カオスな話題を展開する。
小説とは、というよりも原語媒体で娯楽情報を創造するならだ、だいたいにおいて現実ではありえない奇跡的なほど面白い状況を想定し想像するものだ。
だのに、こいつは現実であった事をノンフィクションで小説にする事に拘る傾向にある、その方がリアリティや臨場感が違うとかなんとか。
まあ確かにそうだが、それでは表現の幅が圧倒的に制限されるだろうと俺は思うんだがね。
「もう、いろいろと面倒だ、俺よりも小説って媒体の創造力の高い、お前の技術力を盗む、そういう俺にとって有益な話しをしようぜ」
「そういう講座ってテイで物語を一つ作れるわね、はい採用、それで今回は雑談しましょう」
「そんな適当でいいんかい、お前ってホントその場のノリで全て決めてる奴みたいだ」
「当然でしょう、所詮何をした所で、無限大という単位の娯楽を取得することはできない、だったら質より量で、なんでもかんでも取りあえず、最低限面白そうな事をやりまくる、それが最高の人生経験、精神年齢みたいなものの積み重ね方よ」
あれ? もう小説の最高の書き方講座みたいなの始まってる?
こんな感じで自然に何か含蓄っぽいものが含まれる、そんな話しを前振りも後付け的説明もなく始めるのはいつもの事だが。
「無限大ってそもそも神じゃないんだから無理だっての、それなりの娯楽の強度で我慢して、堅実に妥協して日々を精一杯生きるべきだと思うがね」
「そんな誰でもわかること、今さら説明しないで、文章なんだから、貴方の愚昧な台詞で埋まったら目も当てられない、すこしでも有意義な台詞を吐きなさい、貴方分かってる? 貴方のトークには質や面白さが求められてるの」
お前のそのメタなトークはいいんかと。
それにトークに質や面白さが前提からして求められるとか、超ハードルも上がり息も詰まる、そんな環境でどうやってそれを実行するのか、難易度が一段階お前の所為で上がってんじゃねーか。
「ああわかったよ、それで、小説って話がとりあえずしたいんだよ」
「ええそうでしょうね、まあその流れで展開で、今回の大筋を決定し、何か有益な知識を確立し創造する事を定めます」
なんだ、ちょ、そんな語り調でいいのか、お前が一番変に意識して可笑しくなってるんじゃ、これって自爆って奴ですかぁ?
「まあいい、小説の極意をシャルさんどうぞ」
「ええまかせろいぃ、えと、そうね。現実で体験できない、これをすれば自分は大きく変われる、そんな現実を情報として効果的に最大限の娯楽として創造する、それによって現実から情報ではなく、情報から現実を創造するように、何かそういった感じで全力で書くのが良いのよ」
「ふむ、それじゃ俺が書いてる小説について何かアドバイスとか」
彼女は苦虫噛み潰したような顔になる、難しい質問だったろうかね、楽勝にこのくらい答えられるだろうに、って勝手に考えてる俺は我が侭ってか。
「貴方の書いてる小説は、正直書く必要をあまり認められない。その程度、現実で普通に体験できる程度の情報強度、もっと高次元の情報強度でなくては、現実を生きる以上に、小説という情報の世界を生きる有意義性が不足する、つまり書く意味がないって事、そういうあれこれを常に意識して、貴方のプレイする現実に打ち勝つ、そんなゲームと考えて書くのも良いと思うのだわ」
「なるほどね、言ってる事は何となく分かるぞ、つまりもっと面白いモノを書けと、純粋には行き着くわけだ、でもそれを効果的に指摘してくれた感じだ、少なくとも俺にとってはサンキュな」
「礼には及ばない、貴方もわたしを見習って、何かすこしでも有意義な、知的創造の場を確立し、高次元に情報を創造できるようになりなさい。これは一生の技術力になるからね、日々高めていけば最終的な生産物の総量はかなりのもの。つまり、自分の中に魅力的な世界観みたいなあれこれ、それを作れって事、よく世界観が凄いとか、様々な娯楽作品で聞くでしょ? そういうものを持つのが良いの。男には自分の世界がひとつくらい、確固としてあった方が傍から見て凄く魅力的に移るでしょうしね」
うん、こいつと話していると何か、様々な過去に一回くらい考えていた有意義なそういうこと、楽しみながら復習できてる感じで良いな、無駄でもなんでもなく得るものが確かにあると思えるのだ。
「そういえば世界観、世界観って。よく耳にタコができるくらい聴くんだが、具体的には何だと思う?」
「自分でまずは考えなさい、でも始めにわたしから話しておきましょう、その後あなたの番」
そこで一呼吸おく、メッチャ長文はなしてますからね、その気遣い助かりますよ。
脳がパンクして情報処理が追いつかなくなると、途端に疲労の蓄積度が加速度的に増しますからね、その点シャルは心得ていてくれているのだろうか?
「そうね主要なものとして、キャラクター、その後に世界やそれを構成する諸要素、設定とか歴史とかそのような情報、あと曖昧だけど、確実に技術体系化できる人間の思考回路に基づく、その物語世界?みたいなのの、ノリとかテンションとか勢い、物語の確固とした雰囲気や空気感ね。これらがわたし達の実際に生きる現実に近いと、またはその延長線上、拡大した延長線上、そこにあると現実とわたし達が認識しやすく、近似し相似する世界としてリアリティや現実性現実味、臨場感とかとも解釈できる、そういう娯楽の一要素が強度的に向上するわね。だからその現実に限りなく近いパーセンテージを維持し、できる限り上げるのが重要ともいえる」
ふん、世界観の説明からそれたが、何か重要な事を説明してくれている気がする。
「それじゃファンタジーとかってのは、現実味やリアリティー、それらの基づく臨場感とか現実性がないから、あんま良くないのか?」
「ものによるでしょ、例えば、魔法とかってあるでしょ? あれが何の説明もなくいきなり手から出てくるのと、何かしら理由が付けられて、それに加えて魔法が出てきても可笑しくないと認識できる、典型的なそういう世界観で現代とは違う状況なら、それは逆にリアリティーが出てくるともいえる。つまりはわたし達が現実と納得できるか錯覚できるほど、面白かったり説得力、言い換えて何かしら現実性や現実味、リアリティーや臨場感のある描写や説明とか、そういうなんれかがあれば根本的にはどうでもいいのよ、そういう諸要素はね。ファンタジー的なあれこれ全てが駄目ってわけじゃない、むしろそれを制限すると途端に現実的なモノしか書けなくなる、それってハッキリ言って最低限一ランクは娯楽の質を下げるわ、特に非現実的なあれこれを描写するのに特化した小説媒体ならね。他の娯楽媒体に唯一確実に勝る利点、どんなに非現実的で再現が困難、映像化とかが難しい事象や現象、世界のありさまとかでも、まったくのゼロ予算で情報としては創造できる、そんな現実の最小単位の情報としての言語、その原点的原典、だからこその表現の幅こそが重要、それこそ何でもありの無限大に設定したほうが、ある意味は良いかもね」
ふーむ、確かに、小説って現実じゃありえない規模のあれこれや、架空戦記とかを容易に想像し創造できるからな。
よく主人公がチートで大暴れしたりって、そんな無茶な設定も無理矢理描写して許容できるだけの、娯楽媒体としての許容量の広さ幅等々が、根本的に小説という媒体にあった、とかそういう話かね。
「それじゃ試みに聞くが、ファンタジー要素とリアリティー?現実感や臨場感?現実味を保つ為に、お前はシャルはなにか具体的に心がけたりやったりしてる事ってあるか?」
「もちろん当然、無限に近い技術体系を所持してるからね、すこし教えてあげましょう」
まるで大上段から切り込むように傲慢に接してくるなさっきから、偉そうに、とは言えんな。
俺と比べたらこいつはある意味優秀すぎる、少なくともそういう設定と見ることが出来るくらいには、いろいろと俺から見ての実績もあるし。
「まずねー、使い古された設定や世界観等々は、自分自身を含めて高度に情報として創造しやすくイメージや情景も誰もが想像し易い、まあ最終的には自分だけでもそれが出来れば、迫真的書き方ができるから別にあまり深く考えなくてもいいんだけどね。実際に自分が現実で体験した事って凄くリアルに臨場感や迫真を持って書けるでしょ? そういうこと」
「うんうん、それは常に考慮に入れておきたいことだね、それでその他には何か?」
「ファンタジー要素を全て受け皿として許容できる、そういう無限大に自由な世界観、全てを統合できるくらいの規模やスケールの大きい、なにかそのような自分の中の現実や大きな設定観みたいなもの、そういうのを自分の中だけでも確立して持つと、全てのファンタジー的物語を現実的な尺度視点、立場から、眺めることができるようになる」
なるほど現実や情報としての現実を、最大限脳内補完して、さまざまな物語における非現実とかを許容して、納得したり現実として最大限錯覚する、そういう為に必要なそれら、その説明だろうな、これは。
「そうだね、そりゃ重要だ、それで、その受け皿的世界観とかを、俺としちゃ具体的には説明して欲しいところだが、シャルは何か具体的には持ってるのか?」
「持ってるわよ、それも最上位の、上位互換がこれから先、絶対に見つからない程度には確立し次元性の高い奴をね」
ほお、ならあれだろうか? シャルが執筆している物語の根底もだいたいその世界観が占めて基づく形だし。
「全てのファンタジーは、無限大に発達した科学技術と、人の無限大の可能性を秘める脳の働きに基づく想像力、それらによって発生した現実の物理法則を越えた事象や現象である、そういう解釈が一番分かり良いと思うのよ」
「それはわかる、けどそれらを具体的に現実という場に表現する、何か根幹的な世界のありようは具体的に説明できないか?」
これは難しい質問かね、てかこれはシャルの書く小説でも読めといわれるやもしれん。
だけどここで本人の口から、何か更なる発展的内容も含めてお教えしていただきたいと思ったのだ。
「そうね、あなたって夢は見る?」
「見るけど、それが何か?」
「夢って凄いわよね、わたしって俗にいう夢のプロなんだけど、幼少期からそういう特殊な訓練を受けてたのよ、まあ親から徹底的に仕込まれたからね。それでなんだけど、夢においては私はほとんどなんでもできる、明晰夢のレベルで空を飛べたり、既存の知識に基づくものなら100%の再現度で、夢世界で描写し作画崩れのない状態で見れたりもする、そして未知の世界も想像力の許す限りで無理矢理その場で即製したかのように、いろいろと楽しむことが出来る、これって凄いでしょ? 無限の可能性感じちゃわない?」
「おお、それは俺も思うところだぜぇ!昨日なんてヤバイ夢見たんだぜぇ~!例えばなぁ~」
「ちょっとストップ、その話はあとでたっぷりじっくり聞かせていただきます、話が大幅にそれるから今は黙っていて。そう夢ってのは凄い、人間の想像力が最大限拡張される場だと、わたしなんかは思っているを通り越して確信の領域で信じ信仰している、だって日々毎夜、そのような事を夢を見るという実際的な経験で自覚させられているのですから」
ここからどのように話が発展するのだろうか? 確か世界観がどうとか、そういう話じゃなかっただろうか? うーむ。
「話しを先取りして予測するとだ、つまり、その人間の無限に近い想像力と、将来的な科学技術、特に脳関連のあれこれその発達によって、人間の現実は無限大に拡張する、そういう設定によって全てのファンタジーを現実感のある、リアリティーや現実味、臨場感や迫真のあるものにするって、そういう試みの話しをしているのかね? そういう設定で未来像なら、それらのエスエフ世界は現実の延長線上、または現実の拡張した果ての未来の像として、多少なりとも現実的なものとして確かに感じられそうだ」
彼女はちょっと難しそうな顔をする、頭の中では全ての答えを黄金比の整合性で持っているのだろうが、俺が理解できるレベルにする為の処理活動、それが難航しているのかもしれない。
「それもそうなんだけどね、でもそうやって全てのファンタジーが世界に現実に全て流出した、そんな世界を、果たして人間はリアルなものとして感じられる? 無理でしょうね。だからわたしが思うに、自由すぎるなんでもありな世界と、そうでない世界、その二つの徹底的な棲み分けによって、わたしは全てのファンタジーを一つの世界として認識できる場で内包する、最大限リアリティーや現実性現実味、それら諸要素の娯楽性が最大化し、臨場感や迫真が出る、そのようなあり方を模索し、ついに自己の中で完全に確立し完成させた」
「おお、それが例の統合的世界観とか、または、実際にこの世界にある幻蝶蚊帳とかの科学技術やシステム、それらの発展系としてのお前の物語の世界観なのか? 具体的に今ココで教えて欲しいところだな、お前の物語のネタバレになりそうだが、俺はそういうの気にせず読めるし、頼む」
彼女は俺の理解力の速さに驚きでもしたか、目を丸くしたようにビックリしている。
「まあそうね、その通りでそんな感じ。今世の奇跡の体現であるそれら、一般的に幻蝶蚊帳とか、人間の脳の無限の可能性を娯楽に結びつけ完成させた全部。それが基本概念であり、比較的多くの人々に理解されやすいので、わたしの場合はそれにこじつけた形で世界を説明して納得させ錯覚させる、その手法の最上位の理念はそこに集約されていると言っても過言ではないでしょう」
まあそうだろうがよ、それこそがファンタジーを全て現実っぽく見せる、そういうのに特化してる媒体なのは俺も知ってるし、この世界に生きる人間なら誰もが知り、縋って、もう一つの現実、セカンドワールドとして日々生きているわけでもあるしな。
「それら人々の統合的無意識を集合させ、誰もが抵抗感を最小限にして受け入れられる、最終的に生み出され、そしてこれから先も生み出され続け最適化され高次元化し続ける、そういう普遍的最上位世界、それが非現実を全て一手に担当する世界領域。そして現実を全て一手に担当するのがここ、今私たちが存在する世界領域ってわけ。この二つが混在すれば世界は混沌として分けわからなくなって、それじゃー流石に受け入れるのが困難になる、限りなく最大限現実的な世界と、限りなく最大限非現実的な世界、これは分け合う事で始めて存在が確立される分類の現実でしょう。無限大の矛盾的現実や世界を内包するには、やはりこの手法が一番だと思うのよ」
うむうむ、確かに幻蝶蚊帳の世界がこの世界に乱入したり介入する、考えただけで世界が混沌とカオスになるのは目に見えている。
現実性とかリアリティーの話しを別にしても、そんな世界は俺自身がそもそも面白くないと感じるわけだし、分けるのが娯楽の強度、次元って視点からも最大解、正しい解のように思える。
「そして無限大の矛盾的世界を交互に行き交い、そして認識し実際に生きる、俺達って存在の娯楽性が、キャラクター性が最大限生かされて個性としても一番光り輝く方法論って感じか? 限りなく現実的な世界に生きながらも、限りなく現実性のある設定に基づく、それら限りなく非現実的な世界を生きる、俺たちの存在がより想像力を働かせられる娯楽的な情報として高次元になり続ける、それらを物語に反映させ、更にご都合主義的に拡張させ何か進展させたのが、お前の今作ってる物語だろ? その拡張させた部分を聞いてみたいんだがね」
彼女は「そうね、最初からその点も聞きたいと言っていたわね、ちょっと待って」とだけ言って、すこし考えているようだ。
俺はVRゲームのしかも乙女ゲーの世界で、なんて場違いな話しをしているのか、とか思っていた。
でもまあいいのだ、何でもありだろこういうのは、話したい時に最もはなすべき事をはなす、それが最善だと思うからだ。
「うーんなんて表現したらいいのかしらね。つまりよ、あちらの世界からしたらね、こっちの世界って別に存在を絶対的に支える領域じゃないのよ、少なくともわたしの作る物語ではそういう事になっているし、そもそもそういう理解じゃないと全てに説明がつかないって言うかぁ、あぁー、これだから難しいのよ物語とか世界観とかいろいろ、そういうのを高度に確立させるのってぇ!!」
そう言っていきなり、店内の床でジタバタ魚のように暴れだす彼女。
フラストレイションが溜まり過ぎるとおきる、そんな発作みたいな病気だ、生暖かく見守ってやるのが大事だ、他人の振りして違うところを見ておく。
しかしいつまで経っても復帰しない、ずっと陸に打ち上げられた魚のようにジタンバタンを繰り返す。
ちょ、いい加減心配に思えるほど、彼女は床でジタバタを繰り返す、そのあまりに狂気的な行動に俺は焦りの様なモノすら覚えてきた。
五分いや十分だろうか、途方もなく感じた彼女のありさまは唐突に終わりを告げた。
「はぁーはぁーはぁはぁ、ふぅ、スッキリした。やっぱりどうにもこうにも世の中の不満とか不条理とか、不合理や理不尽、そういうのが溜まりに溜まった時は、あんな感じで子供のような動作をして、羞恥心と共に体力も全て無くすような事をするのが一番だわ、いまのわたしは最大級の賢者モードになっているわ、何か話すなら最良の状態よ」
はあ、そうすっか、なんて自由気侭でフリーダムな何か発散方法だ、俺もある意味見習いたいところだ、彼女と同じ事をするわけでもないがなもちろん。
「あなた分かってる? こういう説明って凄く疲れるの、同時に山に登るみたいに凄く楽しいけど、疲れる事には変わりがない、でも疲れるって凄く楽しいの、矛盾してるけどね、疲れるって事は凄く大事なの、わたし自身なに言ってるのか分からなくなってきたけど、そもそもが疲れれること自体が大事って事を、あなたのような馬鹿には凄くすごぉーく伝えたいの、貴方いつも限界まで疲れるように過ごしてる?」
「ふん、当然だな、人生疲れてこそだろ限界まで、それでこそ筋肉のように、体力的にも精神的に知力とか様々なそういう人間的力の、それら能力の上限値が上がるんだからな、むしろそれが唯一無二で最短最速の法方だろ? 一度限りの人生なんだ、俺は全力全開で全てを持って全ての手法で最善最良を尽くし続けるって決めてんだ、それが俺のゲームプレイスタイルでもある、人生って大き過ぎるそして自由度のたっか過ぎる、それこそ無限大って思えるそんな場所でも、俺はこれを貫き通す所存だぜ」
彼女はどうだろうか? もちろん俺に近い、いやそれ以上に突き詰め極めたような思想を持ってるんだろう。
俺からして空恐ろしいほど、真剣に全力にこの人生を生き続け、現在最強や無敵と言えそうなレベルに実際にあるのだ、当然だなそれは。
「何クソが、わかってるじゃないの、でも見直したりはしません、ぜったいに、だってそんなご立派な事いっても貴方、わたしの足元にも及ばない、大して価値を感じられない人間存在だもの。せいぜいそういう志しを堅持し続け、すこしでもわたしの階層に近づけるように最大限の努力を注入しなさい、でもそれでもわたしに追いつく、それこそ追い抜くなんて100%の不可能ごとだけどね、だってわたしって昔から口を酸っぱくして言ってるけど、貴方にとっては上位存在だもの、貴方のレベル上限99がわたしにとっての1レベル、絶対に叶わないんだから、貴方、わたしに対して絶対に偉そうな態度取らない事、いいわね?」
おいおい、今さら、てか今そんな事を言う必要があったのかよ、たく。
「ええ、ええ、シャル様には一切逆らいません。てかそろそろ話しを戻してくれよ、このままじゃいつも通りの流れがずっと続いちまう気すらしてくらぁ」
「そうでしょうね、私にとってはそれでもいいけど、貴方にとっては私の中に内包される素晴らしき世界を知りたいのでしょう、いいわよ、全部といわず、その先の展望展開、終局への道すがらの道程すら教えてあげましょう」
「おお、掛かって来いやこらぁ」
俺は個人的に気合を入れるのと、さっきからなんか悪口チックにこちらを罵る彼女に対する当て付けで大きな声で叫ぶように、だが声量は普通のボリュームで言う。
「まずそうね、あっちの世界はあっちの世界で確立してるのよ」
「それは可笑しいだろ、あっちの世界はこっちの世界の幻蝶蚊帳システム、こっちの物理的な科学技術や、それこそ無限大のデータ容量を誇る、こっちの世界に物質的存在の基板が在るんだぜぇ、その理屈は通らんだろ、どう考えたところで」
「でもそうじゃないの、こっちの世界はあっちの世界にとって、幻蝶蚊帳で観測する為の設備を整えただけに見えている、実際そうだし、ってことに少なくともわたしの作る物語の世界はそういう事になっているの」
「ほーお、つまりだ、幻蝶蚊帳によって俺達がただ向こうの世界を観測できる様になっただけ、別にこっちの世界に存在の基盤があるわけではない、そういう事なのか?」
「ええそう、実際ね、実はこの現実、リアルって話よ、でも、幻蝶蚊帳にはそういう可能性がある。人間の集合的無意識によって、その脳内空き領域の分散コンピューティング的手法で確立したあの世界、実はただの平行世界、それも整合性の取れた至上の黄金比で存在する娯楽世界、それを覗き見るため、そういう感じなのかもしれない、そういう可能性は否定できない。だって向こうの世界に干渉する方法自体がそれをある意味物語っているでしょう?」
「ああぁ? 確か向こうの時空にいる観測者、こっちの世界にいる同位的同一的存在との精神感応、観測者同士の心の共鳴、それによってこっちの世界の存在とあっちの世界の存在を引き合わせて、両方の世界に生きているような感覚にさせる例のアレだろ? だからこそ生活時間も二倍に感じられるほどの情報量を脳が受信するってわけでもあるしな、うむ、確かにこっちの世界は幻蝶蚊帳によって、向こうの世界を創造したのでなく、観測可能な領域にしただけっていう理論は多少は納得できそうだ」
この世界ではある意味常識的な話だ、だがその発想はなかったね、向こうの世界は実は独立して存在する世界領域だとは。
でも規模やスケール的にも光速の壁を突破できず、今だに太陽系のみに存在する既存の現実の世界よりも、向こうの世界の方が圧倒的に巨大であるのは確か。
どちらが上に存在するって話だけじゃ、こちらは圧倒的に向こうに劣るような感じがする。
だから存在の基盤が全てこちらにあって、あっちの世界はこちらに存在する人間の無限大の脳の想像力等々から発生し、科学技術と情報科学の奇跡とミックスして開闢した。
こちらに物理的全ての基盤がある第二世界と捉えるよりも、何かもっと先の、別時空に存在する世界であるって言われた方が納得できるのかもしれない。
そもそも人間の脳に、例えどれだけ無使用領域を集めて創造したとしても、あの世界の規模を平気な顔して想像し創造出来たとは、ちょっと昔から多少なりとも不信感や怪しいと感じる心があったのも事実だ。
「それで、向こうの世界はね、こっちの世界に存在の基盤がないからこそ、こっちの世界からの渡来者、つまり観測者ね、それらと対抗できるって話しになるの。現に今も幻蝶蚊帳には観測者ですら解明できない、そんな宇宙の謎や神秘、絶対の不可思議領域っぽい何かは、それこそ腐って捨てるほどあるの。だからこそ、わたし内の物語世界の設定では観測者と向こうの世界の、いわゆるこっちの世界で言われるところの上位NPC以上存在達は、観測者と攻防を繰り広げて、大立ち周りのどんでん返し、ファンタジー的な戦いを繰り広げているのよ。どう? これって全てのファンタジー世界を内包しつつも、限りなく最大限現実に近い、そういう世界に生きる存在達とか、あと現実世界とかを最大限内包した世界観とかいろいろそういったモノと言える感じじゃないかしら?」
うむ、確かに良く分からない所も多分にあるが、何か面白そうな事をしているって事は分かる。
「そうだな、なんか聞いてるだけでワクワクしてくる所もあるし、実際にシャルの書く物語を読んで、そして何か不可解があったりしたら聞きたいとも思うよ」
「不可解? そんなもの掃いて捨てるほどあるわ、でもそれでも、根本が魅力的で、最低限現実性を保ちつつも最大限非現実を内包する、そんな至上のファンタジーに人は無限大に魅入られる、そういうものなのよ」
それを締めにしたのか、彼女は満足そうに窓から外を見る。
まだ深夜だからか、外の景色も薄暗く、星はすこしくらいしかココからでは見れない。
でも何か、大きな情報を共有した気がする、そう彼女とだ。
まあ良い感じの交流にはなったのではないだろうか、俺が彼女とすこしでも仲良くして絆を深めたい、そういう絶対の意志に従うのならば。