CS‐カスタムスフィア‐青銅の吸血鬼と月と白と聖女の守護者
今日も魔界の夜は最高だ。
この趣を分かってない奴はドリームランドなんて、メルヘンで腐れた名称で呼ぶがな。
目の前の広大すぎて、最早人工の建築物とも思えない外装の魔城を見ながら思う事がそれだ。
全長とかどれくらいある? たぶん上に十キロメートル横に百キロメートルくらいあるんじゃねえか?
まあこの魔界を象徴するオブジェとして見りゃ悪かねぇえな。
夜の木々を移動しながら、陽気に飛び回っている、現在の状況。
後方から何か追いかけてくる気配を認識、次の瞬間には何か鋭利なモノが飛んできやがった、クソがあいつか。
俺が追いつくのを待つようにスピードを緩める、当然そいつも追いつき相対する。
目の前に現れたのは、平均的な身長で割と細身の銀髪、少女か少年かわからねえ、いつもの腐った表情を貼り付けてやがる。
「ベイブ、こんばんわ。今日も清清しいほど陽気だね、町は全体黒に染められ誰一人徘徊していない、そう見えてしまいそうだよ」
カスが。
こいつは広大な町で毎夜何してるかしらねえが、毎日徘徊者を襲っているのは知っている、偶に同じ事してる俺と出くわすんだからな。
「吸血鬼に夜あったんだ、からだの血液全部抜かれる覚悟はできてんだろうなぁ~?!ルナスよぉ~?」
「それはこっちの台詞だよベイブ、今日こそ君を殺してあげる為に僕は来たんだ」
そうやって見詰め合うこと数秒、魔界の方から混沌とした風が吹き流れてきて、辺りが黒よりも一層暗い黒に染まりやがる。
辺りを超感覚で探ると、何か青の幻想的な魔力が溢れてきてやがる、クソ、あいつがなんでここに来てんだ。
「今日は止めだ、お前もあいつが居る前で騒ぎは起こさない、そのつもりだろうがぁよ」
「まあね、しかたない。次の機会にまたやりあうとしよう」
そしてパタパタ飛んできた影、多少ロリで、更に長い青髪吸血鬼と言えばこの魔界でも数すくねえんじゃねえか?それとも唯一か?どっちでもいいか。
「ベイブぅ~~あーーーそーーーぼぉぉぉぉーーーー」
そんな甘いだけの砂糖水のような腐った声、いつ聞いても癪障る。
いますぐにこいつを殺してやりたいが、それは禁止されている、もちろん暗黙の了解でだ。
簡単に言うとこいつはこの世界の有力者だ、俺とルナスはこいつのお守りを強制的にやらされているってフザケタ与太系の話だろ、これは。
「うるせえんだよがきぃ!てめぇーは一人で孤独に遊んでりゃいいんだよぉ!」
そして俺はそれに従順でいるつもりもねぇ、こいつの保護者的存在によろしく頼むと言われちゃいるが、年中無休で心にゆとりがあるわけでもねぇ、今はコイツを邪険にしたい気分だ。
「ベイブ、君はこの子の親みたいなものだろ? 子供が親に否定される苦しみを、すこしは分かってやったらどうだい?」
この屑も何か変な色を瞳に宿し説教染みた事を吐きやがる。
大方自分が親に愛されず育ったんだろうよ、こいつの人格見てりゃわかろうもんだぜぇ。
「知ったことかよ、てめぇーの親を殺してやった俺に、そもそも言う事でもねーだろ」
そんな暇潰しにすらならねえ事してる内に、あいつがここまでパタパタ背中のちっこい羽を翻して到着する。
「ベイブぅ、寂しかったよ。なんで私を置いてどっか行っちゃうんだよ、私がその間どれだけ苦しい思いをしたか、わかっているのかぁ?」
目の前の青は全身から何か良くわからねえ不愉快を発しやがる、しったことかって何度言わせやがる、俺の前から消えろうざってぇえ。
「しるか、苦しめ寂しがれよ、てめぇーがノタレ死ねば俺の負担も減るしな」
俺はこの屑二人を残して飛び立とうとする、俺はもっと夜をただただ純粋に楽しみてーんだ。
そして馬鹿な獲物がいれば、血を全て抜き取って適当に楽しんで捨ててえぇんだ。
「待ってよ!!」
「僕もついて行っちゃおうかな」
ゴミが二人揃って併走しやがる、流石銀と青銅の種族でハーフ吸血鬼、多少本気出せばこのくらいへっちゃらかよ死に晒せ。
あの後結局こいつら二人を巻けずに、しかたなしに魔界の中心都市を歩く作業に移行する、飛び続けるのも楽じゃねーんだ、例えば肩とか凝るしな。
俺の目に映ってんのは、視界の端の方に追いやった肉塊覗けば建物や街路の周囲空間だけだ、人があんまいやがらねえ、まあ真夜だしな。
それにしてもこの、前から思っていたがなんなんだ? 魔界の中心は巨大な城や塔以外はけっこう普通で面白みにかけらぁ。
中世ヨーロッパやらその他の西洋文化が混ざり、それが近未来的なあれこれとハイブリットした町並みだ。
まあ雰囲気は悪かねえがな、なんとなく殺伐して鋭角的な緊張感を醸す、吸血鬼の存在する町っぽくて十分合格ラインかもな。
「ベイブぅ~なんかして遊ぼ? わたしちょっと詰まらないよ?」
「ルルちゃん、その遊びって殺し合いとかだったりする? だったら僕も参加したいな」
こいつらは俺にとってお荷物以下の汚物でしかねえ、さっさとどっかで巻けねえかなぁ~。
「ベイブぅ、、ぅぅ、ぅ」
餓鬼が何かの臨界越えたか泣き出した、まあもういいだろ。
「おいルナス、てめぇーはけえれよ、俺はコイツとちょっと遊ぶことに決めたんだ」
「なに? 僕は居ちゃ邪魔者って事?」
「たりめーだろ、男女の営みに割って入ろうとしてんじゃねーよ」
そう言うや、奴は「じゃーいいよ、勝手に乳繰り合ってれば!」と何処かに飛んでいった。
ほおぉ、奴も多少の空気くらい読めるようになったか。殺す事に変わりは一切ねえがな。
「おいルル、ついて来いや、その泣き顔に免じて、最高の快楽を味あわせてやるぜ」
その一言で泣き顔が笑顔に戻る、ホント欲しがりが、どうしようもない程依存してやがんなぁこれは。
ところ変わって、って言うほどじゃねえな、直ぐ傍にあったおんぼろ宿屋の一室だ。
「おいルル、お前は対価として何をよこすんだった?」
俺の言葉に部屋の雰囲気でも見てたか、視線を俺に向け直しよく分かってないすっとボケた顔、殴って目えさませたくなる顔だな。
こいつは基本ぼけっとした顔してやがる、でも青銅の種族言い換えて血に飢えた種族らしく狂気に陥ると真逆の性質となる。
いまは目の前の馬鹿面の通り、スイーツでも毎日食って頭溶かしてそうな顔してやがるってわけだ。
「対価って、今までわたしは渡してなかったぞ、ベイブは何か欲しかったのか?」
「まあな、何か俺が喜びそうなモノを渡すか、何かしろって事だよ」
毎回毎回めんどくせーんだ、こいつは中毒だからな、俺に付きまとい中毒症状の苦しみから出来る限り逃れられる様にしたいんだろがよ。
だが俺がそんな自分よりも大分下の餓鬼に、タダで使われるほど優しくないって訳だ、何か対価をよこせって話だ。
「キス?とか? それとももっと凄い事、するの?」
「馬鹿が、誰が餓鬼とそういう事したがるんだ、足りない頭で説明するまでもなく気づけよ」
困惑の色を濃くする瞳、もう強硬手段で無理矢理もっと歪めるか? でもそりゃ流石に上にバレたら面倒なんじゃねーか?
「おらぁ!さっさと考えろや!!」
「ひぃ、わ、わかったよベイブ、だからそんな、乱暴な言い方はやめてよ」
俺が痺れを切らしたのを装い、恫喝紛いに威圧する。
簡単に涙を滲ませ、必死で俺に媚びへつらう為の算段を思考する少女。
まあ悪くねーな、こいつは見た目も虐め甲斐のありそうな面だ、体型も触ったら折れそうって程じゃないが小柄で多少の肉付き、適度に虐めてひいひい言わせる分には最適だ。
さて、夜を邪魔された分は、こいつをイビリ倒しトラウマ植えつける作業で晴らすか。
それから数時間たったか?
目の前の少女は過呼吸繰り返して嗚咽を漏らして泣いてやがる、愉快な光景だぜ、ほんとな。
「おいこらぁ、どうしたんだルルちゃんよ、餓鬼はやっぱ精神がひょろいからもう大人には付き合えませんってか?」
「ぅぅ、、ぐぅ、、、ひぃ、、、ひぃ、、、馬鹿ぁ、、ベイブの馬鹿ぁ」
涙を両手で拭いながら、恥ずかしい言葉しりとりで詰められ盛大にトラウマを背負わされた哀れな少女、けっさくだな面白れえ。
「、、、、、でも、、楽しかったよ、ベイブ」
「くだらねえ、お前はやっぱドMだったかよ、くそぉ女とか言われて喜ぶ被虐趣味はいらねえよ」
俺は少女の内心を知り途端に醒める、くそがぁ。
やっぱもっとディープな奴じゃないと、もうこいつは楽しむ域に達したらしい、刺激はだんだんと弱まりストレスから快楽に変わるってか。
「しょうがねえ、それじゃ、そろそろアレするか」
「うぅ、、本当にするの? いまここで?」
「あたりまえだ、だいたいどこでも同じだろ」
何を恥ずかしがってんだコイツは、確かに餓鬼には刺激が強いか知らんが喜んで受けるべきだろ普通。
「それじゃいくぜ」
「う、うん、やさしくおねがっつつうう!!!」
言葉を待たずに突き入れる。
「はぁあああ!あっあああぁああ!」
恍惚とした表情、あまりの快楽に悲鳴に近い叫び声、どれもこれも瑞々しい生命力に満ちてやがって良い感じじゃねえか。
「ベイブぅううう!イク!イっちゃうよ!!」
「さっさとイケよ、もう終ったけどよ」
そうやって行為を止める、目の前の少女は寸止めでもされたかのように、ヘナヘナだらしない姿を晒す。
いい様だな、あとで自分で慰めたりするんじゃねーかと思うと笑えんな。
これが中毒的行為、俺のキバでこいつに麻酔を打つ、血は別にいらねえ、ってか種族違いの血はさすがに俺でも飲めねえよ。
こんな事する羽目になったのにはちゃんと理由つーもんがある、誰も好き好んで餓鬼とこんなプレイしねーって話だ、少なくとも俺はな。
青銅の種族はさっきも話しに出したが血に飢えている、これは血液って意味もあるが闘争とかって意味合いも含む、血液見たさや浴びたさとか十人十色にさまざまだがな。
餓鬼は精神が貧弱だから、偶に何か意味分からんどうでもいい理由で発狂したりする、別に放置してもかまやしねーが、偶々俺の傍でそれが起こったから大変だ。
俺は気紛れで麻酔で鎮静させた、それで発狂は収まった。
だがその麻酔を投与する時の、痛覚を麻痺させるほどの快楽の虜になったこいつは、こうやってせがんでくる様になった。
他を当たれといいたいが、本人的には嫌らしい、理由はしらんがなぁ誰か他を当たれ。
目の前の少女は愛欲という娯楽と、そして性欲がミックスした典型例だ、もう俺に虜なんだろうよ。
まったくなんでこんな、はぁ、手荷物すら軽いと感じるお荷物持っちまったぜ。
「ベ、ベイブぅ、酷いよ、、、これじゃまた自分でやらないといけなくなる、、やだよぉ、、うぅ、、、ベイブでイキたいよ」
「餓鬼がイきたいイキたいマセた事言ってんじゃねえぇ、勝手に天国でも地獄になりでも行っとけグズがぁ!」
そう吐き捨ててやると、少女は行き場のない絶望と欲求不満でその場にくず折れてしくしく泣き出した。
マジで愉快な生物だな、一々反応が過敏だ、体も全体的に敏感だし体質的にいろいろ感じ易い性質か?
「うぅ、ベイブぅぅ、、、やっぱりわたしでは物足りなすぎて、その、まともに相手はしてくれないのかぁ? 飽きたらもうどっか行っちゃうのか?」
「ああ? 別にそうじゃねぇ、お前がお前でそんな風に馬鹿正直に良い反応してくれる内は相手してやる、まあまともかどうかは知らねーよ、今与えられるので満足してんだな」
「やだぁ、、こんな生殺しみたいなの、いやだよぉ、、、」
切なさと何か大きな苦しさで胸を押さえて泣き出す、見ていて気分が良くなる風景ってのは貴重だ。
だからコイツは俺にとって夜みたいに貴重だ、生きてる上でうざったいモノを帳消しにする為に有用なんだろうよ。
俺の中で生きる上で厄介な事の方が溢れたら、そんときゃ生きる意味がなくなるってモンだぜ、だからこういうのは大事にしないといけない、殺さずイかさずって訳だな。
餓鬼には悪いが、しばらくはこういう関係でいさせてもらうぜ。
それが嫌なら誘惑でもなんでもして俺を落としてみろって事だ、まあそんな事十年早いがな、それは十年後は分からねえって意味でもあるんだがな。




