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電波少女SPEC(取り扱い説明書) 


 クリステラは夢を見る。

 常人のそれとは、それは掛け離れている、離れ過ぎている。

 彼女の類稀な情報処理能力の、恩恵か弊害か、

 彼女は毎夜、頭の中でアニメを見るが如し、なのだ。


 クリステラ‐ラブコメ編-その1

 ~駆け抜ける夜と朝は対照的で両極端、二面性があり過ぎて誰だか分からない程度が丁度良くて刺激的、かもね☆

 

 だった、のだ、だいたい三十分アニメくらいだった今回。

 彼女は、その夢の内容を元に、なにかしらモチーフをアレンジして、文章を脳波タイピングしていた。


 クリステラの夜は長い間ずっと液晶モニターを見つめ続ける、これは言わば日課。ともすればルーチンワークとも。


 その見目は、長いスパーロングストレートの青髪青目。更に理知的で、どこまでも無表情クールな凛々しい表情。しかしそれを緩和させるか如しの、ちょっとタレめがちな目。顔つきは惚れ惚れするほど整っているのに、どこかキリっ!とはしてないのだ。


 性格はというと奇天烈極まる、としか言い表しようがないが。

 人並みの常識はあるのだが、常識を弁えなくて良いと本人が判断する時は、本当に頭のネジが外れたかのような。奇妙で摩訶不思議な思考による、突飛で奇抜な言動を平気な顔して。しかも純度100%の天然で行うのだ。


 また常に別世界に意識を飛ばしているのかと、疑いたくなるほどボンヤリと何時も四六時中している。 

 だが不思議なことに、彼女個人の嗜好に合った。気の向いた何かに熱中する時だけは、何かを限界まで極めた達人のような。とでも形容したくなるほどの鬼気迫る集中力、気迫を漲らせる事もままある。


 そんな彼女を他人は、常人では受信できない電波を常に感じているのさ。とか、ゲーム脳が極まっているな。似たものとして電波ゲーやバカゲーやクソゲーのやり過ぎだ。はたまた電波曲でも聴きすぎてるんじゃないのかな?等々。

そのほかいろいろ。彼女という存在の理解のし難さを、意味不明さの主要因を。彼女の持つ典型的な趣味に当てはめて定義付けようとする。


 しかし、クリステラはそんな典型的な思考の迷路に嵌って、愚者として存在しているわけではない。秩序だった思考に従い、様々な効率化の果て。もっとも娯楽的で楽しさに富んだ考え方をしているに過ぎない。

 現に、彼女クリステラはその様な電波な側面を除いて。ほとんど全ての側面は順当に評価されている。

 学業は飛び抜けて優秀、才色兼備と言って差し支えなく。更に学生としては評価されないかもしれないが。コンピュータ関連の技術も、既に一線越えた高いレベルにあり。また一部の人間からは、畏敬と尊敬の念を込められるほど。単純に幅広いジャンルのゲームの、特筆した腕も持っていたりする。


 今彼女がしているのは、「電波少女CSシリーズユーザー拡張シナリオ-nightcore編~無限に回(改)を重ね進化する、少女達のチラシの裏的SNSメモ帳!」

 とまあ、題名からして一度文面を読んだだけでは、内容を連想することの出来ない。キッパリスッキリ概要だけ説明すると、フリーソーシャルゲームだ。

 内容はスタンダードに。普通の学園を舞台にして学校生活を送る。といったそこまではありきたりだが、このゲームはダブルスタンダード的に普通の学園に、電波な生徒といった構図になっている。

 メジャー所からマイナー所の、電波特性を持ったヒロイン達と。主人公プレイヤーが交流する、というのが主目的で。特にゲームとしては、個性豊かで特徴的な、何百人単位のヒロインが売りで。製作陣のシチュエーション豊かでブレのない、確立した世界観に基づく、骨太なシナリオも評判である。


 この様な内容なので、ユーザーからは。複数ヒロイン同時並行攻略可能な読み物系ギャルゲー+ヒロインとの掛け合い。

 その中で、かなり頻繁に選択肢が出現するので。アクション的ゲーム要素も取りいれた、能動的セカンド学園ライフ・擬似体験ゲーム。と認知されている。


 全体的には、割とコアな内容ながらライト層も取っ付き易いゲームとなっている。また付け加えると、ネットやアニメや漫画等の、知名度の高いネタが、あまり著作権等を気にせず平然と使われていたりする。


 彼女は今、そんなゲームの本編ではなく。ユーザー拡張シナリオとして公開されている、本編を元にした二次創作のシナリオに取り掛かっている。

 本編とは違い、有名声優のフルサウンドではないものの。ユーザー特有のコアすぎる内容が、彼女のお気に召したらしく、最近は総プレイ時間およそ千時間以上と注釈の押された。この長期シナリオを、本編の合間にやっているのだ。


 そんな絶賛ゲームプレイ中の彼女の思考をすこし覗いてみよう、、、


(廃墟を好む少女、退廃的な世界を愛し。今は失われし過去の栄光と今を見つめる。どこまでもそういった人の営みを眺める事に価値を見出す。読書家で廃墟大好き、それだけではちょっと在り来たり。もっと何か付け足すなら、将来は好きな人と廃墟ライフ!に憧れる。そして、自分と同じ感性を持った、暗い陰のある、懐にナイフを隠し持ったかの様な、って勘違いされた主人公に空回りのアプローチを繰り返す、、、、、、、、

 1攻略、1アクセス以上、平行世界=虚空世界、貢献、意味深、1生命救済、神格級、プラスのモチベ情報、超長期的投資費用対効果限界値、創造、本気=真剣=できる限り限界=全力=至高プレイ状態、努力、人生ゲーム内アクションパートプレイ力、現在自己最大最適の100%=イコール真の限界に限りなく近い最大%、最小単位以上でも引き出し引き伸ばし出力し、必死に狂気的に、このゲーム世界現実を生き向き合いプレイできるようにする。、、、、)


 何か電波を受信されたと思う。どうやら今はゲームをプレイしているのではなく。彼女自ら投稿している、拡張シナリオの内容と。今後のゲームプレイに対するモチベーションの培養。哲学らしき事、をしていた、らしい。きっと彼女の中では全ての整合性がとれ、素晴らしい出力となって、現実に反映される思考なのであろう。


 こんな事をしながら、クリステラの夜は更けていく。

 寝ないのだろうか?本人的には明日学校で寝れば良いとか、考えていそうである。

 本人にその事に対して言及すれば、きっとこう返ってくるだろう。

「それが最も効率的だから、あと楽しい事の為ならしかたないよ」と。

 どこまでも、おのれの趣味のために生きたい彼女に、普遍的な道理は通じない。人生というゲームを最大限楽しむこと。そのただ一点に純真に、潔癖に生きる。彼女の座右の銘らしきモノがあるとすればそれだろう。



「、、、、あれ?何時の間にか寝てた」

 そんな人生というゲームのプレイヤーとして、全体的に見れば。十二分に優秀な彼女にも、万が一くらいの確立でミスをする時もある。今がその万が一の一の時だ。


 普段は絶対に携帯やら目覚まし等のアラームがなる。何重にも寝過ごしの対策を無駄にならない程度に、講じている彼女に死角はない。

 ただしかし、今回だけに限り、その全てが不発に終わった。携帯は机から落ちて、その衝撃で電池が外れた蓋から奇跡的にまろびでて。役立たずと化し、電源が切れている。

 目覚ましに限っては、このジャストのタイミングを見逃すかとばかりに。長期的周期で変えるべき電池の寿命が切れていた。

 クリステラは、「こんな珍しい、奇跡みたいなこともあるんだなー」と考え深げに浸りながら。携帯に外れた電池を差込み、ネットワークを復旧させつつ、今の時刻を確認してみた。

 外の日差しの強さから、危険ラインの時間を覚悟していたが。予想はある意味最悪に近い刻限を示していた。


「うん、8時20分、、、走れば間に合う、だけど、、、」

 彼女は若干の躊躇を感じずにはいられなかった。その場で地団駄踏んで、現状を嘆きゴロゴロ漫画のキャラみたいに転がりたいとも。

 しかし、時間が切羽詰っているので、そんなちょっと実際やったら面白いかも程度のこころみに時間を労してる暇はない。

 彼女の計算はこうだ、家から学校まで歩いて40分。自転車は彼女の主義に合わない。歩きながら外をうろちょろ眺めつつ、音楽(電波曲がほぼ)を聞きながら登校するのが好きなのだ。だからそもそも自転車はないので、だから歩くか走るかの選択肢に行き当たる。


 彼女の身体スペックは、日々何かと食生活から多岐にわたる節制をしてるのと。適度な運動とかで、かなり上質なモノをキープできているであろう。日常走った記憶はあまりないが。体育のあの感じからすると、40分を10分以内に縮める自信が彼女にはあった。

 しかし問題なのはその他の要素。彼女はいくら電波チックな乙女だからと言って。人並みの女の子らしさというプライドや信念まで、完全に捨てているわけではない。それら最低限の手入れをするだけでも10分かかるかどうか、これを置き捨てることはできない。

 学校にうかつな男子の様にギリギリで登校し。髪の毛もなにもかも、ちんちくりんな状態で現れて。本人も回りも笑って済ませられる、そんな感じではないのだ。羞恥心とかでもない、もっと根源的にどうしようもなく死守したい何かの為にも。そういう事は出来る限りできないし、避けるべきだと。彼女の底の何かがそう告げる。それは最近気になりだした彼女のせいかもしれない。


 ちょっと昔の彼女なら、多少の抵抗はあれど。遅刻1(いち)を付けられる。という明確な汚名と天秤に照らし合わせれば、その程度のこと。それこそ何とも思わなかったと言ってよかっただろうに。


「ヒルディアに、カッコ悪いところは見せたくないな、、」

 彼女の独白。難しい天秤である、どちらに傾くか危うい均衡で選択を迷わせる。しかし時間は一刻も待ってくれない、決断は早ければ早いほど良いというのに。

 そして彼女の中で決着がついた。

 つまり急いで準備を済ませ、尚且つ汗を掻き過ぎない程度に全力疾走。平然な顔で教室に到着というシナリオ。

 もし洗面所で時間を食いすぎたり、学校前で自分の見目を確認して。これはなんか色々と駄目だ、という状態なら。引き返して開き直った心持ちで登校すれば良いこと。全く問題ないではないか、と意識新たに長い髪を翻して自室を出る彼女であった。

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