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黒でハートの戦狂いの女王ヒロイン

 

 

 理想と現実は絶対に相容れない、私はそれを痛いほどに知っている。

 だから己の全てを100%捧げて、今現在己の認識できる限りの現実、全てを優先度の高いモノから順番に理想の状態に近づけたいのだ。


外宇宙的ラプラスの瞳から眺めた世界とそこに居る二人は、、、、

 それはただ騙し騙され殺し殺され続けるだけの空間、世界、、、、I`EDEN、、、私の理想郷とは常にそこにあり続ける”わたし”だったのだ


 致命的な危機が迫れば、どうしても死に物狂いで生きなければいけないだろうな。

 それでもそれの回避が不可能な事を、絶対の確信の域で悟ったとき、人は絶望するのだろう。

 こうやって全てを失い、真に絶望した人間は普通助からない、でも奇跡が起きて助かったらどうなる?

 一度全てを失い絶望し、奇跡により全てを得た希望、絶対の絶望と絶対の希望を胸に秘めたそいつは、最高の経験をした強者だろうな。

 現実にこういう経験をした奴は、お前の傍にいるか? そいつには目に見える現実全てが奇跡的に映るんだろうな、羨ましい限りだ。




 昨日、夜買い物に出歩いていたら、ふと後ろの方から何かが飛んできた、たぶん、頭に当たったのだと思う、

 痛いと思う瞬間すらなく、俺はその場に倒れ伏した。


 瞼が重い、体もなんとなく動きが鈍い気がする、てか全く動かないって、おい、この状態って可笑しくないか?

 「あら、目が覚めたのね」

 重い瞼を開いて目の前を見ると、そこには長い金髪を揺らす、青い瞳のちょい釣り目な感じの美女がいた。 いや、美女というのもどうだろうか、少女っぽさと言うかなんと言おうか、マセ餓鬼っぽい子供らしさがある。 いや悪い意味じゃなく良い意味で、不敵で挑戦的な若さを通り越した妙な無垢さ、突き抜けた無邪気さの様なモノを感じる。

 「今の自分の状態がわかるかしら? それともまだ混乱でもしてる? まあ私にとってはどっちでも別に良いことだけど」

 そんな事をつらつらと述べられ、漸く俺は目の前の女の顔以外に視線がいった、今の自分のこの状況。

 薄暗いが四角形と視認できる部屋、雑多な一目では見渡しきれない様々なモノが置かれた棚や箪笥の様な入れ物。そして簡素なベッドとそこに両手両足を完全に縛られている俺、ついでに目の前に美女がいる。

 俺が縛られていなければ、、なんとかこの目の前の美女が、今時奇特にも路地に倒れていた俺を家かどこかに運んで介抱してくれたと、そう考えられなくもない、そして更に俺に都合良く考えれば、家に運んで介抱したはいいが、知らない男と二人きり。目が覚めた瞬間俺が何をするかわからないと、危惧を抱いたこの女性は恐怖心から保険として俺を縛っておいた、、、

 とも考えられなくもない、相当に厳しい推測だが、今の状況を好意的に見たい俺はその僅かな希望的観測に従う事にした。

 「ああ、何となくだけど理解してる」

 「なら助かるわ、、でも本当かしら? 今から何されるか明瞭に推理できるほど、貴方、賢そうなタイプには見えないんだけど?」

 「なんだ? 俺はこれから何かされるのか? 特に体に異常は無いみたいなんだが」

 「それは良かった、これからの厳しい責め苦に耐えうる素晴らしい素質になんら異常は無いようで」

 「ん?? 待ってくれ、俺はこれから何をされるんだ?」

 「なんだ、やっぱり理解してないんじゃない、単刀直入に説明するから良く聞きなさい。貴方にはある特殊な素質がある、でもその素質は厳しい責め苦に耐え切った果てにしか開花しない、以上」

 「え?残念だけどあまり理解できない!もっと深く説明してくれないか!」

 「深くねー、つまりよ、貴方には私にとって役に立つ素質があって、それを私の手で効率的に開花させてやれば、私にとって有益な存在になり得るってわけ、わかった?」

 「本気か? 悪い冗談なら今のうちにやめてくれると有り難いんだけど、どうだ? あまり大事になっても困るのはそちらだ」

 「冗談でもなんでもないわ、全力を持って本気の本気、端から大事にするつもりだったから問題ない」

 「これはどういった状況なんだ? 端的に説明してくれないか? 君の要求には最大限協力する、何でもすると言ってもいい」

 「貴方からそう言ってくれると都合がいいわ、特に私にとってね。要求は私に全身全霊を持って尽くすこと、期限は死ぬまでね」

 「そう言われて、素直に従えるほど下僕な体質ではないんだがなー、もうちょっと譲歩するつもりはないか? 無論この事は口外しない」

 「貴方、自分の状況を全く理解してないようね、私のやってる事も何もかも、自分の立場を理解させてあげる」

 そう言って、彼女は指の辺りに虹色の光を灯した、そしてそれを手近の花瓶の方に飛ばす。

 その虹色の光に包まれた花瓶は次の瞬間何も残さず無くなっていた、手品やマジックの類では絶対にありえない現象が起こったのだ。

 「これの意味、分かるわよね? 上位魔法使いで全属性完全習得者で虹色の魔法光を操る存在。貴方の目の前には伝説級の魔術師がいるってこと」

 「そりゃ、知らないこともないが、、それでその伝説級の魔術師さんは俺になんの見込みがあるって言うんだ?」

 「さっきも言った、素晴らしい素質よ、私が欲しがるほどの伝説級のね」

 「そういう事か、で、どうすればいいんだ? 開花させるにはどうすればいいんだ?」

 「いきなり態度を変えちゃって、どうしたの? 突然の事態に混乱しすぎちゃった? 聞き分けが良すぎるわよ」

 「もういい、諦めたってことだ。あんたほどの手合いだ、今の俺じゃどうしようもない、

 何一つ何も出来なくなるほどにどうする事も出来ないって事は、説明されるまでもなく俺自身が理解した」

 「賢明ね、ただそれだけだけど。そう、そのとうり。貴方に出来ることは何もない、私に篭絡される、ただそれだけ。一つだけ聞きたいんだけど、、死のうとは思わない? もちろん貴方に死ぬ気がない事くらいは攫う前から知ってたんだけど、興味があるというか、ただ本人から直接聞き出すと面白いから質問してるんだけど、どうなの?自分から死にたくならないの?」

 「死にたくは、、今のところならないな、お前の俺に対してやろうとしてる事も、一応は憶測交じりに理解してるつもりだ。ただ拷問された挙句に死ぬならな、そりゃ死にたくもなる。その最中に助けが来るとかっていう僅かな希望の為に、多大な絶望に耐えようと思える様にはできてない、お前の目的が俺を苦しみ尽くす事とかなら、今すぐ死ぬくらいの度胸も理性もある。だがお前は最終的にはどんな形であれ俺を生かすつもりなんだろ?。だったらまだ絶望しきって、究極的に消極的な死に走る、色々と終わらせる為に自ら死のうと思うのは早いということだ」

 「そう、それが正解、最適解、無論後悔させるつもりもなければ、絶望させもしない、私が貴方を最大限に生かしてあげる。どうしようもなく生きたいんでしょ? わかるわその気持ち、痛いほどに共感同感できる、だから私の為に生きると誓ってくれれば。貴方が私に与えてくれる利益の分だけ、等価交換でしっかりと貴方にも納得できる報酬を与えると、他ならない私自身が今誓うわ」

 「そうか、その前に確認したいことがある、お前はこの全世界に対してどういう立場にあるんだ?」

 「もちろん正義よ、色々な言い表し方があるけどお好きなモノをどうぞ、秩序側とか善良とか? 根本的に自分以外の全てに対してメリットよりもデメリットの方を大きく与えてしまう存在ではないわね」

 「何か確固とした証拠なんかはあったりしないのか? できれば今提示できる様なモノが最良なんだが」

 「ふふ、ははっは!、、ご免なさい、ちょっと面白くて、ね、だってそうでしょう、くっくっふ、ふっははあはあは、うんうん、わかるわかる、わかるわ、だってそうじゃないとねえぇ? もしかしたら悪の側の人間に力技で服従させられちゃうかもしれないんだもんね、ふふ、まあ誰でもできれば綺麗な存在として、この世界に対して胸を張って生きたいというところかしらね、大丈夫大丈夫、私は正義の人だから、安心しなさい、ねえぇ?」

 「すまない、凄く嘘くさいんだが、何かそれには含みや理由があるのかい?」

 「もちろん大有りよ、私が予知のレベルで認識するところのある一線を越えて、貴方を失望させなければ、何を言っても貴方は希望に縋りついて、私を信じてしまうんだもんね、面白いわ人間の心理を弄ぶのって、まあ許してね、これは正義の側の人間だけど、こういう事も偶にはしてしまうってだけだから」

 「なるほど、俺が君を完全に見抜いて、悪の側に100%落とされるという現実を突きつけられて完全に失望しない限り、君は俺が、もしかしたら、そうでないかも知れぬと僅かな可能性や希望に縋って自ら命を絶つような事はないと思っているのか?」

 「そうそう、そういう事、所詮は偽善なのに、善の側に居座りたい人間の滑稽な姿を見るのが私の趣味なの、こういう毒舌も日々のいろいろ、鬱憤とかストレスが溜まってやってるだけだから許してよね」

 「君が伝説級の魔法使いというのは既に証明された真実だったな、なら常軌を逸した天才でも同時にある訳だ、そして俺は何かの凄い才能か? 力か? あるようだが、精神的に知能的には君に遠く及ばないのは認めざるを得ない、だったらこの会話にはどんな意味や価値、魅力や引き付けるモノが君にはあるんだ?君がボロを出さないのは確定的だ、俺にとっても話す事に決定的な意味はないんだよ、俺を哀れんで話してくれているのか? 君の本心が気になる、無駄を廃し効率を突き詰める理性がどういう根拠で俺と話すなんて生産性の薄い事をさせるんだ? 興味がある、教えてくれないか?」

 「今はね、嵐の前の静かな時なの、だから特にこれといってやらなきゃいけない事が無いの、つまり暇ってことよ、こういう暇な時の為に色々暗躍しなくちゃいけないのって、本当に意味というか価値があるのかしら?」

 「あると思っているんだろう?そうでなきゃその時間を得るために動かないだろう?」

 「そう、そして漸く僅かばかり手に入れたこの暇な時間を、これから長い付き合いになるかもしれない貴方と共有しようってこと、これってとっても素敵な事だと思わない? 多少なりとも貴方を特別視してしまうかもしれないわよ」

 「それは光栄だな、つまり君はこれからを見据えた快楽の為に俺を利用できないか現在進行形で研究模索中ってわけだな」

 「そうそう、話が早くてホント助かるわ、被検体が利口だと観測者は影響を与えやすくて助かるのよ」

 「それは俺が単純で秩序だった思考をしてる訳だが逆に、混沌とした思考には君は影響を与えにくいのか?」

 「もちろんね、私自身が複雑だったり混沌と感じるレベルの思考は当然読めない、より高次の存在って事だからね、でも間違っちゃいけない事は、馬鹿である事と混沌である事はイコールではないってこと、方向性が定まっていないって事は、馬鹿な本人から見ての事、客観的に見れば何も問題は無い、それなのに馬鹿な本人の視点からは世界は混沌に見える、混沌の視点を持つ存在が客観的には馬鹿にしか見えない、理解不能意味不明にはならないよ、低次元だから一定の法則性を見出して全てが読める、本人は自分の意思すら曖昧なのに、その曖昧さすら全てこちらからはお見通し、その曖昧さの結果どういう結果に結びつくのかも完全に読まれてしまう、自分自身を読めないのは読みきれないのは本人だけ、だから馬鹿って言うのかしらね」

 「完全に読みきられてしまう俺は、君から見て馬鹿って事かーなんだか悔しいところだな」

 「それは仕方ないでしょ、私から見たら全人類の99、999999%くらいは馬鹿になるんだし、客観的に見て、そうね、全人類平均値で貴方は偏差値87?くらいね、百兆人に一人くらい、十分じゃない、私には負けてるけど満足でしょ?」

 「いや満足しつつもまだ足りないと思うね、謙虚さと不屈の精神という矛盾を出来る限り抱えてこそ人は最大限輝くものだからね」

 「最大限輝いても私には劣るけど、何か?今どんな気持ち?まあ全て運が良ければ悪ければどうにでもなるしどうにもならないからね、本人には何も出来ることはないよ、努力の才能だってなんだって全ては運でどの程度の強度で総量で身につくかは決まってしまう、その本人の全ては生まれてから今までの全要素的状況と環境によって一から十まで一切の不確定要素なく、本人の介入する余地なく、全てが確定されてしまう、どれだけ恵まれているか、又は恵まれていないか、それだけで自分の全てが決まってしまう、ある意味そういう無上の理不尽、不条理、不合理で、ゲームとしては破綻、崩壊した、まるで一本道の絶対的に唯一無二に確定した物語、それを観測者として見ることしか出来ない、そういう世界で人間として生きているわけよ、こればっかりはどうにもならない避けようもない真実で現実、だから何をしたって無駄ってこと、現実をありのままに受け入れるしか人間に出来ることはないんだから、潔く全てを諦めなさい」

 「全部諦めないよ、逆に言えば全部諦めるって事を諦めたんだよ、妥協した末次善の選択が諦めないって考えしかないんだ」

 「そう、それでもいいけど、でも諦めた方がいいよ、私から見て、絶対に全部諦めた方が楽だと思うし」

 「楽がそのままイコール、本人にとっての幸せにはならないもんだよ、苦節を歩んでもそれ自体とその先にある何かの為にね」


  

 この二人の境界線を引いたのは誰? わたしとその他を区別する、認識主体のわたしは全てと解け合い一つになりたい、実体を持っているから不可能なの?

 でも無に変えっても認識主体・わたしを保てるの? 境界線を引かないという境界線を引いたわたしは、そもそも実体を保てないのだと思う、

 ならわたしはわたしと認識する、全てをどう解釈すればいいの? 実体のみがわたしなの?

 わたしはわたしのみが、わたしの実体だとは思いたくないから境界線を引かないことを決めたのに、

 今ある、私の認識する境界を越えてわたしを認識したいから、

 これはただのちっぽけで矮小な、他の誰よりも愛しいわたしを守りたいが為の、独善的で愚かな錯覚をしたいとか、そういう醜い理由からじゃないのに。

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