8‐最終的に戻ってくるところ、とは?
そんな感じでハイテンションになって疲れた俺達二人は。今また座ってぐったりし始めた。
だから夢を見ていたんだと思う。夢にまでシャルを見るなんて、どれだけ恋焦がれているんだか。
「ねえ、イツキって小説かいてるんだっけ?」
「うん?まあ一応ね」
「面白い?」
「書く内容によってはね。でも内容によっては一ミリも面白くない。他人と話すのとある意味一緒だね。シャルと話すのは無限に楽しいのに、他の人じゃ全然楽しくないのと同じ」
「私もよ、貴方と話してる事以外。この人生に楽しい事なんて一つもない。やっぱり最終的に、貴方とこうやって何かを徒然なるままに。話してるのが一番面白いし、落ち着くの。どうしてかしらね」
「やっぱ俺たちって愛し合っているのかな?」
「多分そうなんでしょうね。お互いがお互いの虜になってて、もうそれ以外何も面白いと感じなくなるほどに。高い幸福を知ったら、もう低次元のそれじゃ満足できなくなるみたいな」
「シャル?」
「うんどうしたの?」
「いや呼んでみただけだよ」
「うん、キッパリと気色悪いわ、そういうのは止めなさい」
「なんだか罵倒されたくなってきたから、罵倒して」
「嫌よ、なんで貴方が望む時に。そんな事しないといけないの」
「いつもは頼まれなくても罵倒するじゃないか?じゃあメンヘラっぽくなって」
「私がもっと、変に。可笑しくなってる所がみたいの?」
「そんな事は言ってないよ、ただそれはそれでいいと思う」
「はあ。貴方が死んでくれれば。私も死ねるのに。こういう風にメンヘラになればいいの?こういう姿がみたいの?それを見て貴方は安心する。つまりはそういう事なんでしょ?」
「否定はしないよ。シャルのそういう姿を見ると、頑張ろうとかやる気が出るんだ」
「完全に駄目男思考ね、致命的に依存してくれるような。そういう存在がいないと、生きていけない。そのレベルで必要とされ、愛されないと、生きている実感すら持てないのね。やっぱり貴方のような色々と致命的な存在には、私のような致命的なメンヘラが必要なのよ。お互いを支えあう為にもね」
「確かに、そうかもしれない。なんでこんなにも、シャルが居ないと不安になるか分からない」
「でも。貴方にはかよさんも居るのよね?私は第二候補なんでしょ」
「そういうのは、やめよう」
「都合の悪い事は全部それ。呆れるわ」
「もっと責めて欲しい、もっともっと責められた方が、楽だからさ」
「貴方、やっぱり気薄すぎるわ。存在も何もかも、どうしてそんなになってしまったの?」
「他人との関係が気薄すぎるからだよ、上辺だけの関係で。心の底から関らなかったから、心が空っぽでどうしようもないんだ。だからそれをシャルで埋めてよ」
「お生憎様。でも所詮それは、貴方の心に居る私でしかないの。貴方は永遠に他人とは関れない。そもそも私でいいの?」
「だから何度も肯定してる、この世界で。確固たる意志で生きてるシャルに。この心の隙間を埋めて欲しいだよ」
「貴方には沢山の人間関係がある。それら全てが貴方を満たしてるのよ。今更私の入り込む余地なんて、果たしてあるのかしら?」
「ある、ないなら。シャルの隙間を開拓するまでだよ」
「優しいのね、私の為に無限に尽くしなさいね。可愛がってあげるから」
「俺だって、シャルを猫可愛がってあげるよ」
「私をペット扱いする気?ふざけないでよ」
「シャルちゃん。僕のペットにしてあげるよ」
「気持ち悪い。もういや」
「そんな所も可愛いよ」
「それにしても、貴方キャラがぶれているわよ?貴方の根源座す。というより根源に座したい座させたい、理想の存在とは何?」
「理想の存在?」
「そう!それよ!貴方頭が馬鹿に成ってるわよ自覚なさい。私が全部教えてあげるから。」
「言ってる意味が。どういうこと」
「貴方が馬鹿になってる事を!全部教えてあげるって言ってるの」
「馬鹿に成ってないよ」
「馬鹿は自分が馬鹿であることにも気づけないんじゃないの」
「どうしてシャルが、そんな事をしてくれるんだ?」
「それはそうよ、貴方自覚してる?私という”キャラ”が貴方を助ければ、貴方は確かに私というキャラに対する愛情を増させる事になる。私は貴方の愛情が無限大に、出来る限り欲しい。これはハッキリとした、明瞭な関係性でしょう?」
「キャラとか、なんとか。言ってる意味が分からないぞ」
「適当にスルーしなさい」
「ああ、それでシャルは俺に恩を売りたいから助ける。そして俺を引っぱたいてでも、何とかしようとしてくれるって?」
「ええ、それが一番刺激的で。貴方の目を覚まさせる唯一の方法だからね。他の手法じゃ、刺激が足りなすぎて。貴方の頭は眠ったまま、私のこの良く通るキンキン声で、貴方の脳を揺さぶってやらなきゃいけないのよ。それ以外に貴方が目覚める法はない」
「なんでそこまでしてくれるの?」
「だってイツキ?あなたも私を。さっきの話よ?助けてくれたじゃない、助けられたら助ける。当然の心裏だと思わないのかしら?」
「うん、助けて欲しい。」
「だったら、私の声だけに耳を傾けなさい。そしてそれを足りない頭でもいい、全力で貴方の人生にとってプラスになるように。最大最適に解釈しなさい。難しい語句を使っていたとしても、それが最も情報価値を高めた。そういう圧縮し凝縮した形なんだから、それも含めて全部。私の言ってる事を理解するの、いいわかった?」
「嫌だよ、そんな事にへこへこ従うほど馬鹿じゃない。俺はシャルがメンヘラになって、どうにもならない。そういう展開以外認めない。客観的にも見ても、なんだかシャルの発言は誘導尋問みたいじゃないか?」
「なんだ、やっぱり。私がこういう際どい事言うと。やっぱり貴方の頭は活性化する。私のような、やっぱり際どいあざとい。そういうタイプの女の子が貴方やはりタイプなのよ。貴方ってこういう自覚ある?つまり小賢しい系女子が堪らなく好きなのよ、なぜだか私は知らないけどね。案外自分を導いてくれる、そういう存在を心の底から求めているからかもしれないわね。ああ。そういえば貴方、まえ私に本気のテンションで夢を語っていたわよね。絶対的な存在。無限大の存在になりたい。永遠で奇跡的な、そういう存在になりたいとか。そういった事をぺちゃくちゃぺちゃくちゃ。たぶん貴方の根源はアレね。貴方が最も望むのはそれ。だからそこに繋がっていそうな。貴方にとって真理って言うのかしら?絶対的に価値が感じられる上位存在。そんな雰囲気のある女の子じゃないと、やっぱり貴方は満たされない。最低最悪の存在。自分より上位存在を、それにしか絶対の価値を感じないって事はね。貴方が下位だと思う存在に、一切の価値を感じないって事なの。そりゃ心も貧しくなるわよ。だって貴方自体が絶対的な上位存在だと思う人以外には、一切の価値も魅力も、意味もカリスマ性も。なにもかも感じないんですもの。ある意味純潔で真っ直ぐで、純粋な生き方。でも人間としてみたら最悪でしょ。だってほぼ全人類を無価値としてるんですもの。醜いったりゃありゃしないわ、って見方も出来る。一面的にね。それが悪いかどうかは知らない。貴方がそういう価値観なのだからしょうがないとも。だからこそ貴方は気を付けなければいけない。なぜなら、貴方は普通。普遍、正常等々で生きてても。自らに一切の価値を見出せないの。だって貴方の根源に座す価値観は、上位存在に至る事。その一点に尽きる、それに反する事をできる限りしてはいけない。あと関る、日々考える人間も気をつけるべきね。貴方は普通な人と関っていても、一切の価値も意味も魅力も。そういった一切合財を感じれない、感情を動かせない。揺れさせることができない、有感情有感動。激情や娯楽を感じれないって事ね、だから日々考える事は絶対的に。貴方が上位存在と思える存在か、既存の下位存在も。上位存在として補完して認識等々しなければいけない
。そして忘れてはいけないのは、貴方自体が一生絶対に上位存在にはなれないって事。さっきから上位上位言ってるけど、これは厳密に言って、人間以上の存在。でもそんなのには絶対になれない、貴方は絶対になれない存在になりたくてしかたない。永遠の中二病なのよ。なんで貴方がそうなっかは知らない。多分だけど、多感な時期に感じた。そういう圧倒的なモノが、そのまま人生の絶対的指針になったのよ。うん知ってるわアレよねアレ。前に聞いたわ学生時代に憧れた、正義のヒーロー。それに貴方が凄く感銘を受けた話、いい笑顔で語っていたわ。たぶんそれで、貴方の人生は決定付けられた。絶対的な存在?上位存在?私には理解できないけど、そういうモノにしか心を動かさない揺らさない。ある意味どこまでも強い人、潔癖な人。だから私も貴方を誰よりも素晴らしい人と崇め奉り、好みで愛してるんだけどね。いいかしら?貴方は今後これから一生、そうであり続ける。奇跡的な科学の発展でもない限り、人は人を超えれない。いえ超えてはいけないのかもしれない。まあそれは置いといて、貴方が感情を動かして揺らせて。この人生を活き活き生きる方法は、絶対的に唯一無二。神を感じるように、そう絶対の領域。最強とか無敵とか、観測者レベル級とか。そういったモノのみに興味関心を向け続け、痛みや苦しみ、悲しみを感じ続けなければ。貴方の心はどこまでも乾き続ける。貴方は無限の欲望と渇望を持っている、だからこそ無限に乾く荒野を形成する。それだけはもっと自覚して、賢明な生き方を磨きなさい」