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6‐駄々っ子のように泣き、発狂し、彼女は狂気的な力技で、ダレた時空に新境地を見せてくる?

 

 

「ふぇ。ぐすぅっ。あぐ。うぇ、、、」

「・・・・・」


 沈黙が支配する時空。なぜに女の子を、俺が泣かせてるような状態になっているのか。考えあぐねる。

 もちろん俺が泣かせたわけではない。突然シャルが泣き出したのだ。まあメンヘラ気質の多分にある彼女だ。こういう事もさほど珍しくないので、俺はそれほど動揺せず受け止めいている。 


「どうしたんだ?シャル?何か辛い事でもあるのか?」

「うぅ、うぅ。死にたいよ。もう死にたいの、えぐぅ、うぅ、、」

「大丈夫だよ。シャルには俺が一生ついてるから」

「あんたなんかじゃ力不足なのよ。そんなんで私を助けられるなんて思わないで。」

「駄目かな?俺じゃ?俺は必死で、そう文字通り。このシャルがどうしようもなくなったこの状況ですら。シャルを愛し、必ず死ぬと分かっていても。シャルを助けたいと思うんだよ?」

「、、わたしの絶望はね。貴方のその愛じゃ潤せないのよ。たとえ貴方がどれほどの、心のオアシスを持っていてもね。一瞬で乾ききってしまう、そういう荒涼とした大地なのよ」

「俺には、そうは思えないな。こんなにぷにぷにした頬してるんだ。潤してやれば、しっかりと瑞々しくなるはずだ」

「貴方なんかが、私を潤せるとか。そういう思い上がりも甚だしい。その傲慢な考え方を今すぐやめて!やめてよ!」

「じゃー俺は諦めればいいのか?俺はシャルを助けられないなんて絶対に思えない。絶対に認められない。己の全てを賭けてでも、救い出したいと思うんだ」

「下らない。所詮人間の癖に。醜い原罪を持つ偽善者の癖に。貴方なんかじゃ到底、神話や伝説の。イエスキリスト様、アレクサンドロス様にはなれない。私はもうそういう存在しか愛せないのよ。貴方なんかに興味もないわ、どっか行ってよ」

「俺はシャルに無上の、至上の。興味があるよ。君を知りたいと思うんだ」

「、、、、もっと、ずっと、無限に。私を必要としてよ、愛されているって実感を。現実を頂戴よ、、全然リアリティが感じれない」

「だから俺はシャルを必要としてる、愛しているよ?」

「どこが?私を致命的に必要としてる?私を奥の奥まで、本気で必死で。全て知りたいって願ってるの? 嘘でしょ?嘘なんでしょ? 貴方からはそういう欲望や渇望。それほど感じられない」

「シャルの方こそ。俺をそう思ってるのか?」

「当たり前でしょう!?私には貴方しかいない!貴方はいいわよ、二人も!いえもしかしたらそれ以上に!愛する人がいるんですもの!その分、愛が分散されるなんて当然でしょ!!有限大の人間の癖に!!無限大の神の愛のようなこと!!語らないでよ!」

「いや、確かに愛する人は。一人だけじゃないが、それはシャルだって同じだろ?お前もかよとか好きだろ?」

「好きよ。でも違うのよ。何か、言葉にできないけど違うのよ、、」

「何が不満なんだ?言ってみてくれ、全部聞いた上で受け止めるから」

「、、貴方の、一番になりたいのよ。そうじゃなきゃ、私の人生は始まらないの。貴方に一番愛されて、それでやっと私は私であれるの。貴方をあの時。一目見た瞬間から。もうその予感はしてた。貴方を一生を掛けて好きになって。一生尽くし。愛される為だけに、私は生涯を全うする事になるって。もうあの時から私の人生は確定されていた。いえ確定されてしまったのよ」

「そうか、ありがとう。なんて言葉じゃ駄目だな。俺だって同じ様に、シャルを愛したいと思う。そう想いたいと思う」

「無理よ。貴方は持ち過ぎている。全てを失わない限り、私だけを見て。私だけに依存してくれる訳がない」

「シャル?君はなにが望みなんだ?」

「前も言ったけど。真の意味で貴方と一つになることよ。お互いにお互いを、致命的なまでに依存させて。片方なくして、もう片方はありえない。そんな背徳的で退廃的、だけど甘美的。そういう関係を貴方と、私は築きたかった」

「今でも。それは可能ではないのかな?」

「無理よ。さっきも言った。貴方は持ちすぎている。だから私とそういう。私の真に望む理想の関係には至れない。つまり貴方では、私の欲望や渇望を。完全に満たしきる事はできない、だから私は絶望してるの。よく理解できた?」

「ああ、痛いほど。本当に痛いほど理解できた。だからこそ、俺はシャルを。持ちうる限り。己の全てで、愛したいと思ってるんだ」

「私はそれでは絶対的に。不足していると言っているの。私の感情は。ちゃんと伝わっているの?純然に真っ直ぐ、100%の精度で?」

「ああそれは大丈夫だ。俺はシャルを理解してる、全部理解してるんだ。何も把握してない事は一切ない。シャルが抱えてる痛みも苦しみも、全て俺はシャルと同じ様に感じてるんだ」

「ホント、優しい嘘が上手いわね。でもそんな優しさで、多少なりとも、気休め程度でも。僅かばかりでも、私が救われると。本気で思っているの」

「ああ。俺は確信してる。シャルが救われている事を。だってそうじゃないと全てが認められない。許せないんだ。どう考えても。そんな現実は間違っているんだから」

「嬉しく。ないなんて事ないわね。嬉しくはある。でもお生憎様。それだけ。嬉しいって、そんな微量な感情じゃ駄目。もっともっと、ちょうだい?」

「ああ、上げるさ。俺が上げられるだけの全部。シャルだけに上げる、上げたいんだ」

「、、私は、罪深い人間だわ。こんなにも、こんなにも愛されているのに。全く絶望が消えない。どうしようもない程、全てが憎い。負の感情以外の何も沸いて来ないの。こんな私を醜いと思う?」

「醜いなんて思うわけないだろ?俺はシャルなら、それがシャルと認識できる存在なら。なんでも。どんな形であっても、受け入れるって決めたんだ。それが真の愛ってもんだろ?一度絶対の意志で決めた自分との誓いでもある。それは絶対に破りようがないんだ」

「かよさんだわ」

「は?」

「イツキは。かよさんにそういう。無上の、至上の愛情をもらったんだよね?だから他の誰かにも。それを致命的なまでに必要としている、他の誰かにも。あげずにはいられない。だってそうしないと、かよさんに嫌われてしまうから。そう思ってるんでしょ? だってそうよね?至上の、無上の愛情を上げられるのは。それを求める他の誰かにも。絶対的に。そういうモノを一切戸惑い無く。あげられる人だけなんだもん。イツキが他人に対するその姿勢を崩すって事は。かよさんを否定する事になる、全て受け入れる。ならばかよさんの根底、戸惑い無くそういう事をできる。それをイツキは一切の戸惑い無くできなければいけない。だってそれが真に受け入れるって事だもの。、、つまり私は何?愛のお零れを預かる、愛人か何か?その立場に一生甘んじないといけないの?」」

「シャルだって、、それができる存在だろ?」

「無理よ。私は貴方だけ。他の誰かがそれを求めても。あげようなんて、これっぽっちも思えない。だってそもそも潤ってないんだもの。かよさんは無限に潤っている様に見えるわ。満ち足りている、ホント太陽のような存在。それに比べて全く潤ってない私が。等価交換の対象である愛情を、貴方以外に差し向けられると思う?」

「、、それでも関係ない。俺はシャルが好きなんだ」

「何それ。かよさんをより愛する為に?それともより愛される為に?私はその道具の一つでしかないの?むしろ現れなかった方が。お互いだけを見れてよかったのかしら?」

「だからそんなんじゃない。シャルがいた方が。圧倒的に俺は楽しいんだ。数のメリットって知ってるよな。一人よりも二人だ。お前が居てくれた方が、俺はより満たされる。単純な話なんだよ」

「私が。貴方達に。プラスになるのはわかったけど。所詮、それだけの話。貴方の全ては得られない事に、一切の変わりがないんでしょ?」

「いや。俺はシャルだけに全てをあげるよ。俺の全てをだ」

「私の前だけは嘘をつく、ついてくれるって事?それで頭の中お花畑の錯覚をしろっていうの?それで私がわずかばかりでも嬉しいと?」

「本当なんだ。信じてくれ。俺は確かにこの瞬間。シャルだけに全てをあげたいと思っているし。あげたいんだ」

「ああ、なるほど。そういうこと。今この瞬間。私を目の前にしてる時は。かよさんの事なんて全て忘れて。私だけを見ている、私だけを必要とし愛している。そう言いたいのね?ふざけないでくれる?そんな事が可能なほど、人間は単純でも、融通が利く訳でもない。例えかよさんが死んだとしても。貴方はそうはならない。そうでしょう?」

「、、ホント、どうすればいいんだ?」

「ありのまま。貴方が貴方のまま、純粋に。真っ直ぐ。私を愛してくれればいいわ。そして私をすこしでも、必要としてくれれば。それでいいの。それ以上は求めるべくもない。私の王子様。一生愛しています」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「どう?感じた?」

「ああ、凄く可愛かった」

「ならいいわ、満足した。昼ドラマの三倍程度は楽しかったわ」

「余韻を盛大にぶっ壊すってのが。こういう芝居の爽快な所だよな」

「ええ。ドラマだと。幻想を幻想のままにして。夢を見続けたい人に配慮して。最後のオチすらない。そういう下らない萎える展開しかないもの」

「それに比べてこれはいいな。現実との落差で。本気で泣けてくるよ、、、う、、うぅぅぅ」

「どうしたの?なんで本気で泣いてるの?演技の続き?」

「いや、ぐぅすぅ、、仮初でも、シャルちゃんにあんな風に愛されたらって想像したら。凄く嬉しくて。でも現実との落差も物凄くて。もう何がなんだか」

「泣け喚け絶望しろ!私は貴方が大っ嫌いよ!!」

「うわぁああああああ!!!やめてくれぇ!!!!!!俺の幻想が崩されるぅううううううう!!!!!!!」

「これはこれは。いい見世物ね。爽快最高、エンターテイメントとしては満点を付けてあげたくなるわ」

「う、、、うぅ、、、ぅ」

「泣き止めよ。男が見っとも無く泣くな、ダサいだけだ。それが哀れで、私にとっては最高の魚だがな」

「シャルの愛が欲しいよ。シャルにあんな風に愛されたいぃ!!!付き合って!!!!結婚してぇ!!!!!!!」

「死ね!!!お前なんかと、あんな関係になるくらいならその場で息を止めて死ぬわ!!!!」」

「うがぁああああああああ!!!!!!!!!!!」

「、、、そんなに精神的ダメージが大きいの?私は貴方の心情を全く、これっぽちも理解できないのだけれども。見ていては楽しいけどね」

「当たり前だ!女の子は恋の魔法使いなんだ!その魔法で甚振イタブられたら、誰でもこうなる!当然なのだよ、、」

「御免ねぇ。これからも定期的に、こうやって遊ぶけど許してね。」

「いやだぁあああああああああああああ!!!!!!!!!!もうやめてよぉ!!!!!!!!!!!!お前のあれはホント純度100%の魔法なんだよぉ!!!!!!!!!!!!」

「これは楽しい遊びを見つけたわ。これで半ば精神的にも肉体的にも、薬漬けにしたような状態にして。こいつ飼おうかしら」

「ひぃい!!!!!」

「怯える姿も。よく見ると可愛いわね。調教して。私好みに完全に塗り替えられて、新たな人生を生きたくはない?坊や??」

「やだぁあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!そんな人生絶対にやだぁ!!!!!!!!!!!!!さっきので死ぬほど苦しかったんだぁ!!!!!!!!!!!もうあんなのはこりごりなんだぁ!!!!!!!!!!!!!誰か助けてぇ!!!!!!!!!!!!ひぃいいいいいいいいいいいい!!!!!!!ごめんなさぃ!!!!!!!!!!!!!!!!」

「貴方といると沢山の発見ができて、本当に楽しいわ。人間って、そんなに大きな声が出せたのね。断末魔って良く聞くけど。貴方のそれ、まさにそれに相応し過ぎるくらいピッタリよ。人間が出すような声ではない。だけど人間が死の淵で出せる声。まったく今の貴方は、その世にも奇妙で貴重な。情報の発信者よ、さすが私の認めた芸人。やる事が一線どころか、天さえ越えて違うわ。見直して惚れ直しちゃうくらいだわ」


 その後。大慌てで、店員が掛けて来た。いくらDQNが暴れ騒ごうが、一切態度を変えない百戦練磨のエリート店員を。ここまで血相変えさせたのは。本心から謝罪したいと思った、実際したし。

 まあ、そのお陰で追い出されはしなかった。たぶん俺の誠心誠意の謝りと。シャルの媚びた様な謝罪の言葉と、ありえない程の見た目の良さが。何か店員に作用したのだろう。呆れるほどあっさりとその場の収集はついた。一言気をつけてください、だけだ。やっぱり美人は得をするらしい。世の中の理不尽さや不条理、不合理さを。まざまざと見せ付けられた感じだ。


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