黒か白の、シャルロットの幼少期
純白のワンピースをふわりと瞬かせ、まるで天使のような麗しい金髪。それに加えどこまでも透き通る宝石のような青い瞳。
人間という存在が生み出せる存在美をどこまで極めれば、彼女のようになるのか、まるで歴史的美女に出会ってしまったかのような感銘すら受ける。
その程度には彼女、シャルロットには魅力がありすぎるのだ。
「なんでこんな所にゴミが落ちてるんですの?」
「それってまさか俺のこと?」
「あらあら、ゴミが喋りましたわ、これはもしや学会に持っていけば評価されうるかも」
とまあ、毒舌を武器にし、こんな可愛らしい愛嬌まで備えられたら、そりゃもう愛さざるを得ないだろ。
「おいシャル」
「なんですの?」
「おれの彼女になってくれないか?」
「別にいいですけど、それが何か?」
「じゃー今から彼氏彼女な」
「そんなどうでも良いこと何時までも話してるんじゃありませんわ、熱いですし。あそこの喫茶店に入りますわよ」
ホントにべもないね、まあいつもの事だから気にせんが。ちなみに今日はもう夏休み直前カウントダウンが始まったくらいだ。
昨日から毎日、はやく夏休み来ないかなと。恋する乙女のように願っているんだが、それで時間の経過速度が変わるわけないってね。
今日は彼女、シャルと。デート、と俺は思っているんだが。本人に言わせれば奴隷をショッピングに付き合わせる感覚だろう、世知辛いったりゃありゃしない。
そんな彼女は、喫茶店と言ったが、こんな田舎にそんな洒落乙な場所あるわけない。駅周辺のこじんまりとした食べ物屋兼喫茶店といった所を指したのだろう。
そこに向かい中に入り、俺達は。沢山。つっても七つくらいの四人席しかないが。その角っこあたりのボジションに居座ることに決めた。
「それにしても予想外だったわ、一本電車に乗り遅れるだけで、都合一時間近く待ちぼうけをくらうなんてね、あんたのせいだわ」
「田舎じゃ当たり前だな、それにそれは俺のせいじゃなくね?シャルが遅れたんじゃ?」
「馬鹿、あんたが電車止めてれば間に合ったでしょうが」
「そんな無茶苦茶な論理あるかよ。まあいいや、今日は都会の方に電車で行ってショッピングって認識であってるか?」
「ば、馬鹿言ってんじゃないわよ!!誰が貴方なんかと映画みたりランチしたいとか思いますか!!デートじゃないですかそれ!!身の程を知りなさい!このぉっ!最低のクズがぁ!」
「そうか、デートしたいんだな、わかったわかった、これだから欲しがりはたまらないぜ」
「馬鹿、はやく察しないさいよ。好きな人とそういう事したいに決まってんじゃん」
「それで?どこ行きたいんだ?さっき行った映画やランチか?」
「うんそうね、だいたいそんな感じのプランで。いいかしら?私を楽しませる為に全力を尽くしなさいよ」
「ふん当然だな、シャルが楽しんでくれれば俺も嬉しいしな」
「惚れてまうやろが、まあいいか、今日わざわざ時間を取ってくれただけでも嬉しいし」
「ほかならないシャルちゃんのためさ、当たり前だろ?」
「じゃーやっぱり彼女にしてくれるの?本当に?」
「だからそれも当たり前なんだよ、シャルの喜びそうな事はなんでもするってさっきいったろ?」
「嬉しい、好き」
「俺も好きだよ、シャル」
といい雰囲気でイチャコラしてると。時間を確認してみる、まだ十分しか立ってねえ、こんな会話をあと五ループもしないと駄目なのか。そりゃないだろ。
「おいシャル、もっと堅実な話するか」
「いや、こういうイチャコラした話したいわ」
「まあ、それでもいいけど。なんだか頭の中がスイーツになっちまいそうだ」
「いいじゃない、スイーツ脳。わたし一度はそんな感じになりたいわ」
「いや、お前はもうなってるじゃねーか、げほんごほん。そうだな、なってみるのも面白いな」
「そうよそうよ、私達二人でスイーツ(笑)脳になりましょう」
「うん、まあそういう未来も悪くないかもな」
「そう、こういう人生も悪くないものよ」
「うんうん」
「私と一生暮らすってのも悪くないかな?」
「は!当たり前だろが!さっきさっきも言ったが俺はシャルの喜ぶことならなんでもするんだ」
「ホントに好き、大好き」
「ああ俺もシャルのこと愛してるよ」
「うぅぅ大好きだよイツキ、、」
「ああ大好きさ、、、っていいのか?これで?」
「茶化さないでよ、もっと愛し合いたいと思わないの?」
「なんだか俺達二人の間でこれやると。純然に嘘っぽいつうか、どうしても主観になれない」
「客観したら恥ずかしくて死にそうなんだ?」
「いやいやそういう話じゃなくてだなー」
「まあいいわ、もう飽きたし。なんかメニュー頼みましょう、嫌な客だと思われたくないわ」
「まあそれが堅実だな、まあここなら、乗り過ごした客の休憩所みたいなモンだから、特に何も言われないと思うがな」
「これだわ!いいものがあったわ!まさに喫茶店デートっぽい事思いついたわ」
「あぁ?なんだこりゃ!一人のジュースを二人で飲むって事か?くそ変な宣伝ポスター貼りやがって」
「向こうにいったら試しましょうか。さっそく」
「勘弁しろ、衆目で恥さらしたいか」
「じゃー普通にキスとかしようか?」
「話が飛躍しすぎだ、まずは手を繋ぐからとかだろ」
「絶対にいや。貴方と手を繋いだらきっと妊娠してしまう」
「いまキスとか言ってませんでしたっけ?」
「はぁー退屈だわ。詰まらない男ね。もっと私を楽しませないさいよ」
「急な態度の悪化!どんな意味不明な心境変化だよ!」
「はぁーあー、なんだかもう帰りたくなってきちゃった」
「ええぇー、いや遊びに行こうよ!俺これでも今日は結構楽しみにしてたのに、、」
「ふん知るか。貴方の楽しみなんて興味ないし、私が興味あるのは私が楽しいかどうかだけだし」
「典型的なお姫様か女王だな。まあいいが、じゃー本当に帰るのか?」
「空気よめ無能、帰るわけないだろ。私が帰りたいと思ったら誰に断るでもなく、一人でさっさと帰ってるてーの」
「まじかー、わかったよ。もう絶対服従でいいよ。シャルに従うのってなんだか気持ちいいし」
「まあ私の人徳が為せる技よね、いいわよいいわよ。さあ跪いて足でも舐めなさい」
「え?舐めさせてくれるの?!」
「駄目に決まってるじゃん、そんな事させるなら舌噛んで死にたいわ。おぞましい想像させないで」
「自分で言ったくせに。じゃあ指でも舐めさせてよ」
「死になさい、私がお前の指を舐めるならいいけど?」
「ほれ、舐めろ」
「嫌よ、触れたくもない、それに下ネタも含まれてるし。貴方って本当に最低のクズだわ」
「うん、元ネタが分かってる分。なんだかお前のさっきからの口上に一々受けるんだが、吹いてもいいか?」
「いい訳ないでしょ、てか元ネタって何よ?」
「あ、素で使ってたんすか、ならいいです」
「なによ、腹に一物抱えてそうなその言は。馬鹿にしてるの?」
「いやしてないしてない、シャルのことは尊敬してる」
「まあそうよね、私って何もしなくても尊敬されるところあるし」
「くっそ、否定できないのが悔しいし、くっそドヤ顔も超ムカつくな」
「殴ってみない?貴方みたいな人っていたいけな婦女子に暴力振るのとかが趣味なんでしょ?」
「なわけあるかよ、むしろ対極だって」
「知ってるわよ、でもなんで殴られてみたいと思ってしまうのかしら、、」
「それはお前がMだからだよ!」
「差し詰め貴方はSね」
「自動的に俺の性質決定かよ。俺はどっちでもないノーマル、Nだよ」
「ふむふむ、メニュー決まった?もう頼みたいのだけど」
「ああぁ?だったらこれで」
「おけーぃ」
と彼女が店の奥にいるだろう店員を呼び出す。来たのは初老のおばちゃんだ、頑固っぽくて無愛想だなぁー。
「これとこれとこれ、お願いできます」
「あいよ、なんだね?きみ達は彼女彼氏さんかい?」
「ええ、ラブラブなんですの」
「いいねー若いってのは、お似合いだと思うよ、ゆっくりしてくれ」
と言うと、また向こうの方に戻ってしまった。
「私達お似合いだって」
「それはお世辞だろうなー、シャルと俺じゃ釣り合わないし」
「そんな事ないわ、たぶん年長者の観察眼で、私とイツキは凄く合い性良いって見抜いたんだわきっと」
「すごい解釈だな、でもまあ正直シャルと俺の合い性はいい感じだと思うよ」
「、、調子乗ってるの?わたしと?もしかしてまた調教が必要?」
「ああ?あの調教のことか?おおいいぜ、またやってくれよ」
「あーあ。ついにあれに慣れたか、じゃあもう玩具としてはおわりね」
「甘く見ちゃいけないぜ!俺はもっと上位の調教を受けたいと言ったのさ!」
「きゃー素敵!そんな所に憧れちゃう!」
「ちょっと声抑えような、素で恥ずい」
「別にいいじゃない、こんな寂れた喫茶店ともいえない所、大して人いないじゃない、てか私達以外人いないじゃん」
「それもボリューム下げような」
「はぁーもう貴方が退屈な男過ぎて眠くなってきてしまったわ」
「だったら寝ればいいだろ?時間がきたら起こしてやる」
「馬鹿じゃないの?大好きな男が目の前にいるのに寝こけるとか、私を愚者だと言いたいの?」
「おお、いい感じの告白ありがと。だが俺のこと好き好き言ってるけど、それって本当なのか?」
「馬鹿じゃないの?本当よ、じゃなければ休日にこんな風にあったりしないでしょ?」
「いや好きじゃなくてもすると思うんだがね。あと愛してるって意味かどうか、とも聞きたかった」
「教えるわけないじゃない、恋の駆け引き舐めんな」
「まじでかー、俺がこれから見抜かなきゃいけないのか?」
「せいぜい私に棄てられるかもしれない恐怖に怯えなさい」
「ああ、わかったよ、追求すんなってことね。別に今知らないと何か起こるわけじゃないしいいよ」
「はぁーそれにしても貴方といると時間が立つのが遅いわねーねえ、これって詰まらないからかしら?」
「いやいや違うって、それはあれだよ、楽しい時間は長く感じるとか、そういう風に言う時だってあるだろ?」
「楽しくないわ、もっと何かやってよ、あのおばあさんに罵詈雑言吐くとか」
「やめとけやめとけ、関係ない人を巻き込むな」
「じゃー食い逃げでもしてよ」
「金あるのに何でそんなことせにゃならんのだ」
「あれ?お金あったの?てっきり無銭だから私がはらおうと思っていたのに、、」
「あるに決まってるだろ、なんで女の子にたかる前提で俺がここに来てることになってるの!?」
「だって、家すらない感じなんでしょ?いつもダンボールの家とかで。ひもじく暮らしてそうな顔してるわよ貴方」
「どんな顔?!家もあるし金もあるよ!」
「なにを偉そうに。全部親のものでしょうが、脛齧りのボンボンはこれだから」
「それはお前も同じだろが、、、」
「いつも野外でサバイバル生活してる感想はどう?上手くやれてるの?」
「いやいやそんな生活したことないよ」
「ないなら想像して面白おかしく語るのが芸人ってモンでしょうが!」
「なんでこんな理不尽に怒られ続けなきゃならんのだ、まあいいか。そうだね、いつも外だと気温の変化で凍えるよ」
「つまらな、いつも外暮らしで風呂にも入れず、臭い匂い撒き散らしてるんだから。こういう時くらい役に立ちなさいよね」
「謂れのない罵詈雑言にもなれたもんだぜ、てか臭いってマジ?」
「え?気づかなかったの?あんたはマジで臭いわよ」
「まじかよ!!?なんでもっと早く言ってくれなかったの!!?」
「え、だって。男の子の匂いってだけで臭いもの、言った所で取り払いようがないでしょう?」
「精神的な問題かよ!焦って損したわ」
「もう、宴もたけなわね。今日はもう帰りましょうか」
「飽き性だな、いいじゃないか、こうやって何気なく話してるのも楽しいだろが」
「楽しくないわ、ぜんぜん、飽きてるんですもの」
「そうかそうか、なら俺は、お前が飽きてるのに話さなくちゃいけなくて苦しんでるのが見たいから続けるぞ」
「うん、それでいいと思うわ、ふー遅いわねー、いつになったら注文来るのかしら」
「そういえば、ちょっと遅いかもな。でもなんかお前飲み物以外にも頼んでたろ、それで時間食ってるんだろ」
「まあ別に時間はあるんだからいいけどね」
とこんな感じで、電車で目的地に向かうまでに。なんだか全てをやりきったような感じになってしまう俺たちなのだった。
そんな感じで、そろそろ時間だという事で。店で適当に会計をすませ、晴れ渡った外に出る。
「さて行くわよ、あとちょっとで電車が来るから」
「あれ、お前その時刻表反対方向の奴じゃね」
「あら本当ね、裏側に書いてある時刻表だと、また一時間待つことになるみたいね、、、てへ☆」
「てへ☆(ほし)じゃねーって、そりゃないぜ」
「まあいいじゃないの、もう面倒臭いし歩いて行った方が速いわね」
「は?お前何しようとしてんだ?」
「え?準備体操よ、運動する前にしなくちゃ」
「マジかよ、徒歩とか頭可笑しくなったか」
「どうせ手ぶらに近いんだしいいじゃん、もう座りすぎて体がなまってしかたないわ」
「ホントかよ、なんで一時間近くも歩かないといけないんだ」
「私と晴れ渡った空で、談笑しながら歩くんだし。嬉しいでしょ?」
「ああ嬉しすぎてしかたないよ」
「なによその態度?もっといつもの酒でもやってテンションが突き抜けた馬鹿になりなさいよ」
「うひゃああああああああああ!!!!やったるでぇええええええええ!!!」
「うっさ、黙りなさいよ、目障りだわ」
「だはっはぁはっは!!周囲の目を気にしてたら馬鹿って職業はやってられないぜ!!」
「この馬鹿、もう馬鹿過ぎて逆に清清しいわ、となりに連れて歩くには申し分ないわ」
「そうだよなぁ!俺も俺を隣に連れていつも歩いてるんだがぁ!全くもってこいつは清清しい奴だ!」
「じゃ、行くわよ」
「おおともさぁ!無限の彼方にさあいこう!!」