エントロピー増減の法則
エントロピーは徐々に増大するということが、一般物理の法則である。それは綺麗な部屋が徐々に汚く、乱雑になることに似ている。一旦乱雑になった部屋は、人の力を借りない限りそのままになる。つまりエントロピーは減ることはなく、外的な力がない限り増え続けるということだ。
一方の魔術元素というのは、容易にその壁を飛び越えることができる。これは天に備わっている力だとされている。単離された天以外の魔術元素には、そのような性質が見受けられなかったためだ。これは、1994年の魔術師学会において発表されたことである。
魔術元素にも、どうやら強いものと弱いものがあるらしく、そのうち強い魔術元素を特に魔術分子と呼ぶことがある。これは学術上の言葉であり、現実世界では、未だ発見に至っていない。それゆえに、これを別の要因に求めるものもいる。例えば重力子との協調作用というふうに。しかしながら、これもまた仮説にすぎないことである。現時点で判明している範囲で言えば、魔術分子に吸い寄せられるように、魔術元素が集まり、それがエントロピーを減少することができるということのようである。一方で、量子的にふるまうことになる魔術元素は、当然一般物理にも従うこととなり――いくつかの例外はありながらも――エントロピーは増大するということとなる。これらを合わせ、『エントロピー増減の法則』という。
このエントロピー増減の法則があるおかげで、水を暖かい物と冷たい物とに分けることができ、火をひとりでに起こすことができ、部屋は常に清潔でいられる。魔術の基礎として授業で教えるべきだという案もあるが、現在に至るまで、基礎的魔術特性に入れられる事はない。