結びに(日本語版)
魔法物理学は以上である。最後に、結びとして、バンパイア王国王立協会「栄誉の騎士団」日本支部支部長であった、初代日本国化狼省大臣 大勲位 子爵 贈従1位 絃時元郎閣下の就任時の有名な言葉で締めたい。
「魔人諸君。君らは人類とは違う。それは重々承知である。本日、化狼省が設立されたことは、君らにとっても、我らにとっても、一里塚になるはずである。それは、今後、君らと我らの境が無くなり、万民共栄を果たす日が来るであろうという信念に基づいた時代である。君らが居留地に隔離されたのは、外国人と同時の1868年の出来事であった。また、雑居が認められたのは1899年7月17日の出来事であった。そして本日、いよいよ君らを国家が保護するという時代がやってきた。国内に3世代以前から住んでいるものについては、すでに戸籍が与えられているが、現時点で今後日本に住み続けると言う意思が強く、我が国に忠誠を求める者、あるいは無国籍の者については、大日本帝国の国籍が与えられ、家を創立することができる。気をつけなければならないのは、我らは、日本に同化しろと言っているのではない。一方で、我らが君らに同化するということもあり得ない。一方で、暗闇の像の如く、わずかな部分しかわからなければ、それは過ちを生む原因である。それゆえに、我らは君たちとここで約束をしよう。我らは君らを知る。君らも約束をしてほしい。君らも我らを知ると言うことを。諸君、我らは君らを待っている。おそらく君らも我らを待っているだろう。我らと君らは同じ気持ちであるということを忘れないでいてほしい」
さて、魔人というのは、今では使われていない言葉である。一般には吸血鬼、精霊、化狼の3種がこれに該当するとされる。魔人居留地は、外国人居留地と同様に、吸血鬼居留地、精霊居留地、化狼居留地の3つに分けて居留させられたものである。なお、この時に居留地に入れられたのは、日本国籍に該当しない人ら全員である。
ここで、短く化狼省の紹介をしておこう。今では神秘省というが、最初に設置されたのは1916年4月1日、宮内省の省内省としてであった。諸説あるのだが、皇室を守るための日本古来の魔術師である陰陽師を保護することが最大の目的であったとされる。絃時閣下は、絃時家という陰陽師の家系の家長であったことから、大臣に抜擢されらとされている。化狼省は、1947年5月3日に宮内省から独立し、内閣の一員となった。その後、2001年1月6日、中央省庁等再編時に化狼省は神秘省と名称を変更し、禁忌官、魔術執行官を当時すでに締結していた条約によって準軍事組織化、それぞれ外局として組み入れることとなった。
以上で、魔術物理学の必要であろう事項についての説明は終了である。この教科書を読んだ者が、無事に魔術師として活躍できることを、切に願っている。なお、執筆あるいは翻訳に当たり、手野大学魔術学部及び文化学部、文学部の諸教授、栄光の騎士団日本支部各団員、その他さまざまの方の尽力が必要であった。ここで謝意を表したい。
では、諸君。最後にこの言葉を贈ろう。「己を知らなければ、他を知ることはない。」




