同一魔法実施時の禁則
初めに、基礎魔法特性である同一魔法実施時の禁則をみる。同一魔法とは、同一の種類の魔術のことを指す。例えば、浮遊術と飛翔術のようなものだ。これらは2つとも魔術元素では空にあたるため、同一魔法といえる。
浮遊術と飛翔術を一定の距離内において行うことができないということを、この禁則は規定している。これは「魔術の競合状態」と呼ばれる現象が発生するためである。魔術の競合状態とは、同一種類の魔術が、近距離で発動された場合、これらの魔術の魔粒子が相互作用を及ぼし、意図しない状況を作り出すという状態のことを言う。もっとも、意図しない状況を想定するという言葉の矛盾はあるが、数パターンしか魔術の競合状態の終着点は存在しない。
国際魔法事故事象尺度において、その状況が規定されている。国際魔法事故事象尺度は、1968年に国際魔術師会議において採択された魔法事故の尺度である。これは、魔法影響力と呼ばれる指数でレベル分けがなされている。その式は、地表面における事故後魔力濃度を地表面における通常魔力濃度を割る。これをG₀/Gとあらわす。また、事故を引き起こした魔力量と事故を引き起こす前の魔力量を掛け、これらを魔力係数で割ったものを計算する。これをM₁×M₂/Mtとあらわす。そして、これらを足し合わせる。これを(G₀/G)+(M₁×M₂/Mt)とあらわす。この結果をM、すなわち魔法影響力と称する。
この魔法影響力の結果を一定の基準に当てはめてレベルを算出することになる。0.05以下であれば最軽度、建物一つ分くらい、おおよそ数十メートル程度の被害で済む。それから0.05超0.1以下が事象、0.1超1以下が軽度、1超2以下が低度、2超5以下が中度、5超10以下が高度、そして10超が最高度となる。最高度ともなれば、少なくとも周囲100キロメートルに多大な影響、中心から30キロメートルは壊滅的な影響を被り、周囲10キロメートルともなれば消滅ということもある。生態系への影響も甚大で、生物は壊滅的な影響範囲で消滅すると言われている。ただし、尺度レベルとしては存在しているが、実際には中度が歴史上最高のレベルである。もっとも、1万2000年ほど前の地層には、最高度レベル相当の魔法事故が発生したという痕跡が世界中にあるため、先史時代に何があったのかという研究がおこなわれている。
このようなことになることを防ぐために、魔術の競合状態は避けなければならない。そのため、同一魔法実施時の禁則として、一定の距離以内に入ることを禁止した。この禁則は、おおよそ3メートル圏内で同一魔法を行ってはいけないということである。但し、魔力量に応じて、この禁則は緩められることが多い。