魔術の精密測定の不確定さ
次は魔術の精密測定の不確定さである。これまでに何度も述べているように、魔術粒子は量子状態で存在する。このため、量子的な不確かさが作用することとなる。これは、マクロ的な作用、すなわち実視可能なほどの大きさの世界の話ではなく、魔術粒子1つのようなミクロ的な作用での話である。マクロにおいては、きわめて多量の魔術粒子によって作用するため、それらがほぼ全て同一の波動関数の収縮をみせることとなる。これは、互いに干渉し合いあたかも消滅するような方向に進むこともある。遅延効果や変性は、この波動関数の収縮による干渉が原因だとする説もあるが、はっきりとはしない。
一方で、ミクロの話となると、そうではない。スリット実験を行うと、あたかも波のような干渉縞ができる。また、粒子として、1粒ずつを射出するように調節することも可能だ。このことから、魔術粒子は粒子と同時に波の性質をもつ、すなわち量子であるということができる。量子である以上、量子力学にある程度は従うこととなる。このうちの一つが、不確定性原理あるいは不確実性原理と呼ばれる原理である。一般物理における不確定性原理は、位置と運動量を同時に観測することはできないということである。一方、魔法物理における不確定性原理は、粒子の位置、運動量以外にも、魔術作用がある。魔術作用は、粒子の位置を基準として運動量に比例して範囲が広がる。これは、発動され成功した魔術はロッシェの魔術限界距離まで到達するということになるためである。到達するためには粒子が運動する必要があるということから、必須だとみなされるようになった。位置、運動量以外の不確定性原理にあげられる魔術作用は、ミクロに限って、天を除くどれに属するかが判明できないということになる。魔術粒子が魔術の作用を引き起こすためには密度が必要となる。この密度が希薄の時点では、その魔術粒子がどれに属するかは分からないということである。これらを総称して『魔術粒子の不確定性原理』という。さらに位置と運動量が一般物理と同様に同時に測定することができないことを『魔術の精密測定の不確定さ』という。




