空間の歪みによる魔術発動効果の変性
重力によって魔術特性が発生することは、重力的魔術特性においてすでに述べているが、ここではより高度な重力と魔術の話をしていきたい。
重力はその空間を引きずるということが知られている。これを極限まで効果を大きくしたものが、ブラックホールである。これほど強力ではないが、重力があるモノは、全て空間を引きずっている。その度合いは重力に左右されるのだが、それが極端になると、光すら引きずり出すこととなる。宇宙観測によって、加速しつつ拡大を続けている宇宙空間は、その引きずりの影響によって遠くの星が歪むことがある。例えば重力レンズや、赤方偏移がこれにあたるだろう。重力レンズ効果は、ブラックホールを挟んで存在している恒星が、その強大な重力によって歪み、複数の別の天体のように見える現象をいう。また、赤方偏移は、今回の場合では重力場にある光の波長が赤色の方向へずれるという現象である。但し、赤方偏移は重力以外にも、地球から遠ざかるようにして離れていく星では、ドップラー効果によって赤方偏移が発生したりするなど、赤方偏移は複数の条件で起こりうる。今回は、重力に関してのみ話をする。
空間が歪むことにより、光もゆがむこととなる。これは、魔術粒子も例外ではなく、当然に重力によって魔術が作用されることとなる。重力的魔術特性によって静常状態に落ち着いた魔術元素は、一方で常に重力の影響を受け続けることとなる。そこへ魔術を行うために多数の魔術粒子を送り込むと、静常状態から『励起状態』へと遷移する。励起状態は静常状態とは違い、魔術粒子の単位立方あたりの量が多くなるため、斥力が強く働く事になる。このため、重力と反発することとなり、重力方向と逆方向へと動く事となる。この結果、魔術粒子は変質し、魔術効果が変性することとなる。
重力はそのまま空間の歪みとして魔術では理解されることとなる。これは、魔術は空間を漂う量子である魔術粒子を用いて行うため、そこに空間の歪みが反映されるためである。一般的に魔術粒子は、空間曲率1.05以上となると変性をはじめ、2.91以上となるとその魔術の効果が消滅するとされている。これはマイナスの曲率でもプラスの曲率でも同じことである。




