始めに
魔法物理学の歴史は古く、紀元後300~500年にまで遡ると言われている。
少なくとも、信頼できる書物によれば、魔術師が生まれたのは紀元後100年より以前であり、これは種としての吸血鬼の発生より古い。吸血鬼は、430年ごろ発生したとされるヨーロッパ大飢饉をきっかけとしているとされているためだ。一方で、魔術師が歴史の表舞台に出てきたのは、吸血鬼のそれよりもはるかに遅い。1400年ごろになり、ようやく吸血鬼により魔術師の存在が書物にかかれるようになった。これを、魔術師の発見という。
吸血鬼が書物に、すなわち人間世界に現れるようになるのは、1050年ごろの話となる。これは、当時流行していたグール症という流行病に冒され、グール化した人たちの討伐のため、当時の地方領主の一人、グリード・ラングマンの名において召集されたことが始まりである。グール症とは、別名「屍肉喰らい」と呼ばれており、その名のとおり、感染者の人肉を食べることにより、人肉を食い続ける妖物と化す病であった。さらに50年後となる1100年ごろには、狼の飼育をはじめ、ラングマンはグール対策を徹底するようになった。この狼が後に脱走し、化狼となる。
さて、1400年にいたるまで発見されていなかったとはいえ、魔術師は存在していなかったわけではない。その際、現在において魔法物理学と呼ばれる、一連の魔術体系がつくられた。この教科書は、1181年初版発刊。2015年には第340版と版を重ねている。なお、この版は、単に改稿、誤字脱字等の訂正をしたというだけではなく、新たな理論の追加、注記の付記、参考文献の更新、その他さまざまな事柄を行っている。日本語版は、1875年に当時の陰陽師によって編纂された第298版日本語第1版が最初とされている。現在は版数を原語の版数に合わせる形となっている。
魔法物理学と一言で言っても、現在は大きく2つに分けられる。一つは魔術を行ううえで万人が知っておかなければならない魔術物理、これを初歩的魔法特性という。もう一つは、高等魔術を行う人たちが注意を払わなければならない魔術物理、これを上級魔法特性という。初歩的魔法特性と上級魔法特性をあわせて魔法物理学という学問となる。また、初歩的魔法特性には魔術効果と呼ばれる、陰陽二元による魔術の減衰、増加の効果がある。これらについても、説明を行う。
なお、本教科書は、魔法物理学で使われる主要な魔法物理の法則等を収めている。そのため、かなりの数の諸法則が漏れているが、あらかじめ了承願いたい。また、一部数式を掲載しているが、できる限り、数式を用いずに説明をしたい。