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ろーぷれ  作者: めろん
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最終話 新学期の始まり

「……此処は……?」


 目が覚めた鈴が、むくりと起き上がりながら言葉を発すると、


「……僕の部屋……みたいだね」


その隣で、辺りをぐるりと見回した葵がそう答えた。


「……ということは、戻って来たようだな」


「完全なる夢オチだわね」


髪の毛を掻き上げ、溜め息をつきながら起き上がった悠と、なんとなくげんなりしてそんなことを呟く麗。


「あのディスクもなくなってるみたい」


「では、何処からが夢、だったのでしょうね?」


葵の言葉に、小首を傾げて疑問符を浮かべる鈴。


「まあ、ちゃんと帰って来れたんだから良いじゃない! 結果オーライ、気にしなーい、気にしない!」


「……また、マロたちに会える、でしょうか?」


素早く気持ちを切り替えた麗の隣で、鈴がぽつりと呟いた。


「うん。また会えるといいね」


そんな彼女にくすりと笑って答える葵。


「今度会ったら二度と会えない状態にしてやるがな」


悠はさらりと言った後、


「それより、9月1日ってことは今日学校だよな?」


8時半を指し示す壁に掛った日にちも表示されるタイプの時計を指さしながら、更にさらりとそう言った。


「「え」」


衝撃。


「「ええええええ!?」」


「朝っぱらから元気だなーお前ら」


慌て出した三人を見て、まるで他人事のように言う悠であった。


「まだ宿題終わってないのにー!!」


「どうせやる気なかっただろ」


「エへッ」


「きしょい」


「ぬがーーーーーっ!!」


「「早く行くよ」です!」













「ま、間に合ったわ……」


「間に合ってねーよ」


 ガラリと扉を開けた息切れ気味の麗がそう言うと、教卓から冷ややかな突っ込みが飛んできた。


「気のせい、です」


「気のせいでもねーよ」


教卓に立っている先生は、出席簿で自分の肩を軽く叩きながら、鈴にも突っ込んだ。


「……そうか、遅刻か。なら、廊下に立って反省でもするか」


鈴の隣で、わざとらしく言う悠。

勿論、当の本人には、そんなことをしようという気は更々ない。


「おお。どんどん反省してくれ、って、ちょっと女子の皆さん? 何、先生にコンパス向けてるの? え? それ投げる気? それ本気で投げる気なの? ダメダメ。そんなことしたら危ないでしょ? 目に当たったらどうするの?」


しっし、と彼らを追い出すように手を動かした途端、クラスの女子生徒たちに殺気を孕んだ視線と鋭く尖ったコンパスを向けられた先生が両手を前に出してそう言うと、


「えぐる」


悠がさらりと答えた。


「そこ。怖いこと言わないの」


そんな彼に、先生はさらりと突っ込みを返した。


「目にコンパスねぇ……」


相変わらず大人気だこと、と呆れながら呟いた麗に続いて、


「……そのままたこ焼きのようにクルッ、と」


「グロいグロいグロい」


無表情な鈴がぽつりと発言したことに、先生はグロいと連呼した。


「はあ……もういいから座って座って」


「はーい」


「です」


「……」


何かを諦めたような先生に言われた通り、自分の席に着く麗と鈴と悠。


「あ、あの、先生、遅れてすみませんでした」


「! 葵……! 先生、お前のこと信じてたよ。あれ? なんだろう? 前が霞んで見えないや」


そんな彼らと違って、ぺこりと頭を下げて謝った葵を見て、先生は熱くなった目頭に右手を当てた。


「だっ、大丈夫ですか、先生? ハンカチありますよ?」


「うっ……本当にいいヤツだなお前……っ!!」


葵が差し出したハンカチに顔を埋める先生。


「えーあーごほん、あー、突然だが、喜べ。今日からこのクラスに新しいお友達がやって来たぞ」


 気持ちが落ち着いた先生は、汚れたハンカチをそのまま返そうとしたら、悠にものごっつ睨まれたので、洗ってから返すな、と葵に言った後、咳払いをし、やる気のない声で生徒たちにそう言った。


「? 新しいお友達?」


「……転校生、でしょうか?」


小首を傾げた葵に、小首を傾げ返す鈴。


「転校生!? わ! どんな人かしら?!」


「俺に聞くな」


騒がしくなったクラスと同じように騒がしくなった麗を一言で黙らせる悠。


「じゃあ、みんな。せーのに合わせて大きな声で呼ぶぞ。せーの」


台詞に合わないローテンションで、先生はついて来れていない生徒たちを無視して、


「わたるくーん」


台詞に合わないローテンションで扉に向かってそう言った。

すると扉がガラリと開き、背の高い、紺色の髪の少年が教室に入ってきた。


「「?!」」


彼を見て、嬉しそうにキャーキャー騒ぎ出す生徒たちのなかに、無言で目を見開く生徒が四人。


「――転校生の死神 恒くんだ。みんな、仲良くするよーに」


「ちゃお」


そんな四人に向けて、転校生、死神は愉快げに笑いながら右手を振って挨拶をした。


「「・・・」」


硬直。


「「ええええええ?!」」


びっくり。


「きっ、貴様は――!!」


「わあ! 死神さん!!」


「な、何故あなたが此処にいる、ですか?!」


「フッフッフッ」


「フッフッフッじゃないわよおおお?!」


「死神 恒です。よろぴくネ」


「何キャラよおおお?!」


 クラスの生徒たちが向けてくる視線なんて気にしない、気にしない。

こうして、五人の賑やかな二学期が始まったのであった。


    ―完―

「終わったね〜」

「終わった、です」

「終わったな」

「フッフッフッ。じ・えんどだな」

「だからなんであんたが此処にいるのよ?!」

「オレ様もお前らと同じ夢を見ていたということだ」

「んなっ?!」

「そんなことより、何故あの腐れピエロは俺と貴様を魔物にしたんだ?」

「“かっこいいからまろ”だそうだ」

「ふざけ―…」

「では、この辺りで、お別れ、です」

「ん。以下は人物紹介だ」



日向 葵

ほとんど毎日笑顔を絶やさないほのぼの剣士。

特技は小鳥や蝶々を指にとめること。

若干天然要素がある。

可愛らしい顔した彼はオバケと水が苦手。


白鳥 鈴

お金と他人が驚き慌てた様を好む白魔道士。

ほとんどいつも無表情な彼女は、良く言えば、クールビューティー。

ぬいぐるみなど、可愛いものが大好き。


石黒 悠

実は河童だった、とっても美形な黒魔道士。

葵にはいつでも優しいが、その他と甘いものには基本冷たい。

きゅうりと他人が苦痛に歪む様が大好物。


芦川 麗

ツッコミ担当の、ある意味一番大変だった盗賊。

可愛い服を好んで買い荒らすなど、金遣いが荒い。

特技はピッキングとツッコミ。

お疲れ様です。


死神 恒

旅の途中でいつの間にか仲間になった、ほとんどの言動が意味不明な死神。

何気に美男子さん。

甘いものが大好きで、特にメロンキャンディがお気に入り。



「……前作でもやっていたようだが、これになんの意味があるんだ?」

「それ言うたらお終いよ」

「御愛読していただき、本当にありがとうございました!」       Fin

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