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ろーぷれ  作者: めろん
42/60

第42話 青と白と黒

「うわぁ、綺麗〜!」


「です」


 焼けつくような太陽、雲ひとつない青空、見渡す限りの広大な海、白波が打ち寄せる白い砂浜。

そんな夏真っ盛りな風景に目を輝かせる少女二人の隣には、頭から爪先まで真っ黒な人物が。


「……」


「……」


「……なんだ?」


鈴と麗の視線に気付き、悠はきゅうりを口から離して二人に何の用件でこちらを向いたのかを尋ねた。


「……似つかわしくない、です」


「ええ。似つかわしくないわね」


「は?」


鈴と麗がぼそぼそと言ったことを聞き返す悠。


「「脱げ」」


「……変態か、お前ら?」


服を脱げと言ってきた鈴と麗に、悠は呆れたようにそう言った後、再びきゅうりを食べ始めた。


「いや、あんたにそんなこと言われたくないわよ?! って言うか、視界に入るだけでも暑苦しいから、そのロングコートを脱げって言ってるの!!」


「断る」


麗の必死の長い突っ込みを一言で片付ける悠。


「暑くない、ですか?」


そんな彼に、鈴が不思議そうに質問してみた。


「暑いに決まっているだろう」


「いや、だから脱げって言ってるんですけど!?」


「断る」


「暑くない、ですか?」


「わあ! ねえ、みんな、見て!」


 鈴と悠と麗による終わりそうもない言い争いは、葵によって止められた。


「「?」」


「ほら、あそこ! “竜宮城”って書いてあるよ!」


疑問符を出しながらこちらを向いた三人に、葵は前方を指さしてそう言った。


「……“竜宮城”って書いてあるわね」


「“竜宮城”って書いてあるな」


「“竜宮城”って書いてある、です」


葵が指さした先に目を向けた三人は、白い貝殻で創られているような巨大な城の入り口にある門にデカデカと書かれた文字を、胡散臭そうに音読した。


「わあ、竜宮城って、本当にあったんだね!」


そんな三人の隣で、ひとり目を輝かせている彼は、日向 葵、15歳。


「行ってみたいなぁ……」


行きたいのならば勝手に行けば良いのだけれど、彼には自力で竜宮城に行けない理由があった。


「でも、葵泳げないでしょう?」


「……うん」


それは、その竜宮城が離れ小島にあるから。

 麗の的確な突っ込みに、こっくりと頷く葵。

しょんぼりと下を向く葵。うるうると瞳を揺らす葵。

叱られて反省している子犬のような葵。

無性に抱き締めたくなるような顔をする葵。


「ゴメン!! 私が悪かった!!」


「あ、安心しろ、葵!! 俺が竜宮城に連れていってやるから!!」


「鈴、ボート借りてくる、です!!」


そんな葵を見て、三人はわたわたと葵を竜宮城へ連れて行く為の行動を開始するのであった。













 鈴が借りてきたゴムボートを麗が膨らませ、そこに乗り込んだ後、悠が風魔法を使ったおかげで、一行は飛ぶような速さで竜宮城が建っている島に辿り着くことが出来た。


「ほ、ほら! 竜宮城に着いたわよ、葵!」


「……わあ……!」


陸地に足をつけ、麗の声を聞いてゆっくりと顔を上げた葵は、目の前にある巨大な竜宮城を見て活力を取り戻し、


「ありがとう、みんな!」


本当に嬉しそうな笑顔でそう言った。


「はいはい。よかったわね〜」


「……どういたしまして、です」


ひらひらと手を振ってそれに応える麗と、疲れたように胸を撫で下ろす鈴。


「――!?」


 その時、何かを感じ取った悠は、バッと後ろを振り向いた。


「? どうしたの、悠?」


そんな悠の行動に小首を傾げる麗。

彼が振り向いた先には、先程自分達が渡った静かな海が広がっている。


「……?」


悠は麗を無視し、今度は辺りを見回し始めた。


「……? 悠?」


葵が不思議そうに彼の名前を呼ぶと同時に、


「「!!」」


空を見上げた悠は、驚いて目を見開いた。

彼に少し遅れながらも、彼と同じようにその気配を感じ取った麗もまた、空を仰いで固まった。


「? 麗までどうした、です―…」


鈴の質問の途中で、


「「下がれ!!」」


「「え―…」」


悠と麗が同時に叫び、悠は葵を、麗は鈴を抱えて出来る限り後ろに跳んだ。

直後、轟音が響き渡った。


「「?!」」


 自分達が先程まで立っていた場所で凄まじい爆発が起こったのを見て、葵と鈴は目を見開いた。

一体何が、と二人が疑問を口にする前に、それは自ら姿を現した。


「「――!!」」


 バサリ、という羽音と共に突風を産み出し、辺りの粉塵を一瞬にして晴らしたそれは、大地を揺るがして盛大に吠えた。


『グオオオオオオオ!!』


――四人の目の前に、ドラゴンが現れた。

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