表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ろーぷれ  作者: めろん
41/60

第41話 剣士

 葵の剣に貫かれ、セネリオは無数の光の粒となって天に昇っていった。


「第6ステージ、クリア、ですね」


その光を見送りながら、鈴が静かにそう言った。


「ええ。それに、私と悠も合わせたら、これで6ステージ終わったことになるわね」


彼女の隣で、右手で眩しい太陽の光から目を庇いながら、同じように空を見ていた麗が言った。


「……ラスボスまで、あとどれくらいなんだ?」


すると、悠が死神に向けてそう尋ねた。


『4いるぞ』


彼の問いに、さらりと素直に答える死神。


「4!? じゃあ、私たちもう半分を超えたってわけね!」


「ラスボスまであと少し、ですね」


それを聞いて喜ぶ麗と鈴。


「ねぇ恒、残りのボスはどんなヤツなの?」


そして麗は、残りのボスについての質問を死神にしてみた。


『残りのボスは、病弱娘とメルヘン男と超イケメンとラスボスだ』


再びさらりと答える死神。


「……病弱娘?」


「……メルヘン……男?」


麗と鈴は、ボスに似つかわしくない言葉を思わず聞き返した。


「……ここからだと、第5ステージと第8ステージはどっちの方が近いんだ?」


そんな二人を無視し、悠は死神に更なる質問をした。


『8のが近いぞ』


「そうか。なら次は第8ステージだな」


答えを聞いて、悠は次の行き先を決定した。


「そう、ですね。恒、第8ステージに向かうには、ここからどちらに向かえばいい、ですか?」


『んーと、あっち』


鈴の問いに、死神は少し考えた後、南の方角を指さした。


「あっちね。……って、わあ! 海が見えるわ!」


南に目を向けた麗は、その目を輝かせながら言った。


「では、次は海に向かう、ですね」


「そのようだな。葵」


 彼女に続いて南に顔を向けた鈴がそう言った後、悠はまだこちらに戻って来ていない葵を呼んだ。


「……」


しかし、葵からの返事が返って来ない。


「……? 葵?」


不思議に思った悠は、地面に座ったままの彼の名前を再び呼んでみた。


「……ど、どうしよう、悠?」


すると、葵がゆっくりとこちらに顔を向け、


「……折れちゃった……」


そう言って、右手に持った剣を悠に見せた。

彼がこれまで愛用していた鋼の光沢を持った諸刃の剣は、彼の言う通り、刀身の真ん中からぱっくりと折れていた。


「「!?」」


葵の言葉を聞いて、折れた剣を見せられ、悠と鈴と麗は驚いて目を見開いた。


『おお。めでたいな。ぱちぱち』


そんな三人の隣で、死神がぱちぱちと手を叩いた。


「いや、全然めでたくないわよ?!」


『? 何故だ? “見習いの剣”が折れたんだぞ?』


麗が死神に突っ込みを入れると、彼は小首を傾げながらそう言った。


「……見習いの、剣?」


死神の言葉を聞き返す鈴。


『詰まり、葵は立派な剣士になったということだ』


すると、死神は彼女に頷いてみせた後に、葵に向けてそう言った。


「……へ?」


思わず間抜けな声を出してしまった麗。


「わあ、本当ですか!?」


『ん』


驚いたような葵の声にこくりと頷く死神。


「流石葵だな」


「おめでとうございます、です」


見習い剣士から剣士に昇格した葵に祝福の言葉を送る悠と鈴。


「うん。ありがとう、みんな!」


微笑みながら彼らにお礼を言う葵。


(……遅くない? とか、絶対言っちゃいけないわよね……)


嬉しそうな彼らの隣でそんなことを思う麗。


「じゃあ、早速新しい剣を買いに行かなくちゃね」


「そう、ですね」


「これだけの町なら、武器屋くらいいくらでもありそうだしな」


「……そうね。じゃあ、私も新しい武器でも探してみようかしら?」


 そんな流れで、セネリオがいなくなったおかげで霧が晴れ、再び賑わい出した町に四人が歩き出そうとしたところ、


『……では、オレ様はこの辺で失礼するぞ』


と、死神が言った。


「え? もう行っちゃうんですか?」


それを聞いて、残念そうに葵がそう言うと、


『な、何!? 朝までオレ様と一緒にいたい?!』


「失せろ」


目を見開いてそう言った後に、きゃっ、葵、大胆! と恥ずかしそうに顔を両手で隠した死神に、悠はさらりとそう言った。











「うーん……剣って結構高いんだね」


 新しい剣を背負っててんぷらの町を出た葵は、


「あんなに沢山使っちゃってごめんね、みんな?」


申し訳なさそうに三人の友人に謝った。


「大丈夫、です。その剣、鈴が買ったチェルシーより全然安―…こほん、です」


「そうよ。私が買った服の合計なんか、その剣よりもっと高―…ごほんごほん」


何かまずいことを言いかけてしまったので、咳払いをして誤魔化す鈴と麗。


「? 二人とも、風邪引いたの? 大丈夫?」


すると、葵が心配そうに尋ねてきたので、鈴と麗は胸が痛くなった。


「大丈夫だ、葵。風邪じゃない。こいつらは自分の無駄使いを隠してるだけだ」


二人を心配している葵に、きゅうりをかじりながら悠が言った。


「え?」


「な、何言ってるのよ、悠!?」


「と言うか、あなたも無駄使いしている、です」


小首を傾げた葵にこれ以上詮索される前に、麗と鈴は慌てて悠にそう言った。


「は? 何のことだ?」


そんな二人の言葉を尋ね返す悠。


「その袋のこと、です」


「そうよ! その中に入ってるきゅうりだって、合計すれば葵が買った剣より高かったんでしょう!? あの町、何気に物価高かったし!!」


白々しい態度を取る悠に、鈴と麗は彼が担いでいる大きな袋をズビシッと指さしてそう言った。


「……馬鹿か、お前らは? これは善良なる八百屋の店員Aから全部タダで頂いたものだ」


すると、二人を馬鹿を見るような目で見て、鼻で笑った後、悠はいつもの調子でそう答えた。


「わあ、親切な人だね。よかったね、悠」


それを聞いて、くすりと笑って言う葵。


「踏み倒したわね」


「踏み倒した、です」


ヒトを疑うことを知らないような葵の隣で的確なことを言い当てる麗と鈴。


「何か言ったか?」


「別に何も言ってない、です」


「そうよ。 自意識過剰なんじゃないの、ザビエルハゲ?」


「宣教師カット、です」


「暗雲の閃光は破滅をもたらす」


こうして、二人は海に向かって歩いて行き、二人は海に向かって吹っ飛んで行くのであった。


「わあ、そんなに海が楽しみなんだね」


「そのようだな」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ