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ろーぷれ  作者: めろん
39/60

第39話 濃霧

「……? 霧、です」


 次の日の朝、四人が町の中を歩いていると、突然霧が発生した。


「わあ、本当だ」


どんどん白く濃くなっていく霧を見て、葵が言った。


「ええ?! なんで霧が出てきたくらいでお店が閉まっちゃうの!?」


すると、すべての店が慌ただしくシャッターを下ろし始めたので驚く麗。


「お前みたいな盗賊がいるからだろ」


そんな彼女に、きゅうりをくわえた悠がさらりと言った。


「な、なんですって?!」


「火事場泥棒?」


「ぶっ飛ばーす!!」


そんな二人はほっといて、


「……だんだん人もいなくなってきてる、です」


「うん。みんな、一体どうしたんだろう?」


辺りを見回しながら鈴と葵がそう言った。


「って言うか、この霧、私たちがこの町に来る前に出たヤツと似てるわね」


「……魔物か?」


二人に続いて麗と悠がそう言うと、


『ん。この辺りは龍太の住みかだからな』


と、いつの間にか葵の隣に現れた死神が言った。


「龍太?」


『あいつワガママだから、オレ様嫌い』


「それは貴様が言えたことではないだろ?」


小首を傾げて聞き返した葵に、頷いてそう応えた死神に対してさらりと突っ込みを入れる悠。


「って言うか、何ナチュラルに話に加わってんの―…むぐ」


『しー。龍太に見付かっちゃうぞ?』


やっと死神が突然現れたことに対して突っ込みを入れてくれた麗は、突っ込み途中でその口を死神の両手によって塞がれてしまった。


「む……ぐ……」


言動は意味不明だけど、綺麗に整った顔の死神に後ろから口を塞がれ、若干顔を赤くする麗。


「……龍太とはそんなに危険な魔物、なのですか?」


『違う。オレ様が会いたくないだけ』


鈴が首を傾げて尋ねると、死神は麗の口を押さえたままそう言った。


『ああ、ちなみに、オレ様よりは弱いぞ』


『どあーれがお前より弱いって?』


 死神がそう言葉を付け足すと、背後から少年の声が聞こえてきた。


「「!」」


『あ。見付かっちゃった』


それを聞いて、驚いて声が聞こえた方に振り向く四人と、露骨に嫌そうな顔をする死神。


『あー、クソ。汚れちまったじゃねぇか』


その先には、赤い染みがついた白い服を着た、緑色の髪の少年が立っていた。


『人間臭ぇし、最悪だな。……お?』


服についた赤い染み、返り血を見てそう言った後、少年は死神に目を向けた。


『おお! そうやって殺せば汚れねぇのか! お前、頭いいな! オレほどじゃねぇけど!』


『む?』


少年が目を輝かせたので小首を傾げる死神。


「んー!! んー!!」


『あ。忘れてた』


その時、顔を真っ赤にしてバンバン自分の手を叩いている麗に気が付き、死神は彼女の口を塞いでいる手を退けた。


「っはー……っはー……」


麗は地面にへたり込み、思い切り体に酸素を取り込んだ。


「……チッ」


「……なんの舌打ちよ、それは? 言わなくていいけど」


小さく舌打ちした悠に弱々しく突っ込みを入れる麗。


『!! おっ、お前らは、人間のくせに第4ステージのボスと、河童のくせに第7ステージのボスじゃねぇか!!』


すると、麗と悠を指さして少年が叫んだ。


「え?」


それを聞いて固まる麗。


「う、麗……やっぱり」


「えええ!? 私、本当にボスだったの?!」


口に手を当てて言う鈴に続き、頭を抱えながら驚いたように麗が言った。


「……? 第4?」


 巨大ゾンビを倒してすぐ姿を現した麗が第4ステージのボスと聞いて、小首を傾げる葵。


『ん。第1ステージのボスが吸血鬼“リリーナ”で、第2ステージのボスが雪女の“クラリーネ”。第3ステージのボスが巨大ゾンビ“イルメラン”で、第4ステージのボスがこの盗賊少女“ウララ”だ』


そんな彼に、死神がさらりと説明した。


「へぇ、じゃあ、僕たちはいきなり第3ステージのボスと戦ったんだ?」


「……成程、道理で攻撃がまったく効かなかった、ですね」


それを聞いて、成程、と頷きながら納得する葵と鈴。


『あ。ちなみに、奴は第6ステージのボス、龍太こと“セネリオ”で、お前が第7ステージのボス“ユウ”だ』


「じゃあ、第5ステージのボスは誰なのよ? って言うか、この世界のボスは随分バラバラな順番で登場するのね? あと、どうでもいいけど“龍太”って名前じゃないのかよ」


説明を付け足した死神に、麗がやる気のない突っ込みを入れた。


『第5ステージのボスは病―…』


「何故各ステージのボスの名前まで知っている?」


麗の問いに答えようとして発した死神の言葉を、悠は静かに遮って、


「……貴様がラスボスなのか?」


と、尋ねた。


「「!」」


それを聞いて驚いた葵と鈴と麗は、バッと悠と死神に顔を向けた。


『む? 何を言っているんだ? ラスボスは―…』


悠の問いに、死神がそう答えかけると、


『気に食わねぇ』


少年、龍太ことセネリオが不機嫌そうな声を出した。


「「?」」


会話を中止してセネリオに顔を向ける四人と死神。


『死神も、お前も、魔物のくせに人間なんかと一緒にいやがって……』


セネリオはわなわなと震えながら、鋭い眼光を死神と悠に向けた。


『特にお前だ、河童野郎っ!! 後から出て来たくせに、』


そして、セネリオは悠を指さし、


『お前のせいでオレの順位が下がっちまったじゃねぇかああ!!』


そう怒鳴りながら、ドロンと小爆発を起こして灰色の煙に包まれた。

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