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ろーぷれ  作者: めろん
36/60

第36話 棒つき飴

「よしよし」


『む〜』


 頭を撫でてやると、夢魔が気持よさそうに鳴いたので、葵はくすりと笑ってもう夢魔の頭を一度撫でた。


『あ、あおぴょん?』


そんなほのぼのとした空間にマロが足を踏み入れた。


「? 何、マロ?」


葵はその声に振り向いて、小首を傾げながら彼女に用件を尋ねた。


『これ、止めなくていいまろか?』


すると、マロは震える指で右手をさした。


「これ?」


マロの指に従って、葵はそちらに顔を向けた。


「首尾一貫!」


 恐ろしい技名を言いながら鋭く尖った杖を悠に向かって突き出す鈴。


「宙を舞う三日月」


顔色ひとつ変えずに平然と呪文を唱え、彼女を吹き飛ばす悠。


「集中豪雨ぅ!!」


そんな悠に狙いを定めてボウガンを連射する麗。


『む? 飴? 飴と言ったら、オレ様はメロン味が一番好きだぞ』


聞き違いをして関係のない話を持ち出す死神。


「知らないわよ!! ちなみに私は檸檬味が一番好きよ!!」


今度は死神に向けて矢を放ちまくる麗。


「鈴、苺味がいい、です」


立ち上がって再び杖を構える鈴。


「甘いものは好かん」


そう言って、再度魔力を高め始める悠。

 マロが指さしたその先では、鈴と悠と麗と死神による大乱闘が繰り広げられていた。


「わあ、楽しそうだね〜」


が、それを見た葵は、くすりと笑ってそう言った。


『いや、楽しそうって、確かにたわいない微笑ましい会話してるけど、これ、マジバトルまろよ?』


肩の所で右手をブンブン横に振りながら、葵に見た目年齢に不相応な冷静な突っ込みを入れるマロ。


「うーん、僕はミルク味が一番好きかなぁ」


『……まろは葡萄味が一番まろ』


これ以上何を言っても無駄だと思ったのか、マロはがっくりと肩を落としてそう言った。


「葡萄……あった。はい」


『まろ?』


「うん。マロの言う通り、もうそろそろ止めた方がいいかもね」


 突然手渡した物に驚いているマロを残し、葵は背負った剣をスラリと抜いて歩き出した。


『ありがとうまろ、って、あおぴょん!? 危ないまろ―…』


葵がくれた棒つきの葡萄味の飴のお礼を言った後、マロは慌てて彼を止めようとした。


「連雨!!」


「首尾一貫!」


『あ、UFO』


「地を這う―…」


それは、葵が剣一本で矢と杖と私語と魔法とが飛び交う危険極まりない戦場に向かって歩いていったから。


「ストップ」


しかし、マロの心配は無用だった。


『「!?」』


葵は剣を使って、麗が放った無数の矢を弾き落とし、鈴が突き出した杖を受け止め、最後に悠の口の前に左手の人指し指を立てて詠唱を止めさせた。


「そろそろ出発しよう?」


驚いて固まっている五人をよそに、葵はくすりと笑いながらそう言って剣を収めた。












「よしよし」


『む〜』


 いつものように柔らかく微笑みながら、すっかりなついて自分の頭の上に乗っている夢魔を撫でる葵。


「……何、何? 詰まり、葵が一番強いってこと?」


その後ろを歩いている麗が檸檬味の棒つき飴をくわえながらこそっと言うと、


「……そのよう、ですね。葵、一番戦ってた、でしたから」


その隣で苺味の棒つき飴を口から離して鈴が応えた。


『メロンの飴にメロンメロン』


メロン味の棒つき飴をくわえ、鎌に乗って浮遊しながらその後ろを進む死神。


『まろろ、きゅ〜うちゃ〜ん』


「天空を巡る無形の刃」


『まろお!?』


自分に引っ付いてきたマロを即座に吹っ飛ばす悠。


「悠、モテモテ、ですね」


「ええ、モテモテね。あんながきんちょにまで」


『オレ様もモテモテだぞ』


「知らないわよ」


鈴と麗と死神が無表情でそんな会話をしていると、


「あ、街が見えてきたよ」


先頭を歩いていた葵がそう言った。

頭に乗っていた夢魔は、マロの元に飛んでいってしまっていなくなっていた。


「あら本当。結構大きな街ね」


「鈴、疲れた、です」


『オレ様も疲れたぞ』


「知らない、です」


『オレ様、しょんぼり』


先程と同じテンションで会話をする三人。


『しくしく。葵〜』


 知らない、と二回も冷たくあしらわれた死神は、悲しげな効果音を自分で言いながら葵の元へ飛んでいった。


「天空を巡る無形の刃」


が、悠の魔法によって、それは叶わなかった。


「“てんぷらの町”」


 そのことに気が付かなかったのか、葵は顔を上げて町の入り口の大きな門に書かれた文字を音読した。


「てんぷらの町ぃ?」


「わあ、美味しそうな町の名前だね」


「……油っこそう、です」


「まさか、住人全員がてんぷら……!?」


「ええ!? それじゃあ、てんぷらが町中を歩ってるの、悠?!」


「……体脂肪が気になる方にはお勧め出来ない町、ですね」


「って、んな分けないでしょう!?」


そんなことを言いながら、四人はてんぷらの町に入っていった。

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