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ろーぷれ  作者: めろん
35/60

第35話 プロフィール

 優しい風に顔を撫でられて、ぱち、と葵が目を開けると、


『まろ〜、まろの無礼をお許しくださいまろ〜』


『むむ〜』


まず始めに、悠の目の前に平伏しているマロと夢魔の姿が目に入った。


「……それだけで許されると思っているのか?」


その次に葵の瞳に映ったのは、そんな彼女たちを見下ろして楽しそうに笑う悠。


『め、滅相もございませんまろ! どうかここはひとつこれで……』


『むむ〜』


マロと夢魔は、頭を深々と下げたまま、きゅうりがいっぱいに入ったバスケットを悠に献上した。


「……いいだろう。だが、次はないと思え」


その献上物に、ちょっぴり嬉しそうな顔を見せたが、すぐに無表情に戻る悠。


『まろ〜! ありがたき幸せまろ〜!』


『むむ〜』


マロと夢魔は、へこへこと何度も頭を下げた。


「……」


 ――おかしい。

葵はそう思った。

何故なら、彼の知っている悠は、こんなことをするような人物ではないから。

こんな、他人に土下座をさせ、それを見下ろして笑うような加虐的な人物では。


(……寝惚けてるのかな?)


葵は、ぐしぐしと目を擦って再び目を開けてみた。

 すると、


「目が覚めたか、葵?」


先程の黒い彼ときゅうりは何処へやら。

悠は、ふ、と顔を綻ばせ、葵の短めの銀髪についた寝癖を手で優しく撫でつけながらそう言った。


「うん。おはよう、悠」


そこにいたのは、葵が知っているいつもの優しい悠。

やはり寝惚けていたんだ、と思いながら、葵は彼に挨拶をした。


「……二重人格、です」


 悠の変わりようを見て、麗に癒しの魔法を掛けながら、鈴はそんなことを呟くのであった。











「……で、貴様は此処に一体何をしに来たんだ?」


 ちゃっかり隣で朝食を自分達と一緒に食べているマロに、悠がきゅうりを手に取りながら質問をした。


『まろ、遊んで欲しかったまろ』


マロは口の中の物を飲み込むと、にこっと笑ってそう言った。


「遊んで欲しかったぁ?」


予想外だったのか、思わずその答えを聞き返す麗。


『そうまろ』


「……どうして鈴たちと遊びたかった、ですか?」


こくんと頷いたマロに、夢魔の頭を撫でながら鈴が尋ねた。


『だって、恒が言ってたまろ。みんなと遊ぶと楽しいって』


彼女の問いに、マロはハムにフォークを突き刺しながら答えた。


「? わたる?」


聞いたことのない名前に、小首を傾げる葵。

すると、


『呼んだ?』


「「!?」」


突如、葵の背後に大鎌の柄と刃に足をかけて浮遊している人物が現れた。

四人がバッとそちらに振り向くと、その人物は眠そうな顔で、ちゃお、と彼らに挨拶した。


『まろろ、ニーハオ。相変わらずいつ何処から現れるか分からないまろね、恒』


『む〜』


驚いて固まっている四人をよそに、ころころと笑いながら挨拶するマロと夢魔。


(どうして挨拶だけ日本語じゃないんだろう?)


 という葵の些細な疑問はほっといて、


「わたる?!」


「あなたの名前は、死神、ではないのですか?」


麗と鈴がいきなり現れた人物、死神に向かって質問をした。


『それ、苗字。オレ様のフルネームは“死神(しにがみ) (わたる)”だ』


その問いに、死神はさらりとそう答えた。


「苗字が“死神”?!」


『12月25日生まれの山羊座で、好きなものは甘いものと葵で、嫌いなものは甘くないもの。身長は90(みょーん)だ』


んな無茶苦茶な!! と突っ込みを入れる麗を完全に無視し、自分のプロフィールを語り始める死神。

ちなみに、(みょーん)=この世界の長さの単位。


「完全無視かよ!? って言うか、いらない情報流してんじゃないわよ!?」


『……体重は秘密だ』


「いや、自分から言い出したくせに何、恥じらってんのよ!?」


自由奔放な死神に突っ込みを入れまくる麗。


「貴様、もう一度言ってみろ?」


彼のプロフィールの好きなものの中に、葵が含まれていたことに対してご立腹の悠。


『! ……成程。お前、そんなにオレ様のことが……いいぞ。メモ用紙は持ったか?』


悠の言葉をそのままの意味で受け取った死神は、照れ臭そうにそれを了承した。


「……と言うか、死神のくせに、キリストと同じ日に生まれた、ですか?」


自意識過剰な死神を吹っ飛ばす為に魔力を高め始めた悠の隣で、鈴が小首を傾げながらそう言った。


『ん。同じ神だからな』


「天空を巡る無形の刃」


高慢すぎる答えを述べている死神を、悠はなんの躊躇もなく吹っ飛ばした。

ついでに、麗と鈴も巻き込んで。


「死神さんは180cmなんですか。高いですね〜」


『まろろ、あおぴょんはいつもほのぼのしてるまろね〜』


『む〜』


目の前で大乱闘が始まったにも関わらず、葵はくすりと笑ってそう言った。

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