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ろーぷれ  作者: めろん
34/60

第34話 目覚め

「大丈夫?」


 と言いながら、悠姿の葵が転んでしまったマロに駆け寄った時、


「ぷ。ダッサ」


麗姿の悠は、転んでしまったマロを小馬鹿にするように笑っていた。


(……これが葵と悠の差ね)


(転んだ人を見て心配する葵と、笑う悠……対照的、です)


二人を見比べながら、そんなことを思う麗と鈴。


「鈴」


「あ、はい、です」


葵に呼ばれたので、鈴は思考を停止して彼の元へ移動した。












『りんりんのおかげで痛くなくなったまろ。どうもありがとうまろ』


 治療が終了すると、マロはぺこりと頭を下げて鈴にお礼を言った。


「……どういたしまして、です」


りんりん、と呼ばれたことが若干気になりながらも、鈴はそう応えた。


「はいはい、良かったわね〜。てなわけで、早く元に戻してくれない?」


『はいまろ。むぅちゃん』


麗の発言にマロはこくりと頷いた後、夢魔を呼んだ。


『む〜』


すると、夢魔は水が入った金ダライを頭の上に乗せてマロの隣にやって来た。


「「?」」


「……可愛い、です」


その金ダライを見て小首を傾げる葵と麗と悠と、金ダライの重みで少し潰れている夢魔を見てとろろーんとする鈴。


『ご苦労様まろ』


マロは夢魔から水が入った金ダライを受け取ると、


『現実世界へ、四名様、おかえりまろ〜!』


「「!?」」


と言って、その水を四人に向けてぶっかけた。












「いやあ!?」


 叫び声をあげながら、麗はガバッと布団から起き上がった。


「あ……あれ?」


自分が濡れていないことに気付いた麗は、不思議に思って自分の体を見下ろしてみた。


「! も、戻ってる……」


見下ろすと、そこにはいつもの自分の姿があった。


「……夢オチ?」


麗がポリポリと頭を掻きながらそう言うと、


『まろろ、夢だけど夢じゃないまろ』


背後からマロの声が聞こえてきた。


「! ……夢だけど夢じゃない?」


そちらを振り向きながら、何かの映画で聞いたことがあるようなマロの台詞を聞き返す麗。


『そうまろ。さっき見た夢は、まろの能力まろ。まろがぞっきーたちに見せた夢は、現実と同じように痛みも感じれば、お腹だってすくまろ。詰まり、夢であって夢じゃないまろ』


マロは長くてややこしい説明を終えると、


『まろはナイトメア。夢を操る魔物まろ』


くるりと回った後、腰に手を当ててそう言った。


「……な……成程……」


プスプスと頭から煙を出しつつも、取り敢えず頷いておく麗。


『ま!』


「?」


すると、マロは何を感じ取ったのか、ぴくんと反応すると、物凄い勢いでテントから出ていった。


「何事かしら? 鈴、起き―…」


 その行動に小首を傾げながら、麗がまだ隣で眠っている鈴を起こそうとしたところ、


「「!?」」


激しい爆発音が隣のテントから聞こえてきたので、鈴は麗に起こされるまでもなく飛び起きた。

二人は顔を見合わせた後、隣のテントへと向かった。












「こ、これは……?!」


 外に出ると、鈴は目を見開いた。

それは、背の高い草が生い茂っていた筈の自分の目の前に焼け野原が広がっていたから。


「い、一体何が―…」


麗は言っている途中で、


「!?」


「……」


戦場に一人の鬼がいることに気が付いた。


「ゆ、悠?」


「どうした、ですか?」


テントが吹っ飛んだというのに彼の隣で丸くなって眠っている葵は置いといて、鈴と麗は恐る恐るその鬼に話し掛けた。


「……俺の……」


悠はわなわなと震えながら小さく声を発した。


「「?」」


『いったた……いきなり何するまろか〜、きゅうちゃん?』


小さすぎて聞き取れなかった悠の言葉に麗と鈴が首を傾げると、爆煙が晴れ、数十メートル離れたところでマロが腰を擦りながら立ち上がった。

同時に、


「俺の皿に触るなああああ!!」


悠が怒鳴った。


「「さ、皿?!」」


未だ嘗てないほどの悠の怒りように慌てふためく鈴と麗。


『お、お皿なんか触ってないまろ! まろはただ“おはようまろっ”って言ってきゅうちゃんに抱きついただけまろ!』


すると、両手をブンブンと横に振ってマロがそれを否定した。


((抱きついたのか、アイツ!?))


とか思う鈴と麗はほっといて、


「壮麗なる龍は全てを呑み込む!!」


悠は恐ろしいほどの殺気を放ちつつ、今まで一度も聞いたことがない呪文を唱えた。

 直後、悠のすぐ後ろの地面が爆発し、そこから全身水で出来た巨大な龍が姿を現した。


「……綺麗、です」


朝日を浴びてきらきらと輝く水龍を見て、鈴は思わずそう呟いた。

美しい輝きを放った後、水龍は身をくねらせ、マロに向かって勢いよく突進していった。


『ま、まま、まずいまろっ!!』


衝撃で地面を削り飛ばしながらこちらに向かってくる水龍に、マロは白い顔を真っ青にすると、


『むぅちゃーーーん!!』


マロは力一杯そう叫んだ。


『む〜〜〜〜〜〜〜!!』


すると、夢魔は物凄い速さでマロの前に飛んできた。

麗を担いで。


「麗!?」


いつの間にか自分の隣からいなくなっていた麗に驚く鈴。


「ちょっ……えええ?!」


『流石むぅちゃん! これならきゅうちゃんは攻撃できないまろ!』


『む〜!』


パニック状態になっている麗をよそに、助かった、と目を輝かせるマロと、えへんと胸を張る夢魔。

この展開に、水龍は猛突進を続けながらちらりと悠の方に顔を向けた。


「構わん。行け」


そんな水龍に、悠はあっけらかんと言い放った。


「ふざけんじゃないわよおおお!?」


『まろろろろろろろ!?』


『む〜〜〜〜〜〜〜?!』


こうして、二人と一匹は水龍に呑まれていった。


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